米OpenAIは5月5日(現地時間)、組織構造に関する方針転換を明らかにした。2024年12月に発表した完全営利化に向けた計画を見直し、非営利組織が全体を監督・統括する体制を維持する方針を示した。
同社は2015年、「すべての人類に利益をもたらすAGI(汎用人工知能)の実現」を目的として非営利組織として設立された。当初は研究機関として、特定の営利目的を持たない形で活動していた。
しかし、AI開発、特に大規模モデルの訓練と運用には莫大な計算資源と資金が必要となることから、2019年に「キャップ付き営利企業(capped-profit)」という特殊な形態を導入した。これは、非営利組織の統制下で、投資家への利益分配に上限を設けることで、使命達成と資金調達の両立を目指すものであった 。
近年、生成AI分野における競争が激化する中、OpenAIはさらなる資金調達と事業拡大のため、営利部門を「公共利益法人(Public Benefit Corporation:PBC)」に転換し、PBCが主体的にOpenAIを運営する方針を打ち出していた。PBCは株式会社の一形態であり、株主利益に加えて、定款で定めた公益の追求も法的に義務づけられる。目的主導型の企業組織である。
今回発表された新たな計画では、PBCへの転換は実施するが、引き続き非営利組織が全体を監督し、かつPBCの主要株主としての立場を保持する。これにより、営利活動で得た資源を、医療、教育、科学などの分野でのAI活用といった非営利の使命に還元する仕組みが整う。
4 facts about our structure:-OpenAI will continue to be controlled by the current nonprofit-Our existing for-profit will become a Public Benefit Corporation-Nonprofit will control & be a significant owner of the PBC-Nonprofit & PBC will continue to have the same mission— OpenAI (@OpenAI) May 5, 2025
OpenAIの営利化には賛否があり、特にイーロン・マスク氏をはじめとする創業初期の関係者からは強い反発の声が上がっていた。マスク氏はOpenAIに対し訴訟を起こしており、その中でOpenAIがMicrosoftとの連携を深める中で、人類全体の利益よりも商業的利益を優先するようになったと主張している。カリフォルニア州やデラウェア州の司法当局も本件に関与し、市民団体や法学者らからも意見書が寄せられるなど、社会的な議論が巻き起こっていた。
OpenAIはこれらの声を受け、カリフォルニア州およびデラウェア州の検事総長との協議を経て、非営利組織による統制を維持する判断に至ったと説明している。
今回の移行により、従来の複雑なcapped-profit構造は廃止され、社員や投資家が普通株式を保有する一般的な資本構造が導入される。ただし、これは「売却」ではなく、「資本構造の簡素化」である点が強調されている。
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