テレビアニメ『それいけ!アンパンマン』(日本テレビ系)で「神回」と評される作品を連発し、映画最新作『それいけ!アンパンマン チャポンのヒーロー!』(6月27日公開)の脚本も手掛けた葛原秀治氏にインタビュー。幼少期の子供たちに大きな影響を与える『アンパンマン』を手掛ける責任とやりがいについて話を聞いた。


『それいけ!アンパンマン チャポンのヒーロー!』は、空から落ちてきた不思議な男の子・チャポンとアンパンマンの絆を描く物語。チャポンは、アンパンマンを兄のように慕い、「ヒーローになりたい!」と願うも、ばいきんまんから自身の出生について衝撃の真実を知らされショックを受ける。「なんのために生まれて なにをして生きるのか」。原作者のやなせたかしさんが作詞した「アンパンマンのマーチ」のメッセージと重なる物語となっている。

2018年から『アンパンマン』の脚本を手掛け、映画を担当するのは2022年公開の『それいけ!アンパンマン ドロリンとバケ~るカーニバル』以来、2作目となる葛原氏。本作をきっかけに、「“何をして生きるのか”見つめ直す年になればいいな」と願うも、自身については明確なビジョンはないと言い、「みんなが笑ってくれればいいかな。そして、ある程度ちやほやしてもらえたら」と笑顔で語る。

そんな葛原氏が脚本家として大切にしていることは、『アンパンマン』の原作者・やなせたかしさんの「人生は喜ばせごっこ」という言葉だ。

「大前提として自分が面白いと思うこと。そうでないと書けないので。その上で、自分だけが面白がっても仕方ないので、みんなを喜ばせたいという思いがあります」

また、「脚本は設計図で、そのものは作品ではない」と考えている。

「脚本家はアーティストではなく、あくまでも技術者。
脚本は設計図なので、良きように使ってくださいという気持ちで、書いた通りにしてほしいとは思いません。それを元に、プロの方々がもっといいものにしてくださるので」

だからこそ、視聴者や観客だけでなく、制作スタッフもワクワクさせたいという思いがあるという。

「作画や音響など、脚本の先にいるスタッフの方が読んで、やる気になってくれるものを書ければいいな。『こんなのつまらない、やりたくない』とは思われたくない。『こういうのがやりたかったんだ』と思われたいです」

○「人生は喜ばせごっこ」「自分の得意なことを見つけよう」と伝えたい

そして、国民的アニメ『アンパンマン』に関わったことで、脚本家としてのやりがいを大いに感じるとともに、幼少期の子供たちに『アンパンマン』を届けるやりがいや責任感も感じていると葛原氏は語る。

「3~4歳頃の子供たちに見てもらえるというのはすごくいいなと。僕自身、3~4歳頃に見たアニメや漫画はずっと根付いて覚えていて、影響がとても大きいと感じているので、僕の『アンパンマン』のお話を見て、ものすごく刺さって、大きくなってからも『あの話が忘れられない』という風になってくれたら」

また、「『人に迷惑をかけない』『人生は喜ばせごっこ』、あと『自分の得意なことを見つけよう』ということも伝えられたら。『アンパンマン』はいろいろなキャラクターがいて、それぞれ特技を持っているので、彼らみたいに、『私これだったら誰にも負けない』『私はこれが誰よりも好き』みたいなものを見つけてほしい」とメッセージ。

続けて、「てんどんまんを見て、天丼屋さんになるという人はいないかもしれませんが、『てんどんまんは天丼を作るのが得意。僕はサッカーが好きだからサッカーを極めよう』みたいに思ってもらえたら。ナンバーワンを目指していたら、いつの間にかオンリーワンになれるのではないかなと思います」と語った。

今後の『アンパンマン』における抱負を尋ねると、「『アンパンマン』の最終回なんて当分来ないと思うので、たぶん僕が死ぬ方が先なのではないかなと。
なので、死ぬまで書き続けたいです」と答え、「20年後とか30年後に、僕の話を子供の時に見て、自分も脚本家になりたいと思ったという人が出てきたら、もう感激です」と笑顔を見せる。

「今、仕事が楽しくてしょうがないので、これからも楽しく仕事できれば」と創作意欲あふれる葛原氏。「『アンパンマン』の映画にタイムマシンを登場させ、タイムトラベルをテーマにした作品をやりたい」という願望も明かしていた。
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