“テレビでやっているとつい見てしまうランキング”があるとしたら、きっと「秘密のケンミンSHOW極」は上位に食い込むだろう。特に全国各地のご当地グルメや郷土料理というのは興味深く、見ていて惹かれるものがある。
そこで、ある仮説を立ててみた。「もしかしたら、そういう地域ごとの文化や県民性って、Uber Eatsで注文されたメニューでも可視化できるんじゃないか」――というものだ。
今回、ダメ元でUber Eats広報さんに協力を仰いでみたところ、なんと快くOKをいただけた。ということで2024年4月~2025年3月までの1年分の膨大な注文データをもとに、「グルメ×地域性」の関係を分析&考察してみた結果を大発表~!
○■まずは日本全国の「Uber Eats勢力分布」をチェック
そもそもUber Eatsの浸透具合というか、利用率はどの程度のものなのだろうか。首都圏ではUber Eatsの配達員の姿を見ない日などないが、地方はどうだろう?
注文数のエリアごとの割合を上から見てみると、関東、関西、中部、九州・沖縄の順となる。注文数から導くデータ的には、今のところ“Uber Eats=関東文化”と言っても差し支えないだろう。
いっぽう北海道・東北、中国、四国では、Uber Eatsが浸透しているとはまだまだ言い難い。札幌や仙台、広島など確かに大都市はあるものの、中心部から少し離れれば人口密度が少ないという事情が考えられそうだ。首都圏で生活しているとなかなか想像がつかないが、これはこれでリアル。
○■上位ジャンルは全国ほぼ共通、8位以降に各エリアの特徴が出現
続いて、具体的にどのようなグルメが人気なのかを見てみよう。
人気ジャンルのランキングでは、北海道から沖縄まで、なんとすべてのエリアで「アメリカ料理」が1位に君臨! しかも、関西から西のエリアでは、いずれも2位にダブルスコアという圧倒的人気っぷり。また2位も全エリア共通で、「丼もの」がランクイン。
3位以降は、どのエリアでも「和食」「ファストフード」「カフェ」などに人気が集中していた。
ジャンルの内訳について、「アメリカ料理」というのはハンバーガーチェーン店をはじめ、ピザやフライドチキン、バッファローチキン、BBQスペアリブなど、アメリカに根付いている料理を提供しているお店が含まれる。また、「ファストフード」はカレーやナゲットなどの短時間で提供される料理全般、「丼もの」は牛丼をはじめとした丼メニュー、「和食」は定食やお弁当、寿司など多岐に渡る。上位のジャンルは、ハンバーガーチェーンや牛丼チェーンの数の多さがダイレクトに反映された結果だと言えそうだ。
ちなみに“外食の王道”のイメージが強い「中華」は、関東と関西で3位につけたいっぽうで、中部で6位、九州・沖縄では10位と、やや控えめ。
8位以降はエリアごとの特色が、より色濃く表れる。たとえば関東と関西では「アジア料理」が、中部では「ファミリー向けメニュー」が、九州・沖縄では「デザート」が8位にランク。さらに九州・沖縄で堂々4位につけた「揚げ物メニュー」は、他エリアでは10位以下にとどまっており、地域ごとの個性が反映される結果となった。
○■人気ジャンルの傾向から、どんな“食の嗜好性”の違いが見える?
それでは20位までのランキング結果に基づき、エリアごとの“食の嗜好性”を考察していこう。
関東はまさに「食のトレンドセッター」。注文の実に約6割が関東に集中し、そのマーケットは熟成度MAX。ランキング上で多彩なジャンルがひしめきあっているのも、選べるお店の数が桁違いに多いのと、ユーザーが自由に使いこなしているからだと考えられる。
ちなみに、「ヘルシー」系メニューは関東でのみ、TOP20に登場。グルメ感度の高さ、恐るべし……!
関西は“なんでも来なはれ”の精神を持つ「食のオールラウンダー」。注文数は堂々の2位、和食や中華といった家庭的メニューが根強い人気を誇る一方で、カフェ系やアジア料理などの多様なジャンルにも手を広げている。しかし、関西のソウルフード“粉もの”は、どのあたりに位置するのか……?
