小4で問題を作る側に「解くより作る方が楽しいと思うように」
謎解きクリエイターとしてテレビやイベントなどで活躍している松丸亮吾。昨年12月11日・12日に行われた推理力を競う舞台『AGASA』第2弾では、第1弾に引き続き案内人を務めた。松丸にインタビューし、謎解きにハマったきっかけや謎解きの魅力、『AGASA』の案内人のやりがい、謎解きクリエイターとしての目標を聞いた。4兄弟の末っ子で、メンタリストのDaiGoを兄に持つ松丸。謎解きにハマったきっかけについて「子供の時に唯一お兄ちゃんに勝てる遊びだったから」と説明する。
「お兄ちゃんに何をやっても勝てなかったんですけど、テレビで『IQサプリ』や『サルヂエ』という、知識ではなくひらめきで問題を解く番組がたくさんあって、それを見た時にお兄ちゃんよりも先に解けたので、知識ではなくひらめきで解くものだったらみんな平等に遊べるということに気づき、そこからハマりました」
そして、東京大学入学後、謎解き制作サークルの代表を務め、イベントなどを開催していた時に、謎解きを仕事にしていきたいと考えるように。
「謎解きにハマる人がたくさんいて、人も集客できるので、仕事にできるなと、大学の時に目指すことにしました。ただ、問題を自分で作るとか、クリエイター側に移ろうと思ったのは小学4年生の時です。テレビで問題を見たり、図書館で本を読んだりしていて、問題をだいたい解いてしまい、新しい問題を解きたいと思った時に、自分でアレンジして問題を作ってみようって。そこから解くより作る方が楽しいと思うようになりました」
謎解きクリエイターという肩書きは自分で考えたという。
「謎解き作家だと物語を書いているという風に思われそうだなと。イベントを作る人となるとイベンターになりますが、イベンターだと今度はイベントしか作らない人になってしまうので、謎解きクリエイターにしました。謎解きに関することだったら何でも作るということで」
そして、「僕の中でクイズと謎解きは明確に境界線がある」と語る。
「クイズは知識で解くもので、知っているか知っていないか。僕がひらめきって面白いなと思うのは、知識ではなくひらめきで解く問題は、答えにたどり着いた時の達成感や喜びがすごく大きいんです」
兄たちに勝てるものが謎解きだったというが、なぜ謎解き力が備わったのだろうか。
「うちは親から強制されたことが1回もないんです。そして、家が意図的に散らかされていて、パズルの本や社会の本が無造作に床に置かれていたり、子供に何かしら手を出してほしいものが部屋中に置いてあって、僕はその中でパズルの本に手を出したんです。パズルの本から算数の本に入って、算数の本からひらめきとか数学の本に入ったので、ある種コントロールされていたものの、自分でつかみ取った意識がありました。親が家の中に遊び場を作ってくれたというのが大きかったのかなと思います」
頭の柔らかさは、生きていく上でも「めちゃめちゃ大事」
また、謎解き力は意識的に鍛えることもできるという。「訓練によるところもあると思います。頭が固い人って、自分の思考を捨てるのが遅い人なんですよね。例えば、これはこうしたらうまくいくんじゃないかって同じ方向で考え続けるのは頭が固くて、謎解きはいろんな視点でいろんな思考をしていけば絶対いつか答えにたどり着けるようになっていて、切り替えの速さが頭の柔らかさの正体だと思うので、固執しないことが大事だと思います」
松丸自身も、いろんな思考を意識して謎解き力を伸ばしてきた。
「一個一個に固執せず、さっと自分の意見を否定していく。例えば、この問題はひらがなに変えたらいけるかな、カタカナにしたら、数字にしたら、英語にしたら、ということをさっとやって、これだというのを見つけていくんですけど、ビジネスなどでも頭が柔らかい人は自分の意見を早く捨てられる人だと思っていて、謎解きや『AGASA』が得意な人は柔軟な人が多いなと思います」
そして、頭の柔らかさは、謎解きだけでなく生きていく上で「めちゃめちゃ大事」だと松丸は語る。
「この世界は答えがないことの方が多いと僕は思っています。ネットで調べて答えが出てくる問題はほぼなくて、例えば人間関係の直し方や自分の夢の叶え方というのは、ひらめきの蓄積だと思うんです。調べて出てくることを積み上げて夢が叶うなら、世の中の人みんな夢が叶っていると思うので。
また、「謎解きを通して、子供も大人も考えることが楽しくなってほしい」と願っている。
