第38期竜王戦(主催:読売新聞社)はランキング戦が進行中。5月12日(月)には5組の高田明浩五段―山下数毅三段の一戦が関西将棋会館で行われました。
千日手となった対局は指し直し局を山下三段が137手で勝利。奨励会員としていずれも史上初となるランキング戦優勝および決勝トーナメント進出を実現しています。
○16歳・新鋭の挑戦

藤本渚六段や出口若武六段といった実力者をねじ伏せて勝ち上がってきた山下三段。前局の勝利(4組昇級が確定)によりすでに四段昇段(フリークラス)の権利を手中に収めており、以降はどこまで星を伸ばせるかに注目が集まります。高田五段の先手番で始まった対局は相雁木の持久戦へと移行、ともに仕掛けを得られず対局開始30分で千日手が成立しました。

先後を入れ替えて始まった指し直し局では高田五段が後手番一手損角換わりを採用。右玉に組んでのらりくらりと戦うのはいかにも高田調ですが、本局では山下三段の手厚い指し回しが上回りました。腰掛け銀に組んだのち4筋に自陣角を据えたのが後手の桂頭の弱点を衝く遠見の角。山下三段は伸び伸びとした好形を築き、敵陣を圧迫する形で優位に立ちました。

○最後は強い勝ち方で

他方で敵陣に打ち込みたかった角を自陣に手放さざるを得なかった高田五段は苦戦の感が否めません。直後に飛車を走ったのはせめてもの反撃ですが、金を力強く上がって飛車に当てたのが山下三段の受けの決め手となりました。後手の猛攻を呼び込むだけに怖いものの、孤立した自玉への攻め筋をすべて読み切ってしまうのが最も早いという強い勝ち方です。


ようやく手番を握った山下三段は豊富な持ち駒で反撃を開始します。終局時刻は21時14分、最後は自玉の詰みを認めた高田五段の投了。相手に攻めさせて勝つという王者の指し回しを見せた山下三段は奨励会員として初となるランキング戦優勝および本戦進出を手にしました。この結果を受けファンも「強すぎる」「マンガみたいな展開」「三段リーグがどれだけ過酷な場所か…」と盛り上がりを見せました。

水留啓(将棋情報局)
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