「都心では物価が高いので、生活していくのが大変だ」または「地方は物価が安いので、生活費が都心に比べてあまりかからない」と世間で言われていることは、本当なのでしょうか。
お金の扱い方について、都心部と地方部では、違いがないのでしょうか。
連載コラム「地方の生活コストは本当に安いのか?」では、ファイナンシャル・プランナーの高鷲佐織が、実際に東京と地方、両方の生活を経験して感じたことを交えながら、お金に関する情報などをお伝えいたします。
総務省の統計「令和5年住宅・土地統計調査 住宅数概数集計(速報集計)結果」によると、2023(令和5)年10月1日時点において、空き家は900万戸であり、2018(平成30)年の849万戸と比べて、51万戸の増加となり、過去最多となりました。各自治体も増加している空き家を活用しようと、取り組んでいます。
移住者を誘致するために空き家を改修した上で居住用として貸し出したり、貸店舗として借主が自由に空き家を改装することを許可した上で事業用として貸し出したり、様々な対策を行っています。空き家をリフォームや改修工事をする場合、基本的には、空き家を所有する人が費用を全額負担して行いますが、多くの自治体が、「空き家の活用支援」として、補助金や助成金を支給する制度が設けられています。ただし、多くの所有者および自治体が空き家を上手に活用できているわけではなく、現在も、空き家の活用方法について、問題を抱えているというのも事実です。
そこで、今回は、事業として空き家を上手に活用している1つの例「まちやど」という事業をお伝えしたいと思います。
※出典:総務省(報道資料)「令和5年住宅・土地統計調査 住宅数概数集計(速報集計)結果」
空き家の活用「まちやど」
「まちやど」とは、街を1つの宿と見立てて、宿泊施設と地域の日常をネットワークさせて、街ぐるみで宿泊客をもてなすことで、地域の価値を向上していく事業です。すでに街の中にある資源や街の事業者をつなぎ合わせて、そこにある日常を最大のコンテンツとすることで、利用者には、その地域固有の宿泊体験を提供し、街の住人や事業者には新たな活躍の場や事業機会を提供することを目的としています。
単純に、空き家をリノベーションして宿泊施設にして、そこで過ごしてもらうというものではなく、夕食は街の中で地元の日常的な食事を楽しんだり、入浴は、街の中にある銭湯に行ってもらったり、宿泊した街自体を楽しんでもらうような宿泊プランが設けられています。
「まちやど」では、宿のスタッフが街のコンシェルジュとして街の魅力を伝えてくれます。おすすめのスポットや食事処、街のイベントなどいろいろなことを教えてくれます。
旅先で、知りたいことや体験してみたいことがあっても、人に質問することをためらってしまい、スマートフォンで調べて、インターネット上の情報のみで行動するという人も多いのではないでしょうか。インターネットで収集した情報をもとに行動することが悪いわけではありません。ですが、その街に居る人たちから街の情報を教えてもらい、足を運んでみるという行動は、きっと旅先で素敵な経験となることでしょう。
実際に「まちやど」を行っている宿を1つご紹介します。
○■富山県氷見市「HOUSEHOLD」
海辺の古いビルをリノベーションした1日2組限定の宿です。4階建てのビルを、宿(4階と3階)、ギャラリー(2階)、キッチン(1階)が併設されている複合施設になっています。海と山がとても近くにあるので、氷見漁港の競りに行って、その活気に触れてみたり、地元の人が通う飲食店や銭湯などに足を運んでみたりしながら過ごすことができます。また、キッチンが備わっているので、氷見の食材を購入して自ら料理をすることもできます。
下記の一般社団法人日本まちやど協会のホームページから「まちやど」を見つけることができます。春の旅行を計画している方は、一度「まちやど」の情報を確認してみてはいかがでしょうか。
高鷲佐織 たかわしさおり ファイナンシャル・プランナー(CFP 認定者)/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/DCプランナー1級。 資格の学校TACにて、FP講師として、教材の作成・校閲、講義に従事している。
過去問分析を通じて学習者が苦手とする分野での、理解しやすい教材作りを心がけて、FP技能検定3級から1級までの教材などの作成・校閲を行っている。また、並行して資産形成や年金などの個人のお金に関する相談を行っている。資格の学校TAC講師(プロフィール一覧)。一般社団法人理想の住まいと資金計画支援機構(相談員)。 この著者の記事一覧はこちら
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