石破茂首相は、5月22日から段階的にガソリン価格を1リットルあたり10円引き下げると発表しました。「あれ? 暫定税率廃止の話はどうなったの?」と疑問に思った人もいるでしょう。
車を日常的に使う家庭にとっては、ガソリン価格が少しでも下がってくれるのは助かります。今回の決定の効果がどのくらいなのか、暫定税率廃止ならどのくらいの効果があるのかなど、ガソリン価格についてのあれこれをわかりやすく解説します。

ガソリンの価格はどうなっているのか

そもそも暫定税率とは何なのか、ガソリンの価格と税金についておさらいしておきましょう。

現在、ガソリンには次の3つの税金がかかっています。

ガソリン税(53.8円/L)
石油石炭税(2.8円/L)
消費税(10%)

ガソリン税を細かくみていくと、本則税率と暫定税率で成り立っています。
本則税率はガソリン税の本来の税率です。1リットルあたり、揮発油税24.3円、地方揮発油税4.4円のあわせて28.7円と定められています。

1974年に道路整備計画の財源が不足している理由から、暫定措置としてガソリン税に上乗せされたのが「暫定税率」です。暫定と言いながら、その後もこの税率分は維持され、現在1リットルあたり25.1円が暫定税率として上乗せされ、ガソリン税は53.8円となっています。

また、ガソリン税は、当初は道路の建設や整備などを目的とした「道路特定財源」でしたが、2009年に、道路特定財源は使い道が限定されない「一般財源」に組み込まれました。この見直しについては、道路の整備水準が向上したこと、道路歳出の抑制などが理由となっています。ただ、そうしたことが理由であるならば、道路整備財源の不足が理由で始まった「暫定税率」は撤廃されるのが筋です。
しかしそうはならず、厳しい財政事情と環境面への影響の配慮を理由として、暫定税率の上乗せ分も含み税率は維持されました。

ガソリンには、ガソリン税(揮発油税)の他に1リットルあたり2.8円の石油石炭税が課され、これらを含めたガソリン価格に対して消費税10%がかかります。そのため、税金に税金がかかる二重課税と言われています。

ガソリンの税金は量に対して課税される従量税であるため、ガソリン本体価格が上昇すると、購入価格に占める税金の比率は低下します。資源エネルギー庁による5月12日時点のレギュラーガソリンの店頭現金小売価格183円/Lを参考に、ガソリン価格を1リットル180円とすると、そのうちの約40%にあたる73円が税金となります。

暫定税率廃止は実現するのか

暫定税率廃止の議論は度々行われてきましたが、実現には至っていません。昨年末の自民、公明、国民民主の三党の合意によって、実現に向けた一歩が踏み出されましたが、スケジュールは示されず、廃止された場合の財源の問題など、クリアしなければならない問題が山積しています。

そうした中で、今回のガソリン価格を段階的に1リットルあたり10円引き下げる方針が示されました。これは、暫定税率の扱いについて結論を得て実施するまでの間、足元の物価高に対応するために実施するものとしています。

具体的には、5月22日から段階的に措置を講じて、1リットルあたり定額10円引き下げます。財源にはすぐに使える基金を活用するとしています。

つまり、暫定税率廃止による減税が実現するまでの間、補助金によるガソリン価格の引き下げを行うということです。
当然、1リットルあたり10円の引き下げより、暫定税率廃止による1リットルあたり25.1円の引き下げの方が効果は大きいので、物価高に直面している多くの国民は、早く暫定税率廃止を実現してほしいと思っているのではないでしょうか。

廃止に向けた与野党間の議論は本格化してきているので、今後の動向を注視していきましょう。
暫定税率が廃止されたら家計負担はどのくらい減る?

例えば、1リットル185円のガソリンを20リットル給油する場合、1リットルあたり10円の引き下げがあれば、200円安くなり3,500円になります。

一方、暫定税率が廃止された場合はどうでしょうか。

現行の制度では、20リットル3,700円の内訳は、ガソリン税が本則税率574円、暫定税率502円、石油石炭税が56円、消費税が336円となり、ガソリン本体価格は2,232円となります。

暫定税率が廃止されると、ガソリン本体価格2,232円に、本則税率のみのガソリン税574円と石油石炭税56円を加えた2,862円に消費税10%がかかるので、3,148円となります。従って552円安くなるということです。

総務省の「家計調査 家計収支編 2024年」によると、二人以上の世帯の1年間で購入するガソリンの量は約430リットルなので、年間で1万1,868円ガソリン代の負担が減ることになります。

石倉博子 いしくらひろこ ファイナンシャルプランナー(1級ファイナンシャルプランニング技能士、CFP認定者)。“お金について無知であることはリスクとなる”という私自身の経験と信念から、子育て期間中にFP資格を取得。実生活における“お金の教養”の重要性を感じ、生活者目線で、分かりやすく伝えることを目的として記事を執筆中。ブログ「ファイナンシャルプランナーみかりこのお金の勉強をするブログ」も運営中! この著者の記事一覧はこちら
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