テレビアニメ『それいけ!アンパンマン』(日本テレビ系)で「神回」と評される作品を連発し、映画最新作『それいけ!アンパンマン チャポンのヒーロー!』(6月27日公開)の脚本も手掛けた葛原秀治氏にインタビュー。アンパンマンが“お兄ちゃん”になるという物語が生まれた経緯や作品に込めた思いを聞いた。
○映画最新作でアンパンマンの弟的な存在となるチャポン登場
映画シリーズ36作目となる本作は、空から落ちてきた不思議な男の子・チャポンとアンパンマンの絆を描く物語。チャポンは、アンパンマンを兄のように慕い、「ヒーローになりたい!」と願うも、ばいきんまんから自身の出生について衝撃の真実を知らされる。「なんのために生まれて なにをして生きるのか」。原作者のやなせたかしさんが作詞した「アンパンマンのマーチ」のメッセージと重なる物語となっている。
葛原氏は、やなせさんに22歳で戦死した大切な弟がいたということが、アンパンマンの弟的な存在となるチャポンを誕生させるきっかけの一つになったと明かす。
「最初はアンパンマンがパパになるという風に考えていましたが、やなせさんといえば弟だよねということもあって、パパではなくお兄ちゃんにすればいいんじゃないかなと。プロデューサーからの提案もあり、お兄ちゃんになるという話にしました」
チャポンのキャラクターは「ものすごく普通にしよう」という意識で作り上げたという。
「『アンパンマン』のゲストキャラクターは、ちょっとませていたり、逆にすごく弱気だったり、何かしら特徴がありますが、チャポンに関しては、ただ明るく元気という、すごく普通の子にしました。アンパンマンに憧れて『僕もヒーローになる』と言うくらいですから、素直な子だろうなと」
○「やりたいことは自分で決めればいい」というメッセージも
そして、当初はアンパンマンとチャポンのことを「これはやなせ兄弟だ」と意識していたものの、執筆を進めていくうちに独立した兄弟の物語になっていったと語る。
とはいえ、やなせさんが弟への思いをつづった詩画集『やなせたかし おとうとものがたり』などから得たインスピレーションが反映されているそうで、「基本的にやなせ兄弟は仲が良くて、いつでも弟は僕の味方だったと。この物語にもそういう関係性が出ていると思います」と語る。
自分の出生に関して衝撃の事実を知ってショックを受けるも、「生まれた意味は自分で決める!」という思いを胸に立ち上がるチャポン。
「生まれた環境によって有利不利はあると思いますが、それがすべてではない。やりたいことは自分で決めればいいのではないかというメッセージを込めています」
創作の原点には、「なんのために生まれて なにをして生きるのか」という「アンパンマンのマーチ」の歌詞もあったと言い、すべてがつながって「これはいけるぞ」という手応えを感じたという。
やなせさんと妻・暢さん夫婦をモデルにしたNHK連続テレビ小説『あんぱん』とも重なるメッセージの数々。葛原氏は「今年は日本中が“何をして生きるのか”見つめ直す年になればいいなと願っています」と話していた。
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