GWが明けてからも、トランプ関税に端を発した相場の行方をめぐって、さまざまな憶測が飛び交っています。安心したり不安になったりと、投資初心者は日々ドキドキしてしまいますが、何年も市場を見てきたアナリストたちは、「こんなときこそ冷静に」と、あわてた売却は控えるべきだと呼びかけています。
そして、SBI証券投資情報部のシニア・ファンドアナリスト川上 雅人さんは、「こういうときだからこそ、本当にバリューがある米国株式ファンドを見直してみては?」という視点を紹介しています。
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2025年、長期 インデックスファンドの運用成績は?
2025年4月はトランプ政権による相互関税の発表などで世界の株式市場は乱高下し、為替市場では円高ドル安が進みました。今回は4月25日までのインデックスファンドの値動きについて短期と長期を確認し、今後の投資戦略を考えます。2024年末から4月25日までのインデックスファンドとドル円のパフォーマンスを比較すると図表1となりました。
○2025年 インデックスファンンドのパフォーマンス比較 (2024/12/30~2025/4/25 2024/12/30=100)
ここでは最も成績が良かったのは国内リート(日本国内の不動産に投資する金融商品)でした。国内リートは円高など市場が不安定なときに、値動きが比較的安定しているとされる資産として価格は上昇しました。続いて下げが小さかった順に国内債券、国内株式、先進国債券、先進国リート、全世界株式、米国株式となりました。海外の株式は国内株式と同様に下落しましたが、円高ドル安が進み、為替レート(ドル円)が円高方向に進んだことで、海外資産の価値が目減りする形となりました。
一方で、2020年のコロナショック前となる2019年末からのパフォーマンスを比較したものが図表2となります。
○2019年末からのインデックスファンンドのパフォーマンス比較 (2019/12/30~2025/4/25 2019/12/30=100)
約5年4ヵ月では、米国株式や全世界株式はコロナショックや直近の価格下落があったものの好成績となりました。図表1の2025年と図表2の長期を比較するとインデックスファンドの成績の良かった資産が短期と長期で入れ替わる、意外な結果となりました。約5年4ヵ月間ではドル円TTM(銀行などが使う、1ドル=何円かを示す基準レート)は31%上昇しており、海外に投資するファンドの価格押し上げ要因となりました。
トランプ関税による米国経済への影響は不透明ですが、今後はトランプ関税の着地点が明らかになり、米国で新たな景気対策や企業の成長を後押しする動きが出てくれば、株価の回復も期待できそうです。
日米の金利差縮小によって今後はドル円レートによる基準価額の押し上げ効果が見込まれにくい環境ではありますが、中長期的には米国企業の業績拡大に伴って米国株式は巻き返していくことが予想されます。そのような視点から今回は、長期では良かったものの最近やや元気がない米国株ファンドに着目します。
NISAで買えるSBI証券取り扱いの5年好成績の米国株式ファンドを一覧にしたものが図表3になります。
NISAで買える、5年好成績 米国株式ファンド10選
ファンドの個別紹介
国際株式・北米カテゴリーのNISA・成長投資枠対象ファンド(SBI証券ネット取り扱い、残高20億円以上)から、5年リターン順に選定したファンドを1位から10位までご紹介します。
○10位 S&P500インデックスファンド
10位は、お馴染みのS&P500インデックスファンドとなりました。
9位 USマイクロキャップ株式ファンド
高い業績成長が見込まれる超小型企業の株式に投資を行うファンドです。組入銘柄数は120銘柄で、幅広い業種の超小型株式に分散投資しているのが特徴です(※)。
○8位 野村クラウド関連株式投信 Bコース(為替ヘッジなし)
世界のクラウド関連企業の株式に投資しており、ボトムアップリサーチ(企業の「中身」をしっかり分析して、将来性がある会社を見つける投資手法)による銘柄選定を行うファンドです。組入上位銘柄はエヌビディア、アマゾン・ドット・コム、ブロードコム、マイクロソフトなどとなっており、組入銘柄数は46銘柄です(※)。
○7位 iFreeNEXT NASDAQ100インデックス
NASDAQ100指数(配当込み、円ベース)の動きに連動した投資成果を目指しており、組入上位銘柄はアップル、マイクロソフト、エヌビディア、アマゾン・ドット・コムなどとなっています(※)。
○6位 新・ミューズニッチ米国BDCファンド(為替ヘッジなし・年2回決算型)
米国の金融商品取引所に上場されているBDC(ビジネス・ディベロップメント・カンパニー)に投資を行うファンドです。
