俳優の小栗旬、松坂桃李初共演の映画『フロントライン』(公開中)の舞台挨拶が大阪のT・ジョイ梅田とあべのアポロシネマで実施され、窪塚洋介、窪塚演じる仙道のモデルとなった近藤久禎医師、関根光才監督が登壇した。

○誰もが当事者であったコロナ禍を振り返りつつ、窪塚洋介が映画の持つ力を熱弁

『フロントライン』は、新型コロナウイルスを事実に基づく物語としてオリジナル脚本で映画化した日本で初めての作品。


6月13日に公開となった本作は、全国366館で上映され、公開初日から3日間の動員が25万人、興行収入3億4,699万円を記録し、オープニングの週末観客動員数/興行収入としては、『劇場版 トリリオンゲーム』『#真相をお話ししますル』に次いで、2025年公開の実写邦画作品としては第3位の成績となっている。また、2025年に公開されたオリジナル脚本の邦画実写作品の中では第1位のオープニング成績となっている。

公開から2週目に突入し、多くの感想がSNSなどで共有される中、窪塚洋介、窪塚演じる仙道のモデルとなった近藤久禎医師、関根光才監督が感謝の思いを伝えるべく、大阪のT・ジョイ梅田 シアター6とあべのアポロシネマ シアター4で実施された舞台挨拶に登壇。大阪でのエピソードや『フロントライン』Q&Aなど今だから話せる撮影の裏側を語った。

大阪在住の窪塚は「(大阪に住み始めて)13 年ぐらいになるので、ナビを使わずに運転できるようになりました(笑)。関西圏の雑誌で連載もさせていただいていて、総集編が本になって発売になると思うので楽しみにしていてください」と告知をしたところで、客席から「見てます!」との声が。「ありがとうございます! 感謝!」と窪塚が返すと、劇場内はアットホームな雰囲気に。

大阪で窪塚が舞台挨拶に立つことが決定し、急遽駆けつけた近藤医師は、Disaster Medical Assistance Team(略称「DMAT」)の一員として全国を飛び回り色んな現場を経験する中で「実際に一番大変だったのは1年後の大阪で流行り出した変異株だったかと思います。大阪の全ての救急車は現場で2時間以上スタックしてる、クラスターも40を超えるという状況で我々も支援に入らせていただきました。実際に船で一緒に対応していた医師も何人かいて、そんな中でも、医療事業の福祉の方が患者さんのために何ができるかと考えていただいて。大阪のスタッフの方々と一緒に乗り越えたというのは思い出になってます」と対応にあたった時のことを振り返った。

「太陽の塔」のドキュメンタリーなど大阪にゆかりのある作品を制作していた関根監督は「大阪には何度も足を運んでいて、毎回ほっとして。
普通にご飯食べていてもコミュニケーションしてくれるので有難いですね」と大阪の魅力について語った。

2回実施された舞台挨拶は、上映後ということで今だから話せるQ&Aのコーナーを実施。最初に挙手した観客から「私事なんですけれども、先日妻が妊娠していることが発覚しまして、窪塚さんのファンなんで何か一言いただけたらと」というリクエストが飛び出すと、窪塚は「おめでとうございます! 夫婦は向かい合うな、寄り添えということでかれこれ10年ほど仲良くやっております。向き合うと嫌なことが見えたりするけど、 寄り添うと前向きな話をするといのがあって。それは、大きな現場で100人と一緒に仕事をしている時も、100人1列になって同じ方向を見てるっていう気持ちでいるようにしていて。自分自身にも寄り添うという感覚でやっています。バーカウンターの法則というんですけど。そんな感じで仲良くやっていっていただければなと思います」と俳優としての現場での心構えも交えながら窪塚ファンという夫婦にエールを送った。

続く「何を大事に作品を作っていったのか」という質問に、窪塚は「近藤先生がモデルになった仙道という役だったんですけど、今回は近藤先生になるというアプローチではなくて、近藤先生が体験したことを仙道として追体験するみたいなことでした。DMATの方は忙しいのにいつも どなたかは現場にいてくださって監修していただきました。一心同体という感じで安心感が本当にありました。監督がOK出してもDMAT的におかしいところがあったら絶対言ってくださいってお願いしてたんです。
そのリアリティは胸を張って良いんじゃないかと思ってます」と撮影の様子を紹介した。

近藤医師は「友人から色々感想を聞いていると窪塚さんのしゃべり方がなぜか僕にそっくりだと(笑)。それはどちらかと言うとしゃべり方というよりも、我々が何を大切しているのか、それを分かっていただいているから特徴とかも出てきたんじゃないかと思います」と周囲からの感想を受けて気づいた点を明かした。

そして、1回目の会場を後にした3人は次の会場に到着。こちらでも映画を見たばかりの感動に包まれた雰囲気の中、大きな拍手で迎えられた。

こちらの会場でのQ&Aでは、最初に「素晴らしい映画を作っていただいたことに感謝いたします。私も医療関係者で、自分の勤めてる地域のコロナ患者さん第1号を受け入れた病院に勤めていたんですけれども、やっぱりその時の誹謗中傷だったりとか、差別を受けたり、すごい電話の対応とかも大変で、実際に同僚が保育園断られたりとか、本当に現実的なリアルな話を見ても、走馬灯が走ったぐらいでした」という感想の声が上がり、近藤医師は「ダイヤモンド・プリンセス号だけじゃなくて、特に受け入れた病院もそうだったんですよね。自分たちが起こしちゃったというような罪悪感があったりします。誰も悪くないんだよって、運が悪かっただけだって言って声をかけると、その時点でもう泣き崩れちゃう方もいました」とパンデミックが起きた当初の状況にも触れ、窪塚も「他の映画には中々ないなと思うのは、この映画の中に自分も登場人物として参加してるっていう。5年前のことなんだけど、やっぱり、すごい強烈な時間だったから、すごく親近感を持って見ていただいて。映画の力というのを感じています」と誰もが当事者であったことと、改めて本作の持つ力を伝えた。

関根監督は「やっぱり差別って本当に身近にあるっていうか。
知らない間に自分たちが差別をする側に加担している可能性がすごくある。だからこの映画ではできるだけ善悪というか、そういうことを描かないようにしておりました。自分はどうだったかなというのを振り返られたら。明日の見え方が変ってくるのではないかという思いがあります」と制作する上で本作に込めた思いを明かした。

語り合う感想や質問が尽きず、窪塚は「ちょっとなんかもう、もう1回見ましょうか」と笑いを誘いつつ時間が許すまでQ&Aを続け、観客と登壇者が直接言葉を交わし合う熱い舞台挨拶となった。

(C)2025「フロントライン」製作委員会
編集部おすすめ