少子高齢化により公共交通機関を担うドライバー不足が深刻化しているいま、自治体にとって地域交通の維持・強化は急務だ。そんななか、沖縄県南城市はNTT西日本とともに自動運転EVバスの実証実験を行った。
自動運転サービスは地域交通の課題に対する解になるのだろうか。

○地方で進むドライバー不足を解消するためには?

人口減少に伴い、少子高齢化が進む日本。その影響は地方に行くほど大きい。近年、物流業界におけるドライバー不足が深刻だが、バスやタクシーと行った地方の公共交通を担うドライバーはさらに不足している。昨今の高齢者の事故により免許返納も増え、免許非保有のお年寄りも増えているが、地方では自動車はまぎれもなく生活インフラだ。地域交通をどのようにして維持していくか、これは地方行政にとっての大きな課題と言える。


この課題への取り組みとして、いま注目を集めているのが自動運転サービスだ。沖縄県南城市は2月23日から29日にかけ、NTT西日本とともにドライバーの必要ない自動運転EVバスの実証実験を行った。自動運転サービスは実現可能なのか、またどんなハードルがあるのか。南城市とNTT西日本に伺った。

○3区間・約800メートルを走る自動運転EVバス

南城市役所 企画部 DX推進課の八幡正也氏は、「南城市は現在、補助金でバス路線を維持していますが、少子高齢化が進めばいずれ難しくなるでしょう。将来的に向け、赤字が増えていかないよう運営する方法を模索しなければなりません。
今回の自動運転サービスもその可能性のひとつとして取り組んでいます」と、南城市における実証実験の目的について話す。

公共交通への課題を抱えていた南城市はいくつかの業者と検討を重ね、2023年8月ごろ、最終的にNTT西日本の提案を受け入れる。これには南城市とNTT西日本は、2022年5月13日に「南城市における情報化に関するICT連携協定」を締結しているという背景もある。

今回の実証フィールドは、知念岬公園駐車場から道の駅「がんじゅう駅・南城」、そして琉球王国の聖地として知られる「斎場御嶽 (せーふぁうたき)」までの3区間・約800m。

もともといくつか候補があったものの、斎場御嶽を訪れるには、「がんじゅう駅・南城」から徒歩で坂を上る必要があり、高齢者や小さなこどもたちは体力的に厳しい。また、実証実験を行うなら市民にも利用して欲しいという思いもあり、知念岬公園駐車場もルートに加えた。
このルート上には信号機が少ないため、自動運転の実証フィールドとして適していた。

○約600人の乗客のほとんどが高評価

自動運転を活用したバスの運行は、NTT西日本グループとしても初の試み。ただし自動運転の実証実験とはいえ、完全な無人というわけではない。ルート上にカメラやセンサーを設置し、道路上の障害物などを管理室から遠隔監視。なにか問題が発生した場合はバスが走る前にイレギュラーを取り除くという対応を行っている。

NTT西日本 沖縄支店 ビジネス営業部 沖縄振興推進部門 営業担当の佐々木瞭氏は、「今回の実証実験では、このイレギュラー発見にどれぐらい時間がかかるか、あるいは監視室の人がイレギュラーのアラートをどれぐらいで気づけるかという点が大きな目的です。
ただし、目的のためだけにバスを走らせるのではなく、観光客や地元の方に乗り心地を試してもらうことも要素として含めました」と、NTT西日本側の趣旨について語る。

2024年2月23日~29日の期間中、自動運転EVバスを利用したのは約600人、うち9割が観光客。乗り心地を聞いたアンケートの結果は概ね好評で、「かなり乗り心地が良い」「自動運転の車に乗ってみたかった」「また乗ってみたい」といった意見が多数を占めたそうだ。

一方で「自動運転技術にまだ不安がある」「バスが通るときに注意喚起の音を鳴らすべき」という意見もごく少数ながらあったという。また乗車定員9名という小さなバスのため、「乗りたかったが乗れなかった」という人もいたようだ。

「2月という観光シーズンから外れた時期でこれだけの人に乗っていただけたので、夏期シーズンに運行するのであればさらに多くの方に乗っていただけるでしょう。
沖縄の夏は暑いですからね」(NTT西日本 佐々木氏)

