俳優のオダギリジョーが主演・共同プロデューサーを務める映画『夏の砂の上』(7月4日公開)が第27回上海国際映画祭のコンペティション部門で審査員特別賞を受賞した。日本映画が同映画祭で同賞を受賞したのは、岩井俊二監督の作品『リリイ・シュシュのすべて』以来、23年ぶり2度目。
『夏の砂の上』は、読売文学賞の戯曲・シナリオ賞を受賞した松田正隆氏の戯曲を、玉田真也監督が映画化した作品。物語は、息子を亡くした喪失感をきっかけに人生が止まってしまった主人公と、妹が置いていった17歳の姪との突然の共同生活からはじまる。愛を失った男、愛を見限った女、愛を知らない少女……それぞれの痛みと向き合いながら、彼らが夏の砂のように乾き切った心に、小さな希望の芽を見つけていく姿を描いている。
主人公・小浦治は本作で共同プロデューサーも務めるオダギリジョー、治の姪・優子を高石あかり、治の妻・小浦恵子を松たか子、優子の母で治の妹・阿佐子を満島ひかり、優子へ好意を寄せる男性・立山を高橋文哉、治が働いていた造船所の同僚・陣野を森山直太朗、同じく同僚・持田を光石研が演じている。
本作品は、第27回上海国際映画祭コンペティション部門に日本作品で唯一招待されていたが、審査員特別賞を受賞する結果となった。クロージングセレモニーには、主演・共同 プロデューサーをつとめるオダギリ、高石あかり、玉田監督が出席。華やかなレッドカーペットを歩き、授賞式に参加した。
オダギリ、髙石、玉田監督が壇上に呼び込まれ、司会から祝辞のち、改めて本作の受賞を振り返り、オダギリは「海外で日本の作品が選ばれるというのは、ちゃんと伝わっているんだなと安心になるし、(映画作りを)これからも頑張っていこうという活力になります。よくよく振り返ると、自分は今回プロデューサーの立場でもあるので改めて嬉しいです」とプロデュース作品が初めて海外映画祭で受賞したことを喜んだ。本作で海外映画祭初参加となった髙石は、「自分の俳優人生にとってすごく大切な作品。まずは日本の方に届けていきたい」、玉田監督も、「ずっと念願だった企画。考えられる限りの最高の出演者に集まっていただいてベストを尽くした作品のひとつの結果が出て嬉しい」と喜びを露わにした。
1993年から始まった上海国際映画祭は、中国で唯一、国際映画製作者連盟公認の映画祭として、映画文化の普及と映画産業の発展とを目的に、毎年10日間の会期中に国内外の約500作品が上映されている。『夏の砂の上』は、今年15本の作品が選出されたコンペティション部門で日本作品唯一の上映となっており、審査員長は『ニュー・シネマ・パラダイス』のジュゼッペ・トルナトーレが務めていた。
(C)2025 映画『夏の砂の上』製作委員会
【編集部MEMO】
映画の原作となった戯曲『夏の砂の上』は、長崎出身の劇作家・演出家である松田正隆氏によるもの。松田氏の戯曲『紙屋悦子の青春』も映画化されており、2003年公開の映画『美しい夏キリシマ』では、脚本を手がけている。代表を務める京都を拠点とした演劇カンパニー「マレビトの会」の作品は、国内はもとより、海外でも数多く上演されており、その名は世界に知れ渡っている。
編集部おすすめ