6月29日に放送・配信される三谷幸喜脚本・監督のドラマ『おい、太宰』(22:00~ WOWOWプライム/WOWOWオンデマンド)の出演者が発表された。
舞台、映画、ドラマと常に話題作を世に送り出し続ける鬼才・三谷幸喜が、自身のオリジナル脚本と監督で手掛けるWOWOWの"完全ワンシーンワンカットドラマ"シリーズ。
同シリーズは、全編を一度もカメラを止めずに撮影するという挑戦が特徴で、2011年に放送されたシリーズ第1弾『short cut』では、山道に迷い込んだ夫婦の姿をワンカットで見事に描き、平成24年日本民間放送連盟賞(テレビドラマ番組)最優秀賞を受賞。続く2013年の第2弾『大空港2013』では、空港を舞台に豪華キャストによる群像コメディが展開され、その斬新な演出と壮大なスケールで視聴者を魅了した。
同シリーズが、12年の時を経て待望の復活を遂げる。シリーズ第3弾となる最新作『おい、太宰』だ。構想に約10年の歳月を費やし、満を持して制作された今回の第3弾で三谷監督が選んだ舞台は"海"。敬愛する太宰治が心中未遂を起こしたとされる海辺に迷い込んだ平凡な会社員が、時代を超えて奮闘するノンストップ・タイムスリップコメディである。
物語の主人公、太宰治を敬愛する会社員・小室健作を演じるのは、三谷作品初主演となる田中圭。2019年公開の映画『記憶にございません!』以来、6年ぶりの三谷組参加となる。本シリーズの大ファンであったことから、自ら熱烈なラブコールを送り念願の主演が決定したという田中だが、待ち受けていたのは想像を絶する過酷な撮影。約100分間にもわたり画面に出ずっぱりで膨大なセリフをこなし、一度もNGが許されない極限の緊張感の中で、どのようにこの難役を演じ切るのか注目が集まる。
太宰に惚れ込んでいる恋人・矢部トミ子役には、三谷脚本の大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(NHK)の好演も記憶に新しい小池栄子。健作の妻・小室美代子役は、宮澤エマが演じる。
健作が出会う漁師・打雷次郎役には、三谷監督の全ての映画に出演している唯一の俳優、梶原善。梶原は、次郎とその双子の兄・四郎、父親の四郎次郎の1人3役を演じ分ける。さらに、物語の鍵を握る太宰治役は、太宰と同郷である青森県出身の実力派俳優、松山ケンイチが登場する。
■小池栄子 コメント
三谷さんのワンカットシリーズには出たいな。けど大変そう。でもいつか出たいな。と思っていたので、オファーを受けた時は嬉しさとドキドキとがありました。皆で舞台のように稽古し、撮影は1日1回!スタッフとともに気持ちを1つにし集中して挑む。何が起こるか分からない、アドレナリン出まくりで中毒性があり楽しかったです。芝居は何があっても止めない。という基本に立ち返ることができ、素晴らしい体験でした!
