俳優の吉沢亮と横浜流星が出演している映画『国宝』(公開中)が、開催中の第27回上海国際映画祭においてインターナショナル・パノラマ部門 カンヌ エクスプレス作品として出品され、6月18日に公式上映が行われた。

○『さらば、わが愛/覇王別姫』からの影響にも言及

『国宝』は、2017年から朝日新聞にて連載された吉田修一氏による同名長編小説の実写化作。
歌舞伎界を舞台にした原作は、連載時から大きな話題となり、2019年に「第69回芸術選奨文部科学大臣賞」と「第14回中央公論文芸賞」をダブル受賞している。

上海国際映画祭では、1,300人が収容できる大光明電影院で上映が行われ、上映後は、李相日監督がQ&Aに登場した。

李監督は、「ニーハオ」と中国語で挨拶をすると、上海国際映画祭に参加しての感想として、「今回、上海で上映できることは僕にとって特別な想いがあります。『国宝』の映画制作にあたり、学生時代にチェン・カイコー監督の『さらば、わが愛/覇王別姫』を観た衝撃から、いつかこんな映画を撮ってみたいという想いを持っていた。それが 歌舞伎をテーマに映画を撮ってみたいという思いにつながっていました」と制作秘話を語った。『さらば、わが愛/覇王別姫』は、京劇役者を主人公に、日中戦争、文化大革命と時代に翻弄された人々を描き、第46回カンヌ国際映画祭で最高賞となるパルム・ドールを受賞している。

来場者からの「涙が出るほど感動しました。吉沢亮さんと横浜流星さんは今までと全然違う表情でした。こんな素敵な演技ができると想像できなかったです。なぜ2人をキャスティングしたのかとても興味があります」という質問には、「顔が美しいからです(笑)」と、会場の笑いを誘ったのち、「喜久雄という人間を考えた時に、吉沢亮さんしか思い浮かばなかった。彼の中が見えないというか、いくら想像しても広い空間があいているような感じがしました。横浜流星さんはとても努力家。
努力を惜しまない人で、歌舞伎俳優をどこまでも演じられると思いました」と、吉沢、横浜が最高のキャスティングであったと所見を述べ、二人を讃えた。

観客からはQ&A中も作品を絶賛するコメントに溢れ、カンヌ国際映画祭に続き、世界を熱狂させる上映となった。

(C)吉田修一/朝日新聞出版 (C)2025映画「国宝」製作委員会

【編集部MEMO】
メガホンをとった李相日監督は、2006年に公開された『フラガール』で、第30回日本アカデミー賞最優秀作品賞、文化庁芸術選奨新人賞を受賞している。2010年に公開された『悪人』は、『国宝』と同じ吉田修一氏の原作による作品で、第84回キネマ旬報ベスト・テンにおいて日本映画ベストの1位に輝いている。
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