BDCは中堅企業への投融資を行う形態の1つで、収益の90%以上を払い出すことで法人税を実質的に免除されるメリットがあります。ファンドは23銘柄に投資しており、ポートフォリオの予想配当利回りは9.27%と分配金(配当)が多めなのも魅力のひとつです(※)。
○5位 イノベーション・インデックス・AI
AI関連企業の株式に投資し、STOXXグローバルAIインデックス(世界中のAI関連企業の株価の動きをベンチマークした指数、ネット・リターン、円換算ベース)の動きに連動する投資成果を目指すファンドです。組入上位銘柄はマイクロソフト、メタ・プラットフォームズ、エヌビディア、アルファベットなどとなっており、組入銘柄数は80銘柄です(※)。テーマ型株式ファンドの中では比較的安定的にパフォーマンスを上げています。
○4位 米国インフラ・ビルダー株式ファンド(為替ヘッジなし)
米国におけるインフラ設備の建設、改修またはメンテナンス、建設素材の生産または輸送などに直接関わる企業の株式に投資しているファンドです。組入上位銘柄はモーション・コントロール技術の分野で多角経営を行うパーカー・ハネフィン、175カ国超で事業展開するパワーマネジメント企業のイートン、産業機械メーカーのトレイン・テクノロジーズ、インフラ関連サービス会社のクアンタ・サービシズなどとなっており、組入銘柄数は31銘柄です(※)。直近1年についてはインフラ関連株式の下落により相対的に苦戦しています。
○3位 eMAXIS Neo バーチャルリアリティ
日本を含む世界各国の拡張現実・仮想現実関連企業の株式に投資しているインデックスファンドです。組入上位銘柄は、米国のユニティ・ソフトウェア、メタ・プラットフォームズ、軍事用エレクトロニクスを開発しているイスラエルのエルビット・システムズ、スナップチャットを展開するスナップなどとなっており、組入銘柄数は17銘柄です(※)。3年リターンでは相対的に苦戦しており、17銘柄への集中投資のため標準偏差(値動きの大きさ)が最も大きくなっています。
○2位 シェール関連株オープン
米国、カナダおよびメキシコのシェール関連企業の株式に投資しており、シェールガス/オイルの生産拡大により成長が期待される企業、エネルギーコストの低下により恩恵を受ける企業に着目しているファンドです。
組入上位銘柄は、エネルギーサービスを手掛けるタルガ・リソーシズ、石油メジャーの一角であるシェブロンとエクソンモービル、エネルギー・インフラ会社のウィリアムズ・カンパニーズなどとなっており、組入銘柄数は59銘柄です(※)。2025年に入ってからの下落率は相対的に小さくなっているファンドといえます。
○1位 iFreeNEXT FANG+インデックス
5年リターン1位のiFreeNEXT FANG+インデックスは、米国テクノロジー企業10銘柄で構成されるNYSE FANG+指数(10社の株価をまとめて見られる指標、配当込み・円ベース)の動きに連動した投資成果を目指すファンドです。組入銘柄はアップル、メタ・プラットフォームズ、アマゾン・ドット・コム、マイクロソフト、ネットフリックス、クラウドストライク、サービスナウ、アルファベット、エヌビディア、ブロードコムとなっています(※)。1年、3年でも相対的に好成績のファンドですが、10銘柄集中投資のため値動きが大きく、標準価格に対する上下幅が大きくなっています。
1位から9位までの米国株式ファンドは、2020年のコロナショックによる株価下落後の反発局面、2022年の米金利上昇による株価下落を経験しながら、5年間でS&P500インデックスファンドを上回る実績を上げたファンドです。
中長期的な米国株式の上昇に期待するなら、ファンドの特徴を理解した上で、これらの5年好成績米国株式ファンドの活用を検討するのも有効ではないかと思われます。
(※)組入銘柄の情報は3月末基準。個別銘柄の取引を推奨するものではありません。
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『投資情報メディア』より、記事内容を一部変更して転載。
川上雅人 かわかみまさと SBI証券 投資情報部 シニア・ファンドアナリスト(公益社団法人日本証券アナリスト協会認定アナリスト) 慶應義塾大学卒業。丸三証券で国内株アナリスト、国内大手運用会社で18年間、商品企画・営業などを担当後、2020年よりauカブコム証券でファンドアナリストとして活動。
2022年11月から現職。最新の投資情報を発信する『投資情報メディア』のレポート・コラムなどで投資信託や資産運用(新NISAなど)に関する情報提供を行う。 この著者の記事一覧はこちら
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