お笑い芸人の狩野英孝が、23日にBS朝日で放送される時代劇ドラマ『4K時代劇スペシャル 無用庵隠居修行8』(19:00~)で本格時代劇に初挑戦する。水谷豊×吉川一義監督が送る笑いと感動、サスペンスフルな痛快エンタメ時代劇『無用庵』シリーズ第8弾に、狩野は東北地方から江戸に出てきたインチキ修理屋・弥吉役として出演。
今回は狩野に、初の時代劇への思いや、主演・水谷の印象、今後の芝居への展望についてインタビュー。まさかのオファーに「ドッキリかも」と疑いながらも、「自分なりに一生懸命、全力でやらせていただいた」と語った通り、真摯に取り組んだ姿が浮かび上がってきた。
○初の時代劇オファーに「ドッキリかも」
――狩野さんにとって本格的な時代劇初挑戦となりましたが、まずはオファーを受けた理由を教えてください。
「やってみたいな」という思いがどこかにあったんだと思います。高校時代、修学旅行で京都に行ったとき、自由時間で映画村や撮影所も見て、「ここでいろんなドラマや映画を撮ってるんだ、いつかここで仕事ができたらすごいな」と夢を抱いたことがあって。お話をいただいたとき、あのときの夢が叶おうとしているぞとワクワクしました。
ただ、BS朝日からのオファーだったので、テレビ朝日の番組でのいろんな経験から、「これ、ドッキリかもな」と疑いましたし、「僕なんかに、こんなお仕事が来る!?」「本当に僕でいいんですか?」と不安に思っていたんです。でも、お堅いイメージだった時代劇が、最近は『必殺仕事人』にクロちゃんさんが出演されたりと、遊び心を加えて進化している印象があって。水谷さんたちが本筋をしっかりと演じられるなかで、遊び心の部分で僕を起用してくださったのかなと想像しました。顔合わせで監督に挨拶したときには、「台本の大元を崩さないなら、好きにやっていいから!」と言っていただけて、心が軽くなりましたね。
――初めての時代劇の現場はいかがでしたか。
「京都の撮影所は、演者さんも技術さんも怖いよ」と噂を聞いたことがあってドキドキしていたんですけど、全員もれなく優しかったです。待ち時間も大御所だらけでどうしようかなと思っていたら、皆さんから声をかけてくださって。メイクしている最中に「“つなぎ”を用意しておりますので、ほしい方はどうぞ」というアナウンスがあったときは火野正平さんが、「つなぎって分かる? 撮影が押してるから、軽食を用意してるってことなんだよ」と教えてくれました。
○時代劇とお笑いの現場の違いは“間”
――東北出身のインチキ修理屋・弥吉を演じましたが、役作りについて教えてください。
東北弁なまりの、強い者にヘコヘコする姑息なキャラクターだったので、ありのままの僕で自然に演じさせていただきました(笑)。
――(笑)。お芝居をするにあたって、心がけていたことは。
とにかく足を引っ張らないように頑張ろうという思いで臨みましたが、最後には監督に、「狩野ちゃん、徐々に良くなってきたよ」と褒めていただけてうれしかったです。最終日だったので、早くそうならなきゃいけなかったんですけど。
――演技指導は受けましたか。
監督から「もっと間を取ってくれ」「狩野ちゃん、遠慮しないで、たっぷり尺使っていいからね」と言われたことが印象的に残っています。『M-1グランプリ』の漫才でもポンポンとテンポ良く掛け合いをしているように、お笑いって極力、間を取らず、パッパッと返していくことを求められるんですよね。
芝居仕事は「思い出作り」ではできない
○水谷豊の優しさに感動――主演の水谷豊さんと、言葉は交わしましたか。
カツラをつけているときに水谷さんが来て、「狩野ちゃん、よろしく」とグータッチしてくれました。大御所の俳優さんが、僕にまでこんなことをしてくださるんだとうれしかったです。最終日にも、衣装のまま映画セットの前で一人で記念撮影をしていたら、通りかかった水谷さんがトコトコっと隣に来て、「一緒に撮ろう!」と言ってくださって、優しさに感動しました。
――水谷さんや檀れいさんとの共演で感じたことがあれば教えてください。
僕の一番最初の撮影シーンが、水谷さんとの掛け合いだったんです。家で一人でたくさん練習して、マネージャーさんに水谷さんの台詞を読んでもらったりして臨みましたが、練習しすぎがあだになったのか、テストから台詞についつい力が入りすぎてしまって。でも水谷さんが落ち着いたお芝居でその場面のテンションを先導してくれたから、僕も調整することができました。
檀さんのお芝居もすごかったです。悪人の僕に向けた目つきには、「僕、本当に悪いことしちゃったな、申し訳ないな」という気持ちにさせられて。気になって視線を返すと、フンッと目をそらされたのですが、そんなやりとりは台詞やト書きにはないんです。台本に書かれてないお芝居までできる役者さんってすごいなと勉強になりました。
○芝居仕事は「思い出作り」ではできない
――今年、狩野さんはミュージカルにも挑戦されましたが、お芝居への印象を教えてください。
お芝居は、精神的にも体力的にもすごく大変です。でも、ミュージカルの千秋楽でも、今回のクランクアップでも、「終わっちゃったんだ」という寂しさが一番に来ました。今回も、京都行きの新幹線のなかで「あのシーンどうしようかな」「水谷さんはどんなお芝居をするかな、こう来たらどう対応しようかな」とずっと作品のことばかり考えていたので、終わったときは寂しかったです。
――オンエアが迫っていますが、反響は楽しみですか。
「何であいつを出したんだ」という声があるかもしれないので怖いですが(笑)、自分なりに一生懸命、全力でやらせていただいた結果なので、賛否を受け止めようと思います。反響次第で、またやりたいなという気持ちが強くなるかもしれません。
――これからもお芝居を積極的にやっていきたいですか。
お芝居を経験して、役者さんたちへのリスペクトの思いがすごく大きくなりました。だからこそ、「思い出作りで」とか、「スケジュールが空いてるから」という理由ではできないと思っています。やるからには、バラエティのお仕事を断って、時間を空けて、全力で向き合わないと、役者さんやスタッフさんたちに申し訳ない。それくらい、現場で皆さんの本気を見てきたので。またやりたい気持ちはありますが、そのときはしっかりと会社と相談して挑戦したいです。
――お芝居を経験して良かったと思うことを教えてください。
俳優の世界に飛び込んで戦えたことで、度胸がつきました。あとは、母親も親戚も今作のオンエアを非常に楽しみにしてくれているので、親孝行ができたのかなと。
――では最後に、『無用庵隠居修行8』狩野さんの注目ポイントを教えてください。
『ロンドンハーツ』では騙される一方の僕が、水谷さんたちを騙す詐欺師に挑戦しました。騙したあとの、(田村)淳さんのようなニヤッとした笑いに注目してほしいです!
■『無用庵隠居修行8』(BS朝日 9月23日19:00~)
直木賞作家・海老沢泰久原作の短編時代小説『無用庵隠居修行』を、時代劇『だましゑ歌麿』の水谷豊×吉川一義監督のコンビでドラマ化したシリーズの第8弾。