初の自叙伝『慟哭の冠』(KADOKAWA)が重版4刷と反響を呼んでいるお笑いコンビ・とろサーモン・久保田かずのぶにインタビュー。芸人としてのブレない信念について話を聞いた。


○「自分を曲げることなくギリギリのラインを攻めていけたら」

大阪時代、賞レースで結果を出すもなかなか仕事が増えず、東京進出後も苦しい生活が続き、その間に妻が家を出てどん底を味わったという久保田。『M-1グランプリ』優勝をずっと目標に掲げ、ラストイヤーの2017年に優勝を果たした。とろサーモン結成から23年。同書では本人が書き溜め続けてきた思いをつづっている。

久保田といえば、毒舌を交えた切れ味抜群の本音トークが持ち味。コンプライアンスが厳しくなっている中でも、自分自身の表現にこだわっている。

「コンプライアンスに対して、すみません参りましたってなるつもりはないです。これからも自分の言葉で表現します。その上で、発言をカットするかどうかはディレクターやスタッフが判断することなので」

ブレない信念は「自分の言葉で正直にしゃべる」ということだ。

「『テレビ的に…』とか思い始めたら終わり。ただ、僕は今までカットされたフレーズ、死んでいった言葉たちが、たぶん僕は他の芸人の何百倍あって、この言い方だったら大丈夫だろうなというセルフコンプラは身についていると思うので、自分を曲げることなくギリギリのラインを攻めていけたらと思います」

○松本人志から「お前らしくなくなるのが一番違う」とアドバイス

優勝の翌年、2018年の『M-1』後には、生配信での発言で炎上する事態に。そのことについても同書でつづっているが、松本人志から「お前らしくなくなるのが一番違う」とアドバイスをもらったことで、「変わらず自分らしくいよう」と改めて覚悟が固まったという。


「松本さんは僕らが優勝したときに別のコンビに票を入れていたので、見てもらえてないのかなと思っていたんですけど、ちゃんと見てくれていたんだと。あの言葉は大きかったですね。ありがたいです」

そして、「僕は行儀よく好感度が高い人間ではないので、みんなに愛されるタレントにはなれませんが、自分の発言の何かが、誰かの人生の劇薬になったらいいなと思っています」と語っていた。

■久保田かずのぶ
1979年9月29日生まれ、宮崎県出身。宮崎日大高校の同級生だった村田秀亮と2002年にお笑いコンビ・とろサーモンを結成。2006年に第27回ABCお笑い新人グランプリ最優秀新人賞、2008年に第38回NHK上方漫才コンテスト最優秀賞を受賞。『M-1グランプリ』では9度の準決勝敗退を経て、ラストイヤーの2017年に初めて決勝に進出し、優勝を果たした。
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