「みなさんは、質問力がなぜ大事か分かりますか?」
これは質問ですが、明らかに誘導質問です。質問力が大事だと誘導しているからです。
このように、質問はパワーをもっています。
質問が持つ2つの「パワー」

筆者には5才になる双子の孫がいます。3人で会話をしていると、2人の孫は「どうしてこうなの?」とか「それは何?」という興味から多くの質問をしてきます。人間の本来の姿は、興味を持ってこのように質問することなのだとつくづく思います。では、なぜ質問力は衰退するのでしょうか?

学校教育を受けると、知識を詰め込む作業が中心になり、また、答えを当てに行くことが求められるので、質問するという力が無くなっていくと言われています。一説では、学校では9割の質問を先生がして、1割を生徒がするようです。米国などはもっと生徒が質問をするイメージがありますよね。でも、状況は同じようです。

ビジネスパーソンになって、この弊害が強く出るのだと思います。質問ありますか?と聞いても、変なことを言って恥ずかしい思いをしたくない、目立ちたくない、そもそも興味を持っていないなどの理由で、質問をしないのです。しかし、それではもったいないですよ。

質問には、2つのパワーがあります。
1つはコミュニケーションで発揮されるパワー。もう1つはイノベーションや課題解決で発揮されるパワーです。これから2回にわたり、質問が持つパワーについてそれぞれ解説したいと思います。まず本稿では、コミュニケーションでの質問力のパワーです。普段の仕事に役に立ちます。人は、ついついしゃべってしまいますからね(笑)

質問のパワーを体感しよう

コミュニケーションにおける質問のパワーは、議論や対話を深め、より多くの洞察を得る手段となります。正しい質問は、相手の思考を促進し、クリエイティブな解決策を生むことができます。なんてステキ!書籍『人生を変える「質問力」の教え』(WAVE出版 著者:谷原誠)によると、質問には4つの力があるとのことです。これらを組み合わせると、コミュニケーションで強力なパワーを得られます。

・質問は思考を発生させる
・質問は思考の方向性を限定させる
・質問は答えを強制する
・質問に対する答えは相手を縛る

「質問は思考を発生させる」と「質問は答えを強制する」は簡単な話で、質問することで相手が考え始め、答えを出さないといけないと思ってしまう、ということです。聞かれたら、興味があろうとなかろうと、人は答えを考えてしまいます。

「質問は思考の方向性を限定させる」は、冒頭で書いた誘導質問のように、相手の思考をこちらが思っている方向に誘導する力があります。
「なぜ大事か分かりますか?」と質問されたら、「なんで大事なのだろう」と考えてしまいますよね。

「質問に対する答えは相手を縛る」は、コミットメントを強制的に得ることです。「この数字を達成する努力をするか?」と質問されれば、「はい頑張ります」と言ってしまいますよね。
質問のパワーをコントロールする4つのヒント

これらの力とは、ある意味、人の思考をコントロールする技術なのだと思います。ですから、うまく使わないと確実に嫌われます。そのための注意事項は、以下の通りです。

相手の立場を尊重する:ネガティブな質問を避け、敬意を持って質問する。相手の立場に立って質問することです。うまくいっていないときに、"なぜ"の質問は禁止です。追求していると感じられます。
過剰な質問は避ける:質問の量や回答の深さを適切にコントロールし、相手が負担を感じないようにします。
タイミングを見極める:適切な時期や場面で質問を行い、効果を最大化するようにします。

自分の意図を明確にする:目的の分からない質問を避け、意図を明示します。

特に、質問はコミュニケーションなので、相手の立場を尊重して相手の能力や考えを引き出す質問をすることがとても大事だと思います。そうすることで、人をその気にさせる、人をリードする、人に慕われる、信頼関係を構築する、などのポジティブな効果を得ることができます。

では、この質問力を上げるためには、どうやって悩を鍛えればよいのでしょうか?まずは、基本的なことでは、常に興味を持って接するということです。興味から質問が出てくるはずです。また、常に質問を発するようにしましょう。質問はいいことなのです。

オープンエンドな質問とクローズドな質問を使い分ける技も身に付けてください。オープンエンドな質問とは、詳細な回答を引き出すために使用されます。アイデアの創出に有効な方法です。クローズドな質問とは、確認や簡潔な回答を求める際に役立ちます。一言で回答できる質問です。
相手が明確なイメージを持っていない場合には多方面からクローズドな質問をすることで、思考を促すことが可能です。

おすすめは、さまざまな場面においてする質問をリストアップして、それを、状況を見て使うことです。慣れてくるとそういう作業も不要になってきますが、最初はリストがあると安心です。ChatGPTに質問の候補を作ってもらうのもいいかと思います。ちなみに、生成AIの普及によってプロンプトに質問を入れる機会が増えました。それは、質問の練習にはなりますが、その先の考える力は鍛えられないので注意が必要です。

幸い、質問力については多くの書籍が出ています。勉強して、キャリアに生かしてみてください。絶対に得します。コミュニケーションでの質問の大切さが分かりましたか?次回は「コミュニケーション、課題解決編」をご紹介します。

北川裕康 キタガワヒロヤス 35年以上にわたりB to BのITビジネスに関わり、マイクロソフト、シスコシステムズ、SAS Institute、Workday、Infor、IFS などのグローバル企業で、マーケティング、戦略&オペレーションなどで執行役員などを歴任。現在は、独立して経営・マーケティングのコンサルティングサービスを提供しながら、AI insideの Chief Product Officer(CPO)を担当。
大学は計算機科学を専攻して、富士通とDECにおいてソフトウェア技術者の経験もあり、ITにも精通している。前データサイエンティスト協会理事。マーケティング、テクノロジー、ビジネス戦略、人材育成に興味をもち、学習して、仕事で実践。書くことが1つの趣味で、連載や寄稿多数あり。 この著者の記事一覧はこちら
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