米労働省が2025年5月2日に発表した4月雇用統計の主な結果は、(1)非農業部門雇用者数17.7万人増、(2)失業率4.2%、(3)平均時給36.06ドル(前月比+0.2%、前年比+3.8%)という内容であった。
○雇用者数
4月の非農業部門雇用者数は前月比17.7万人増と市場予想の13.8万人増を上回ったが、前月の修正値(18.5万人増)から伸びがやや鈍化した。
もっとも、前2カ月分の下方修正を加味しても3カ月平均の雇用者数の増加幅は13.3万人から15.5万人へと拡大した。トランプ関税が4月の時点では自国の労働市場に悪影響を及ぼしていないことが浮き彫りになった。
○失業率
4月の失業率は4.2%と市場予想通りに前月から横ばいとなった。労働人口に占める働く意欲を持つ人の割合である労働参加率が前月の62.5%から62.6%へ上昇したにもかかわらず失業率が上昇しなかったのは米労働市場の底堅さを示していよう。なお、フルタイムの職を希望しながらパート就業している人などを含めた広義の失業率である不完全雇用率(U-6失業率)は7.8%と前月の7.9%から小幅ながらも改善した。
○平均時給
4月の平均時給(全従業員)は36.06ドルと前月の修正値36.00ドルから0.06ドル増加した。伸び率は前月比+0.2%、前年比+3.8%といずれも市場予想(+0.3%、+3.9%)を下回った。前年比の伸び率は昨年後半に持ち直す場面もあったが、足元では再び鈍化基調にあると見られる。ただ、依然として直近のインフレ率(3月: 2.4%)を大幅に上回っている。
○まとめ
トランプ大統領の関税政策によって米国の企業や個人の景況感が悪化する中で発表された米4月雇用統計は、市場が警戒したほど労働市場の減速を示さなかった。米国の景気後退を巡る懸念が和らいだことを受けて、米金利先物は米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ再開が7月に後ずれすることを織り込んだ水準へと変化。5月はもとより6月も利下げ見送りの公算が大きいとの見方に傾いている。
仮に6月6日に発表される次回5月雇用統計が、4月に続いて米労働市場の底堅さを示すようなら、トランプ関税の悪影響で米経済が減速するとの悲観的なシナリオが一段と後退する可能性もありそうだ。
神田卓也 株式会社外為どっとコム総合研究所 取締役調査部長。1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信(デイリーレポート『外為トゥデイ』など)を主業務とする傍ら、相場動向などについて、WEB・新聞・雑誌・テレビ等にコメントを発信。Xアカウント:@kandaTakuya この著者の記事一覧はこちら
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