俳優の吉沢亮が主演を務める映画『国宝』(6月6日公開)のジャパンプレミアが30日、世界遺産である京都・真言宗総本山 教王護国寺(東寺)で開催された。当日は、李相日監督と、キャストの吉沢亮、横浜流星、渡辺謙、高畑充希、寺島しのぶ、田中泯、森七菜、見上愛が登壇した。


○京都・東寺の「国宝」金堂にて開催された『国宝』のジャパンプレミア

会場となった真言宗総本山 教王護国寺(東寺)は、国宝指定されている「金堂」「五重塔」「御影堂」ほか、 重要文化財の「講堂」「南大門」など貴重な建造物が多数あり、 境内一帯も史跡に指定されている京都を代表する遺構。東寺で映画のイベントが行われるのは今回が初であった。

吉沢は「ついに皆さんにこの映画を届けられる日が来ました。撮影の地でもある京都の世界遺産で、こんな素敵な空間で皆様にお届けできるというスペシャルな日を、すごく楽しみにしていました。」とあいさつした。

当日は雨模様であったが、イベントが始まる頃には雨があがり、そのことについて横浜は「今日は不安定な天候で、自分が雨男なので不安ではありましたが、晴れ男・吉沢亮のおかげで晴れました! 東寺という世界遺産で皆様にこの作品を届けられることを幸せに思います」と顔を綻ばせた。

ジャパンプレミアに先立って、第78回カンヌ国際映画祭で公式上映が行われた本作だが、渡辺は「歌舞伎というだけでなく、演目に色々な意味が込められているシーンが多くて、字幕だとどこまでご理解いただけているか分からないという不安はありましたが、映画はお客様に観ていただいてそれで完成するんだというのは、どこの国でも同じだということを実感しました」とコメントした。『国宝』は、芥川賞受賞作家である吉田修一氏の小説が原作で、任侠の一門に生まれながらも、歌舞伎役者の家に引き取られ、芸の道に人生を捧げる主人公・喜久雄の50年を描いた作品だ。

本作の京都での撮影に話題が移ると、吉沢は「僕と横浜くんの踊りから入りました。一つの役の準備にここまで長い期間を設けるというのは初めての経験だったので、僕自身どんな体験をするのか未知数でした。不安を抱えながらも、この作品は自分の集大成であり、僕の代表作になって欲しいという想いも乗せた撮影だったので、ものすごい覚悟を持っていましたし、その分苦しみもしました」と熱く語った。

高畑は「エキストラの皆さんと一緒に客席で見させていただくタイミングが多かったので、本当ただのファンみたいに観ていたのですが、やはり歌舞伎や舞台は引きの世界で、空気で受け取るものが多いと思うんですけど、映画になると圧倒的にすごい寄りの強さがあって感動しました。撮影中に見せてもらった吉沢さんの寄りのカットがあまりに美しくて、引きでも寄りでも見られてラッキーだったなと思いました」と述べ、笑いを誘う。


寺島は「私は歌舞伎の世界の生まれなので、自分が今まで生きてきた環境などのエッセンスなど、どこか私が存在することでこの映画にリアリティが出ればいいな、そういう役割で李監督は私を呼んでくださったのかなと思っておりました」と自身の出自に寄せて想いを巡らす。

森は「私は京都での撮影はそんなに多くなかったのですが、2人(吉沢と横浜)の演目の時にセットを見に行きました。今日はそれ以来の京都なのですが、あのセットを見てからだと京都の街並みにすごくもっと興味が湧いてきて、こんな素晴らしい街で撮られた映画がこれから公開されると思うと……」と喜びをあらわにした。

見上は「私は屋内も屋外も全て京都で撮っていたのですが、今回場所の持つパワーみたいなものをすごく感じた現場で、今まで屋内撮影は東京のセットでもそんなに変わらないだろうと思ってるところもありましたが、実際に京都でお茶屋さんのシーンなどを撮影していく 中で、床や壁、そういうところに滲み出る色々な人の匂いや歴史みたいなものが、街にも建物にもすごく漂っているなと
思って、そういうところにもすごく助けられた撮影だったなと思います」と振り返った。

田中は「とにかく桁外れの門外漢があって、やってはいけないことかもしれないとドキドキするような仕事で、まだ未だに僕の中では終わった気がしてないというか。いわゆる伝統と呼ばれている芸能には、この80歳になるまで触れてきてないんです。僕はそういうものは全部生活の中にあるだろうというふうに自分に言い聞かせてきて、そして前へ行こうという風にして生きてきた人間なので、どのくらいショックが大きかったかご想像できるかと思いますけれども。ぜひ映画の中で僕の内面を想像してご覧になっていた だけたらと思います。2人(吉沢・横浜)の努力はもう壮絶です。本当にこれは、きっと伝統のためにもなると思います。2人の体を伝統が侵食した、これは大事件だと僕は思っています」と吉沢・横浜の演技を絶賛した。

最後に、公開まであと1週間と迫る現在の心境について、吉沢は「我々のこの作品に込めた思いというのは皆様に伝わっていると思いますが、ここまで関係者の試写やカンヌ国際映画祭でたくさんの方に、この作品を絶賛していただいています。
皆様の中でもこの作品のハードルや期待値が高まっているともいますが、確実にその期待は超えていく作品になっていると思います。極上のエンタテインメント作品を皆様にお届けできると確信しております。ぜひ最後まで楽しんでご覧ください」と語った。

(C)吉田修一/朝日新聞出版 (C)2025映画「国宝」製作委員会

【編集部MEMO】
メガホンをとった李相日監督は、2006年に公開された『フラガール』で、第30回日本アカデミー賞最優秀作品賞、文化庁芸術選奨新人賞を受賞している。2010年に公開された『悪人』は、『国宝』と同じ吉田修一氏の原作による作品で、第84回キネマ旬報ベスト・テンにおいて日本映画ベストの1位に輝いている。
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