『ドライブ・マイ・カー』でアカデミー賞®国際長編映画賞およびカンヌ国際映画祭脚本賞を受賞した濱口竜介監督の最新作、映画『急に具合が悪くなる』(2026年公開予定)の製作が決定。主演はヴィルジニー・エフィラ、岡本多緒が務める。
カンヌ国際映画祭脚本賞、アカデミー賞国際長編映画賞を受賞した『ドライブ・マイ・カー』、ヴェネツィア国際映画祭銀獅子賞を受賞した『悪は存在しない』など、次々と話題作を発表し、国際的に評価の高い日本を代表する映画監督、濱口竜介監督の最新作『急に具合が悪くなる』。本作は、フランス、日本、ドイツ、ベルギーによる国際共同制作プロジェクトで、原作は、がんの転移と共に生きる哲学者・宮野真生子氏と、臨床現場を調査してきた人類学者・磯野真穂氏が交わした20通の往復書簡『急に具合が悪くなる』(晶文社刊)に基づいている。
主演を務めるのは、国際的な実力派女優のふたり。フランス映画界で最高峰とされるセザール賞主演女優賞に輝き、『ベネデッタ』などで知られるヴィルジニー・エフィラ。もう1人は、トップモデルTAOとして世界を舞台に活躍後、ハリウッド作品『ウルヴァリン:SAMURAI』をはじめ国内外の作品で俳優として実績を積み、近年は映画監督としても活動する岡本多緒。2人が織りなすのは、2人の女性の心の交流とそれぞれの立場で世界と対峙する様を描く物語だ。
舞台は、フランス・パリ郊外の介護施設「自由の庭」。施設長のマリー=ルー・フォンテーヌ(ヴィルジニー・エフィラ)は、入居者に対する人間らしいケアを理想とする一方で、人手不足やスタッフの理解不足に苦悩していた。そんな彼女が出会ったのは、がんを患いながらも演劇を創作する日本の演出家、森崎真理(岡本多緒)。真理の描く世界に勇気づけられたマリー=ルーは、自身の名前と響きが似ている偶然も手伝い、真理との交流を深めていく。しかし、真理の病状が「急に具合が悪くなる」ことで進行するとともに、2人の関係はより劇的に変化。互いの魂を通わせるほどに深く結びついていく──。
■濱口竜介監督 コメント
宮野真生子さん、磯野真穂さんの著作『急に具合が悪くなる』の映画化をここに発表できることを、とても嬉しく思います。原作者のお二人にも、この場を借りて、心よりの御礼をお伝えしたく思います。
今はパリで撮影の準備をしております。約4年前にオフィス・シロウズの松田広子プロデューサーからこの本を映画原作として提案されてから、ずいぶん長い時間を経ました。お二人の往復書簡から成るこの本を初めて読んだときの感覚は「心を強く動かされた」という言葉では足りません。往復書簡という形式、しかも二人の学者の全キャリアと魂を賭けたような議論に対していったいどう取り組んだらよいかは、まったく見当はつきませんでしたが「映画にしたい」という火が心に灯ったような感覚がありました。その灯火に導かれて、随分と遠くまで来てしまったように思います。
映画『急に具合が悪くなる』はフランスの介護施設のディレクター・マリー=ルーと、がんを患う日本の劇演出家・真理の間にとある偶然から生じた、出会いと交流を描く物語になります。どうしてこうなったのか、短くは決して説明できないというのが正直なところです。ここまでの曲がりくねった歩みを要約することは不可能に思えます。なので、自分を導いてくれた原作の一節を書きつけることにします。
「関係性を作り上げるとは、握手をして立ち止まることでも、受け止めることでもなく、運動の中でラインを描き続けながら、共に世界を通り抜け、その動きの中で、互いにとって心地よい言葉や身振りを見つけ出し、それを踏み跡として、次の一歩を踏み出してゆく。
そういう知覚の伴った運動なのではないでしょうか。」
マリー=ルーをヴィルジニー・エフィラさんが、真理を岡本多緒さんが演じることになります。お仕事を以前から存じてはいたものの、まさかこうしてご一緒できる機会があるとは思っていなかったお二人なので、とても興奮しています。今夏、最高のキャスト・スタッフと撮影する映画『急に具合が悪くなる』が、原作の引いたラインを更に延ばしていくものとなるよう、自分にできることは何でもやるつもりでいます。どうぞ、ご期待ください。
【編集部MEMO】
濱口竜介は、1978年12月16日生まれ。神奈川県出身。東京大学在学中に自主製作映画を撮り始め、大学卒業後に助監督やADとして活躍。東京藝術大学大学院の修士課程に入学し、修了作品として監督した『PASSION』で注目を集める。2018年に初の商業映画『寝ても覚めても』が第71回カンヌ国際映画祭でコンペティション部門の正式出品。2021年3月の第71回ベルリン国際映画祭で『偶然と想像』が銀熊賞、同年7月の第74回カンヌ国際映画祭で『ドライブ・マイ・カー』が日本映画史上初めてとなる脚本賞を受賞した。
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