俳優の阿部寛が主演を務める映画『キャンドルスティック』(7月4日公開)で監督を務める米倉強太氏と、映画監督・藤井道人氏の対談が公開となった。
『キャンドルスティック』で監督を務める米倉強太氏は、元『MEN'S NON-NO』専属モデルであり、GUCCIやユニクロなどの広告映像を手がけてきた映像作家でもある。
その米倉監督が影響を受けたのが、『新聞記者』『余命10年』『青春18×2 君へと続く道』など話題作を次々と手がけ、第48回日本アカデミー賞で最優秀監督賞を受賞した藤井道人監督。ともに30代の2人が、デビュー時の経験や映画製作における哲学を語りあう対談がこの度公開された。
○『キャンドルスティック』が生まれるまで
米倉監督が⻑編映画に挑むきっかけとなったのは、パリでの展示で出会ったプロデューサー・小椋悟氏のひと声だったとのこと。初期段階では、中国の「元」が日本の「円」を飲み込むという、よりスケールの大きな構想だったという。撮影は難航し、阿部寛が出演を決めたのはクランクインの約4カ月前。台湾やイランのキャストが未確定のまま、相手役のいないシーンでは、阿部はストイックに演じ切り、米倉監督は「現場の緊張感を支えてくれた」と評している。そんな状況で始まった作品の監督に抜擢された米倉監督に対して、藤井監督は、「もし自分がこの企画でデビューしていたら、きっと無理だった。それくらい大変そうな企画ですよね」と驚きつつ、自身のデビュー作『オー!ファーザー』での経験を回顧。「当初は右も左もわからず苦しんで、その後は一度自主映画に戻った」 と語り、米倉監督の苦労に思いを馳せている。
○「インディーズスピリット」とは何か? 藤井監督の映画哲学
『新聞記者』などを通じて「社会派」のイメージも強い藤井監督だが、自身は「インディーズという概念はもはや精神的なもの」と語り、全スタッフが責任感を持って作品に向き合うことが「真のインディーズ」だと持論を展開する。藤井監督は「メジャー作品でも連帯感を持てる現場づくりが必要」とも発言し、「自主映画のような熱量が、大作現場にも求められる時代になっている」と釘をさす。米倉監督は「『キャンドルスティック』では自主映画からともに歩んできたスタッフと制作することができた」と述懐し、「全員が『自分事』として作品に取り組めた」と振り返るとともに自信をのぞかせる。
○インディーズでは「食べていけない」現実をどう乗り越えてきたか
藤井監督は「メジャーとインディーズの境界は曖昧になっているが、現実問題としてインディーズでは食べていけない」と警鐘を鳴らす。「精神性ではインディーズでも、経済的にはメジャーの枠組みでやる必要がある」と説き、生活とクオリティの両立を強く意識している点を強調。デビュー作後に一時インディーズに戻った経験も踏まえ、「プロデュース力や宣伝との連携も、監督の重要な仕事」とも述べた。米倉監督は「藤井監督の作品は『伝える力』に優れている」点を指摘し、『新聞記者』のモンタージュに感銘を受けたと吐露。藤井監督は、その力の源について「自主映画時代に鍛えられた」、「伝わるかどうかは常に自分が一番厳しく見る」と語っている。藤井監督のこだわりに感銘を受けたという米倉監督は、藤井監督の現場をいつ か見学したいと希望。藤井監督も「『キャンドルスティック』が米倉監督の映画人生の始まりになる。賛否は必ずあるが、変化に負けず続けてほしい」と熱いエールを送っている。
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【編集部MEMO】
『キャンドルスティック』の原作は、自身もトレーダーである川村徹彦氏の小説『損切り:FXシミュレーション・サクセス・ストーリー』。川村氏は、元ヘッジファンドマネージャーの杉田勝氏とともに、2007年、FXスクール事業を行うWin-invest Japanを創業し、代表取締役社長に就任する。同社設立後、FXセミナーの受講生は約1万人にのぼり、金融業界での多数の成功者を輩出している。
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