「謎解きや勉強が苦手な人って、考えることに自信がない人があまりにも多くて、『私、謎解き苦手だから』『考えるの苦手だから』ってなると、解ける問題も解けなくなってしまう。謎解きを通して、ひらめいたり考えたりすることの恐怖心が取り除かれ、頭を使う楽しさを知ったら、いろんな問題をするする解ける人になると思います」
舞台『AGASA』で頭が筋肉痛に「やり続ける限り老けない気が」
謎解きの可能性に魅せられている松丸。そんな松丸が「面白すぎる」と絶賛しているのが、自身も出演する『AGASA』だ。同舞台は、推理力に自信のある芸能人たちが本人役としてミステリーの世界に入り、事件の犯人を推理するミステリープロジェクト。松丸と平子祐希(アルコ&ピース)が案内役を務める。第2弾「舞台『AGASA』 ー完璧な殺人鬼ー」は2日間で4公演を実施。回によってストリーマー、芸人、アーティスト、Youtuberが参加し、推理力最強の座をかけて競い合った。案内人には台本があるが、参加者5人には台本がない。即興の推理合戦が繰り広げられ、観客たちも推理を楽しんだ。松丸は『AGASA』の魅力について「事件の犯人という答えがあるにもかかわらず、そこへのたどり着き方や、たどり着かない場合でも、いろんなマルチエンディングがあり、回によって全然違う物語になるというのが面白い」と語る。
案内人には台本があるが、さまざまな展開を想定しているため「めちゃくちゃ分厚い」と言い、それを頭に入れ込むのは「大変です」と苦笑い。
「あることに気づいた場合、気づいていない場合で、すごい分岐が発生し、それによって最後のセリフや最後の事件の真相の説明などが変わってくるんです。その場で全然違う台本ができるみたいなことを毎回繰り返しているので、出演者も台本がない即興でありながら、案内人の僕と平子さんも、台本があるようでないんじゃないかというぐらい、臨機応変にしゃべりを変えなきゃいけない。想定にないことも起きるので、頭の中でこれはどう返すのがベストか、5人の話を聞きながらずっとハンドリングするのは本当に大変です」
そんな案内人役に松丸はとてもやりがいを感じていると語る。
「謎解きとかマーダーミステリーが好きな僕だからこそ、塩梅を調節できるという意味では天職だなと。僕にしかできないことをやっている気がして誇らしいです。ヒントをあげすぎるわけでもなく、違うことやっているなと思ったらそっと戻してあげる。そして、たどり着きそうになっても絶対に答えやヒントは言わない。あくまでも彼らの物語であるというのを守りながら見守る存在として案内していくのは楽しいです」
頭をフル回転させるため、同舞台でかなり頭が鍛えられているという。
「第1弾の時は1日でしたが、初めて頭が筋肉痛になりました。次の日、脳が全然動かなくなってしまってやばかったです。今回は2日なので限界突破というか、それぐらい頭を使うので、鍛えられていると思います。『AGASA』をやり続ける限り、老けない気がするので、一生『AGASA』を続けてほしいです(笑)」
謎解きクリエイターとして『AGASA』から刺激も受けている。
「『AGASA』を作ったクリエイターの人たちがいて、こんな面白いものを作ったということに、ちょっとジェラシーというか、天才だなと思っています(笑)。僕もまだまだクリエイターとして頑張らなきゃなって、いい意味で刺激になりました」
今月14日には、夢だったという謎解きが楽しめる常設店舗「リドラの謎解きスタジオ 池袋店」もオープンさせた松丸。同店について「僕らのホームであり本拠地になりますが、いろいろなイベントをやっていけたら」と意気込む。
謎解きクリエイターとして、さらに大きな夢も。「ゆくゆくは武道館とかで謎解きができるんじゃないかと。武道館を満員にして謎解きのイベントを開催することが、謎解きクリエイターとしての僕の大きな夢です」と目を輝かせていた。
「舞台『AGASA』 ー完璧な殺人鬼ー」は配信も実施し、2025年1月19日23時59分までアーカイブ配信。チケット発売は同日21時まで。
■松丸亮吾
1995年12月19日生まれ、千葉県出身。東京大学入学後、謎解き制作サークルの代表を務める。その後、仲間たちとともにRIDDLER(リドラ)株式会社を立ち上げ、あらゆるメディアに謎解きを仕掛けている。ヨーロッパで開催された脱出ゲームの世界大会「World Escape Room Championship 2023」で優勝し、脱出ゲーム世界一の称号も獲得。