伊藤園お~いお茶杯第66期王位戦(主催:新聞三社連合、日本将棋連盟)は挑戦者決定リーグが大詰め。5月7日(水)には最終5回戦計5局の一斉対局が東西の将棋会館で行われました。
このうち関西将棋会館で行われた佐々木勇気八段―大橋貴洸七段の一戦は佐々木八段が114手で勝利。3勝同士の大一番を制するとともに、永瀬拓矢九段の待つ挑戦者決定戦にコマを進めました。
○天国と地獄の一戦
ともに3勝1敗で迎えた本局は勝った方が組優勝、負けた方がリーグ陥落という大一番となりました。あらかじめ先手番と決まっていた大橋七段が角換わり腰掛け銀に誘導すると、後手の佐々木八段は千日手含みの手待ちで対応。先に長考に沈んだのは佐々木八段で、前例の無い大橋七段の仕掛けに対してじっくり対応を考慮します。
後手が馬を引き上げた中盤の局面が大きな分岐点となりました。千日手模様の応酬が始まったとき、守りの右金を攻めに参加させることで局面を打開したのが大橋七段の決断。持ち時間で大きくリードしていただけに千日手に持ち込む選択肢もありましたが、本局に関してはこの決断が裏目に出ることに。佐々木八段は先手陣のバランスが崩れたこの一瞬を見逃しませんでした。
○明暗分けた打開
大橋七段の出動させた金が一歩ずつ着実に後手陣へと迫るなか、これを尻目に佐々木八段は馬を先手陣めがけて連れ出します。こうなると1手で大きく動ける大駒の機動性の高さが発揮された形で、一気に攻守逆転。以降は佐々木八段の独擅場となりました。
馬取りを放置して金取りの歩を打ったのが「終盤は駒の損得より速度」の決め手で先手玉は寄り形です。
終局時刻は19時44分、最後は自玉の詰みを認めた大橋七段が投了。中盤で持ち時間を削られた佐々木八段ですが、持ち時間を残しての安定した着地となりました。勝って4勝1敗とした佐々木八段はこれで紅組優勝。同日に5勝0敗で白組優勝を果たした永瀬九段との挑戦者決定戦は5月22日(木)に予定されています。
水留啓(将棋情報局)
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