中部は「食のバランスマスター」。和も洋もバーガーもカフェ飯も何でもござれ、全方位型の食いしん坊エリアとして、“グルメ適応力”の高さが光る。また「ファミリー向けメニュー」が他エリアよりも上位に食い込んでいることから、家族でのデリバリー利用が顕著で、団らんの時間を食で彩る“ホーム・デリバリスト”な顔も浮かび上がる。
九州・沖縄は「食のエンターテイナー」。関東や関西には見られない「デザート」のカテゴリが8位にランクインしたのは、やはり食に対する“楽しむ心”が強いからなのかもしれない。さらに驚きなのは、「麺類」より、「イタリアン」や「インド料理」が上位に入っていたこと。九州といえば博多ラーメンのイメージが強いが、店頭で楽しむ傾向か? 替え玉もしたいし……。
そのほかの地域はそもそも注文数が圧倒的に少ないが、あえてキャラ付けするとすれば、満腹メニューが上位を締める北海道・東北エリアは「食のガッツリファイター」。唯一、日本式カレーがTOP20入りしているのも興味深い。
中国エリアは「粉もの文化のサクセサー」。今回のランキングで唯一、粉ものメニューが15位に光っており、広島風お好み焼きに代表される熱い“粉もん魂”を感じさせる。さらに、関西以外で唯一ブランチ系メニューが顔を出しているのも見逃せない。
四国はいわば「食のご褒美マスター」。世界の味からローカルグルメまで幅広く愛しつつ、コーヒーやティーなどのドリンク類が20位以内に顔を出していて、これは他エリアには見られないユニークな傾向だ。TOP20入りのデザートとタピオカティーも含めて、四国って意外に“ティータイム文化圏”なのか……?
○■思ってたのと違う!? 意外なご当地ギャップも
ランキングでは、意外な発見もあった。関西といえば「お好み焼き」「たこ焼き」などのイメージが強いが、TOP20内に“粉もの”カテゴリーはなし。これは、「たこ焼きもお好み焼きも自分の家で作るのが当たり前=デリバリーしない」というレベルで、生活に馴染んでいる可能性も十分にあるだろう。
また、九州はラーメン一強かと思いきや、意外にもデザートが、4エリアの中では唯一のTOP10入りを果たした。いっぽうで関東、関西、中部で20位以内に食い込んだタピオカティーは、九州・沖縄では圏外という結果に。
全体を見ると、地域性が出ていないような出ているような、不思議な傾向を察知。というか、この多様性の時代、そもそもそういう先入観や固定観念がもう通じないのかもしれない。
食の好みも多様化し、今や「ご当地グルメ」よりも「自分の好き」が優先される時代なのだろう。
○■以上ふまえて教えて、Uber Eats広報さん!
これらの結果をUber Eatsのオフィシャルはどのように見ているのか。広報さんに聞いてみた。
「全国の地域別注文データを見ると、アメリカ料理のメニューは全国すべての主要地域で最も多く注文されており、その圧倒的な人気が際立っています。ハンバーガーやチキンなどは食べ応えがあり、価格も手頃で配達サービスとの親和性が高いため、テイクアウト文化の進展とも相まって幅広い層に支持されています」
また、ジャンルをさらに細分化した“⼩カテゴリ”における地域的な傾向についても教えてくれた。
「北海道・東北を除く全てのエリアで最も人気があるのはドリンクカテゴリですが、北海道・東北ではチョコレートの注文件数も首位。これは、寒冷地特有の甘党文化が影響しているのかもしれません。全国すべての地域で一律にトップとなる⼩カテゴリは存在せず、多様な地域特性や生活スタイルの違いが注文傾向に反映されていることがわかります」
今後の注目トピックスについては、「『ヴィーガン』や『アサイー』といった健康志向メニューが急増しています。特にヴィーガン料理の成長率は著しく、今後のトレンドとして大きな期待が寄せられています」とのこと。ちなみに「チベット料理」「ミャンマー料理」などのアジアの隠れた美食料理も、非常に高い伸びを記録しているそうだ。
日本全国の地域ごとの"食の嗜好”の傾向が、Uber Eatsの注文データによって垣間見えた今回のランキング結果。全体としてアメリカ料理が圧倒的な注文件数を誇りつつ、地域特有の“好み”も確実に存在していることがわかった。
健康志向メニューの著しい成長なども目立ち、ランキングは大いに変動していく可能性もありそうだ。Uber Eatsの今後の展開にも注目していきたい。
編集部おすすめ