■宮澤エマ コメント
今まで参加させて頂いたどの三⾕作品でも創造力と瞬発力を試されていると感じましたが、『おい、太宰』の撮影はさらに集中力と対応力も求められる体験したことのない緊張と戦う現場でした。稽古で作り上げた土台はあったものの、実際のロケーションでの撮影は日々変わる潮の満ち引きや天候との調整、その都度変わらざるを得ないタイミングやアクシデント(そして三谷さんの閃き)に全員で臨機応変に力を合わせて作り上げていくプロセスでした。
私が演じた美代⼦も稽古場から自然の中に解き放たれて日毎にスパークしていき、最終的には稽古場と全く別人になった気がします。ワンカットだと忘れてしまうカメラワークのその後ろで汗水流しながら全力で走り、隠れ、着替える姿を見て欲しいと思ってしまうほどカメラの裏側にもたくさんのドラマがありました。そんな裏側にも思いを馳せながら観ていただければ面白さも更に倍増するかと思います。
■梶原善 コメント
またまたまた、ワンシーンワンカットドラマのお話を頂いた、3回目である。今度はどんな話になるのかと思ってワクワクした。ワンシーンワンカットでやると思うとワクワクします「始まったら止められない“やっちまえ”」って。がしかし今回は正直、今までで1番大変だったかも…。それは潮の満ち引きが大いに関係してくるから。潮が満ちて引くといろいろと状況が変わる。現場の状況、スタート時間、となると僕の起きる時間などなど。もっともっといろいろと大変だったと思う。スタッフ皆様、本当にお疲れ様でした。
その苦労のおかげで凄いおもしろい作品になったのではないかと!どうぞお楽しみ下さい。
■松山ケンイチ コメント
ワンカット長回しは本番中に全く関係ない現地の人が入ってきても俳優の誰かが放屁してもそれを踏まえて続けていかなければいけないので、本番中に何が起こるのかという楽しい緊張感がありました。仕事でまた再会できた方もいて嬉しかったですし、今回初めてご一緒させていただいた方とも素敵な時間を過ごせたように思います。撮影場所となった伊豆の景色も素晴らしく、その穏やかでゆったりとした景色も楽しんでもらえると思います。
■三谷幸喜 コメント
――『short cut』、『大空港2013』に続く、完全ワンシーンワンカットドラマ第3弾となる本作への思いは?
2011年の第1弾『short cut』から14年が経ちました。その間にワンシーンワンカットの長回しの作品が海外でもたくさん生まれ、1つのジャンルとして定着してきました。その中で僕が考える理想的なワンシーンワンカットは舞台と映像の面白さのいいとこ取り。演劇的ですが演劇では絶対できない面白さがあり、こういうドラマは他にはありません。役者さんの素晴らしさ、奇跡のような瞬間を見ることができます。シリーズ3本目にして、ようやく何か1つの到達点に来たかなと感じています。
――キャストの皆さんの魅力を教えてください。
田中さんはこの作品のために生まれてきたんじゃないかというぐらいに素晴らしかったです。
100分ほぼずっと走り回る役で相当疲れているはずですが、そういった姿を見せることがなかった。膨大な台詞も完璧でしたし、ものすごく頼りになる俳優さんです。
小池さんは画に入った瞬間に不思議と格調というか全体が締まるんです。昔の日本映画を見ているような感じがして、本当に素敵な女優さん。小池さんでなければ成立しないような、すごく面白い場面が多々ありますので、そこは見どころです。
宮澤さんは追い詰められると底知れぬパワーが出るんです。彼⼥がどんどん海に入っていくシーンがあるんですけど、びしょびしょになりながら絶叫してはじけた感じというのは、面白さとおかしさと何か悲しさみたいなものもありました。
梶原善はシリーズ3本全部に出ています。これはある意味、梶原善のシリーズだと言ってもいいぐらい。今回は1人3役をやるんですが、早着替えもあり、本人も本当にくたくたになっていました。上手く3役を演じていて⾒ごたえがあります。
松山さんは太宰治に思い入れがすごく強い方だったので、方言にもこだわり、最終的には身も心も太宰になりきっていました。
太宰はかっこいい人という印象があるかもしれないですが、松山さんはハンサムだけどひょうきんでお茶目、すごく人間的な太宰治を演じてくれました。
【編集部MEMO】
『おい、太宰』ストーリー
太宰治をこよなく愛する平凡な会社員、小室健作(田中圭)は、妻の美代子(宮澤エマ)と共に結婚披露宴からの帰り道、ある海辺に迷い込む。地元の漁師(梶原善)から、そこが太宰の心中未遂の浜だと聞かされ、太宰ゆかりの地に興奮した健作は、妻の反対を押し切って浜辺の暗い洞窟へと進んでいく。洞窟を抜けた健作の前に現れたのは、なんと太宰治(松山ケンイチ)と恋人のトミ子(小池栄子)。タイムスリップしてしまったと悟った健作はトミ子に一目惚れする。しかし、史実ではこの後すぐ2人は心中してしまう運命だ。トミ子を助けたい一心だが、歴史を変えて良いのかという葛藤を抱え、ここから健作の奔走が始まる。
編集部おすすめ