○子どもたちが最先端のICTに触れられたことも大きな収穫

実証実験が無事終了したことを受け、南城市の八幡氏は「とりあえず事故もなく実証実験を完了できて、ほっとしているところです。思っていたより自動運転への抵抗が少なく、乗客のみなさんがすんなりと受け入れてくださったのはちょっと意外でした」と安堵の声をあげる。

「今回、3カ所の降車場所を設定していたのですが、『がんじゅう駅・南城』―『斎場御嶽』間は予想通り多くの人に利用していただけました。一方、逆側の『がんじゅう駅・南城』―『知念岬公園駐車場』間の乗客が少なかったのは想定外でした。このルートは地域の方にもご利用いただくために作ったのですが、今後、考えていかないといけない課題ですね」(南城市 八幡氏)

また、南城市役所 企画部 DX推進課の平良一城氏は「観光客輸送という観点で過去にピストンバスを走らせる試みはありましたが、自動運転の活用は今回が初めてです。小学生や中学生という若い世代に、自動運転という最先端のICTを見せられたことは非常に良かったと思います」と、地域の子どもたちの未来に向けた展望も話した。


これを受け、NTT西日本の佐々木氏は「NTT西日本グループ内でも事例がなく、手探りの部分が多かったと思います。国道を通過することになるので各種申請も大変でしたし、安全性を高めるためのオペレーションにはかなり苦労しました。ですが、乗客のみなさんから『いいね』『また乗りたいよ』という声をいただいて、社会実装に向けてアクセルを踏んでいきたいなと思いました」と、今後の展開への意気込みを見せる。
○目標は自動運転レベル4以上

一方で課題も明らかになっている。今回の実証実験では期間やコストの制限もあり、システムが運転主体となる"自動運転レベル3以上"は実現できなかった。本当の意味で自動運転を運用するには、将来的にレベル4以上の高度運転自動化の実装を目指さなくてはならない。また、今回は運用が1台のみであったが、複数台管理を同時に行うことでより効率的な運行が期待できる。今回の実証で出たこれらの課題について、次年度以降検証や仕組みづくりを行っていく必要があるという。

NTT西日本 沖縄支店 ビジネス営業部 沖縄振興推進部門 営業担当の當山弘哲氏は、「まだまだシステムも車両も高価なので、自治体に導入するとなるとコスト面も考えなければなりません。NTT西日本としても持続可能な仕組みを作るために、ランニングコストなどの面を検討していきたいと思います」と、実導入に向けた抱負を述べた。

また、安全性についてはよりブラッシュアップが求められるだろう。現在、自動運転EVバスは最高速度19kmしか出せない。実用化に向けてはスピードアップが必須だ。しかしスピードが上がると、車両に必要な設備はどんどん増えていく。安全面のさらなる考慮とともに、申請するべき内容も増加していくことになる。

「スマホを見ていて車の通行に気づかない人もいるので、音を出して走るなどの工夫が必要になると思います。また、自動運転EVバスは確実に車が来ないタイミングにならないとハンドルを切らないので、曲がるときは想像以上に時間が掛かります。またカーブが連なっていると対向車が来ていると判断できないため、より先の情報を取得するような仕組みも必要でしょう」(NTT西日本 當山氏)
○観光を巻き込んで持続可能なサービスに

南城市における自動運転EVバスの実証実験はまだ初回を終えたばかりだ。今後は社会実装に向けて、より実用レベルのテストを繰り返していくことになるだろう。

「コロナ禍が明けて観光客が増えていますが、観光客の移動を支える交通機関が足りません。コロナ以前と比べて、バス停から観光地まで歩いている人が多いんです。そういった方々を思って、3月初頭から無料周遊シャトルバスを走らせたりして、新たな移動手段を模索しています。技術が追いつけば、これも自動運転にしたいですね。そのためにも時速40kmぐらいは出せるようになって欲しいと思います。そうでないと一般道を走れませんから」(南城市 八幡氏)

NTT西日本の佐々木氏は、最後に自動運転の展望について話した。

「自動運転の通常運行を実現するためには事業としての継続性が非常に重要です。今回のルートは観光客の利用が期待できるため、事業の継続性が望めます。今後ルートを拡大していく上では、常に事業としての継続性を意識しておく必要があると考えています。観光というニーズを上手く巻き込んで、持続可能なサービスにできるよう、取り組みを進めていきたいと思います」(NTT西日本 佐々木氏)