現在Windows 11には、日本語入力システムとしてMicrosoft IME(以下MS-IMEと表記)が搭載されている。標準で有効になっているのは、「新しいバージョンのMicrosoft IME」と呼ばれるもので、設定(時刻と言語 ⇒ 言語と地域 ⇒ オプション ⇒ Microsoft IME ⇒ 全般)で、「以前のバージョンのMicrosoft IME」に戻すことができる(写真01)。
とはいっても、レジストリなどを見てみると、バージョンとしては15.0のままで、変換エンジンなどは同じで、GUIなど見た目だけが変更されているようにも見える。
Windows 11でのMS-IMEは「C:\Windows\System32\IME\IMEJP」に実体がある。ここにいくつかのexeファイルがあり、それぞれ、
IMJPDCT.EXE 単語の登録
IMJPSET.EXE Microsoft IMEの設定
IMJPUEX.EXE Microsoft IMEの詳細設定
imjpuexc.exe コマンドライン設定ツール
となっている。このうち「imjpuexc.exe」は、コマンドラインから一部の設定変更や状態問い合わせが行えるユーティリティである。「imjpuexc.exe HELP」で簡単な説明が表示される。
このツールを使うことで、MS-IMEの稼働中にユーザー辞書を切り替えることができる。具体的には、
C:\Windows\System32\IME\IMEJP\imjpuexc.exe SETCUSTOMDICTPATH <新ユーザー辞書のフルパス>
として、新しいユーザー辞書ファイルを指定する。なお、現在のユーザー辞書のフルパスは、
C:\Windows\System32\IME\IMEJP\imjpuexc.exe GETCUSTOMDICTPATH
で得られる。
原則、オリジナルとなるマシンでのみ辞書登録を行う。辞書登録を行ったら、ユーザー辞書をOneDriveなどで各マシンからアクセスできるようにする。ユーザー辞書のローカルコピー(OneDriveで共有したまま使うと辞書を壊す可能性がある)を作り、imjpuexc.exe SETCUSTOMDICTPATHコマンドでユーザー辞書のファイルパスを指定する。双方向にするのはかなり面倒なのと、単語登録はそれほど頻度も高くないため、時々、手動で行えばいいだろう。
○キー割り当てのエクスポート、インポート
「新しいバージョンのMicrosoft IME」は、変換時のキー割り当てが限定的で、好みのキー割り当てにするには「以前のバージョンのMicrosoft IME」を使う必要がある。ただし、このキー割り当てもMicrosoftアカウントの同期対象になっていないため、自分で割り当てを変更する必要がある。
「以前のバージョンのMicrosoft IME」の詳細設定で「キー設定」を「ユーザー定義」としたとき、キー割り当ての情報は以下のレジストリに記録されている。
HKEY_CURRENT_USER\Software\Microsoft\IME\15.0\IMEJP\StyleList\Custom
ここにあるKeyプロパティにキー割り当てが記録されている。レジストリ上は、バイナリ形式だが、シフトJIS文字列をバイト配列としたもの。以下のPowerShellコマンドで簡単にデコードすることができる(写真02)。
([System.Text.Encoding]::GetEncoding("shift_jis")).GetString((Get-ItemProperty "HKCU:\SOFTWARE\Microsoft\IME\15.0\IMEJP\StyleList\Custom").key) -split "\x00"
他のマシンにキー割り当てを持っていくなら、レジストリエディタで、前記のキーをエクスポートしてregファイルを作り、これを他のマシンでインポートすればよい。キー割り当てが固定しているなら、一回エクスポートしたregファイルをOneDriveなどに保存しておくことで、新規マシンに簡単にインポートが可能になる。
なお、ローマ字設定は、「HKEY_CURRENT_USER\Software\Microsoft\IME\15.0\IMEJP\RomaDef」にある。MS-IMEの詳細設定の「ローマ字設定」で「ユーザー定義」として定義を書き換えると、このキーの下に「Custom」キーが作られ、tableプロパティにローマ字定義が入る。これも実際には、シフトJIS文字列のバイト配列なので、以下のコマンドでデコードできる。
([System.Text.Encoding]::GetEncoding("shift_jis")).GetString((Get-ItemProperty "HKCU:\SOFTWARE\Microsoft\IME\15.0\IMEJP\RomaDef\Custom\" ).table) -split "\x00"
必要なら、こちらもレジストリエディタでエクスポートしたregファイルを、別マシンで実行させれば、ローマ字定義がコピーできる。
今回のタイトルネタは、1968年の英国テレビドラマ「Joe 90」の初回タイトル「The Most Special Agent」から。BIG RAT(Brain Impulse Galvanoscope Record and Transfer)という装置で、他人の経験や知識を転送することで9歳の少年がスパイになる話。初回は、ソ連の最新鋭戦闘機MiG-242を強奪する話で、同じ話を大人がやると、クリント・イーストウッドのFirefox(1982年)になるのかと(こっちはMiG-31)。
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