テレビアニメ『それいけ!アンパンマン』(日本テレビ系)で「神回」と評される作品を連発し、映画最新作『それいけ!アンパンマン チャポンのヒーロー!』(6月27日公開)の脚本も手掛けた葛原秀治氏にインタビュー。執筆する上で大切にしている原作者・やなせたかしさんの精神について話を聞いた。


○やなせさんの言葉「人生は喜ばせごっこ」を大切に

葛原氏は、やなせたかしさんと直接会ったことはないものの、やなせさんの作品を通じてその精神に触れ、作品にも反映しているという。

「やなせさんの言葉で『人生は喜ばせごっこ』というのがありますが、本当にそうだよなと。人が喜んでくれるというのは、自分が認められるということでもあるので、お互いにとってウィンウィン。それは大切にしていきたいなと思っています」

アンパンマンは、自分の顔をちぎってお腹が空いている人に与える。これは、やなせさんが戦争を経験してたどり着いた「逆転しない正義とは、飢えた人にパンをあげることだ」という考えに基づいている。

葛原氏は「やなせ先生にとっての夢の国を映像に落とし込んだものが『アンパンマン』だと思います」と語る。

「自分の顔をちぎってお腹が空いている人にあげるというのは、喜ばせごっこの中でも最上級ですよね。アンパンマンだけでなく、ほかのキャラクターも危険を顧みずに誰かを助けようとする。ばいきんまんですら、たまに誰かのために体を張りますから」

そして、人に喜んでもらうためにも、まずは自分が心から楽しいと思える作品を書くようにしているという。

「自分が楽しいものは他の人が見ても楽しいだろうという思い込みもありますが、まず第一に自分が楽しいと思えるものを。その上で、どういう展開にしたら周りの人がより喜んでくれるだろうということを考えながら書いています」

○『あんぱん』と重なるメッセージ「なんのために生まれて なにをして生きるのか」

また、やなせさんの戦争体験が『アンパンマン』の核にあり、平和への願いが込められているのではと葛原氏は語る。

「やなせさんが中国に出征されていたときに、現地の人たちに紙芝居を披露したら、言葉が通じないのに笑ってくれそうで、敵地だろうがそんなの関係ないんだなと。
基本的にアンパンマンはいつもばいきんまんと戦っていますが、とどめは刺さないというか、本当は仲良くなりたいという気持ちがあるんだと思うんです」

そして、映画『それいけ!アンパンマン チャポンのヒーロー!』について、「やなせ先生をモデルにした朝ドラが放送されているというのはすごくタイムリー。大事な年を任せてもらったなと思います」と語る。

今回の映画のテーマでもある「なんのために生まれて なにをして生きるのか」「生まれた意味は自分で決める」は、やなせさんと妻・暢さん夫婦をモデルにした現在放送中のNHK連続テレビ小説『あんぱん』とも重なるメッセージだ。葛原氏は「今年は日本中が“何をして生きるのか”見つめ直す年になればいいなと願っています」と話していた。
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