みんなの銀行は5月21日、iBankマーケティングと共同運営する「マネーインサイトラボ」が行った「NISAの利用実態調査(2025年3月実施)」の結果を発表した。調査は2025年3月10日~3月24日、Z世代(19~27歳)、Y世代(28歳~43歳)、X世代(44~59歳)9,072名を対象にインターネットで行われた。

○NISA、全世代で認知度9割超

NISAの認知度について世代別に1年前と比較すると、やや認知度が低かったZ世代でも知っている人が増え、全世代で9割を超えている。どの世代においても、「制度の内容についておおよそ知っている」の割合が5%以上増えているのに対し、「名前だけ知っている」の割合は減っており、NISAがどのような制度なのか?という内容の理解が全世代で進んだことがわかる。

利用率については、こちらも世代別に1年前と比較すると、全世代で5%以上利用率が上昇しており、制度の内容の理解度が上がったことが利用率の向上につながっていると考えられる。特に、X世代では10%近く上昇しており、資産を持っている分、行動に移している人も多いようだ。

逆にZ世代では、他の世代と比べると「利用を検討している」人の割合が高く、投資に対するリテラシーが高くないことや収入や資産が多くないことから、利用については検討に留まっている人が多いのではないかと考えられる。

○NISAの利用状況

NISAを始めた時期は、つみたてNISAが開始した頃がどの世代でも50%前後と最も多く、少額からリスクを抑えた投資ができるつみたてNISAができたことがNISAの利用ハードルを下げたことがわかる。つみたてNISA開始頃にはまだ学生や新社会人だったZ世代は新NISA開始以降に利用を始めた人も44.2%と多くなっている。

つみたて投資枠と成長投資枠の利用状況は、つみたて投資枠のみを利用している人が半数以上という結果になった。つみたてNISA開始時期にNISAを始めた人がそのスタイルで現在も利用しているというケースが多そうだ。特にZ世代では、つみたて投資枠のみ利用している人が7割を超えており、全世代で最も多くなっている。少額からでも始められるつみたて投資枠は、若いZ世代にとって特に利用しやすい制度であることがわかる。

○NISAを利用している理由

どのような理由でNISAを利用しているのか、世代別の理由TOP5を見ていくと、X・Y世代は「老後」、Z世代は「ライフイベント」に備えて利用している人が多く、「なんとなく将来が不安だから」も全世代でランクインしている。
NISAは中長期の資産形成を目的とした制度でもあり、利用者も長い目線で将来に向けた資産づくりに利用したいと考える人が多いようだ。

また、全世代で「預貯金の金利が低いから」がランクインしており、資産を持っているX世代では43.5%と特に高い割合となっているが、2024年3月に17年ぶりにマイナス金利政策が解除、その後2度の追加利上げも行われ預貯金の金利は上昇傾向にある。2025年4月に発表されたアメリカの関税政策の影響で一時的に停滞する可能性はあるが、年単位で見ると利上げが今後のNISAの利用状況に影響してくることも考えられそうだ。

○NISAを利用している人のほうが資産が増えている

NISAを利用している人と利用していない人で、この1年の資産の増え方に違いがあったのかを見ていくと、NISAを利用している人は半数以上の人が1年前より資産が増えており、利用していない人と比べるとその割合は20%以上多いことがわかった。

増えた資産の金額は、増えた資産額が10万円未満の人の割合はNISAを利用していない人のほうが上回っているが、10万円以上100万円未満の割合はほぼ変わらず、100万円以上増えた人の割合は、どの金額帯においてもNISAを利用している人のほうが多くなっている。このことから、 NISAを利用している人は利用していない人と比べて、資産が増えた人の割合が多いだけでなく、増えた金額も大きいことがわかる。

調査の翌月に発表されたアメリカの関税政策への懸念から一時大幅な株価の下落が見られたため、資産額がこの結果から大きく動いた人も多いかもしれないが、現在の株式市場は回復の兆しを見せつつある。

○2025年は投資額を変える?

NISAを利用している人に、2025年の投資額の方針を聞いたところ、前年から「変えない」と回答した人が57.2%と最も多く、変える予定の人はほとんどの人が「増やそうと思っている」ことがわかった。消費意欲が低下し、将来に備えて資産を少しでも増やしたいと考える人が多い傾向にあると考えられる。

NISAを利用している人は2025年3月までの1年で資産を増やした人が多く、その成功体験から2025年も前年と同様、あるいはより多くの金額を投資に充てようとする動きが見られる。ただし、現在は回復基調にあるものの調査翌月の株価の大幅下落の影響により、その後、投資額の方針を再検討した人も存在すると考えられる。また、多くはないが、「減らそうと思っている」人も一定数見られ、投資に回していた資金を一部預貯金にシフトしたり住宅ローンの前倒し返済に回すなど金利が上昇傾向にあることも影響しているのではないかと考えられる。
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