俳優の妻夫木聡が主演を務める映画『宝島』(9月19日公開)の全国キャラバンの第4弾として、妻夫木と大友啓史監督が富山県を訪問した。

戦後沖縄を舞台に、歴史の陰に埋もれた真実を描く真藤順丈による小説『宝島』。
第160回直木賞をはじめ、第9回山田風太郎賞、第5回沖縄書店大賞を受賞するなど3冠に輝いた本作が、東映とソニー・ピクチャーズの共同配給によって実写映画化された。監督は様々なジャンルや題材を通して常に新たな挑戦を続ける大友啓史。主演には妻夫木聡を迎え、広瀬すず、窪田正孝、永山瑛太ら日本映画界を牽引する豪華俳優陣が集結し、誰も見たことがないアメリカ統治下の沖縄を舞台に、混沌とした時代を全力で駆け抜けた若者たちの姿を圧倒的熱量と壮大なスケールで描く。

「『宝島』は、“人生のバトン”の物語。映画を越える存在になっているこの作品を、皆さんに直に会いに行って届けたい!」と、「宝島宣伝アンバサダー」として全国行脚することを宣言した妻夫木は、6月7日に実施された沖縄プレミアを皮切りに、第2弾の静岡県、第3弾の愛知県に続き、第4弾では、大友啓史監督とともに富山県を訪れた。

富山といえば、2001年に公開された、妻夫木の初主演映画『ウォーターボーイズ』で、動員全国2位という記録を樹立した映画館・ファボーレ東宝(現・TOHOシネマズ ファボーレ富山)の所在地であった、妻夫木にとって特別な地。映画のロケ地でも舞台でもない一都市の映画館が、純粋に「作品を応援したい!」と宣伝した結果が全国2位の動員を上げたという、まさに「伝説」が生まれたことでも知られている。初主演映画の公開時に、「作品を観客へ直接届ける」という想いが富山の「伝説」を生んだことを目の当たりにした体験も、今回『宝島』宣伝アンバサダー就任を決意する際に、妻夫木の背中を押した。

6月28日、「伝説」誕生の地である映画館・TOHOシネマズ ファボーレ富山を妻夫木が再訪。『宝島』に懸ける熱い想いを携え、大友監督とともに舞台挨拶に登壇。さらに、24年前の「奇跡」の仕掛人である元・劇場支配人とも、思い出の地で感動の再会を果たした。

富山の地に到着してすぐ、妻夫木と大友監督は、富山駅前に位置する「FMとやま アーバンスタジオ」にて公開収録を実施。
二人がゲスト出演するという情報を聞きつけ、300人を超える聴衆が駆けつけた。公開収録では、番組リスナーから寄せられた「富山の好きな名所は?」という質問に対して、大友監督は「黒部ダム。被写体として優れている場所なので職業柄撮りたくなってしまう」と映画監督らしい返答を。続いて妻夫木が「ファボーレ富山です」と答えると聴衆からはうなずく反応が。「僕にとっては聖地ですし、映画の奇跡を感じた場所。その奇跡をまた感じたくて始めたこの『宝島』キャラバンなので、僕としては特別な想いがあります」と語るなど、富山に関する熱いエピソードを披露し、大盛況のイベントとなった。本公開収録の模様はFMとやま『水曜日のひなたぼっこ』(毎週水曜 11:30~12:55)にて、7月2日、9日の2日間にかけて放送の送定となっている。

その後、二人は「TOHOシネマズ ファボーレ富山(旧・ファボーレ東宝)」に到着。24年前、『ウォーターボーイズ』で全国2位という動員記録を達成した、妻夫木にとって特別な思い出の地である。妻夫木が映画館のスタッフが用意してくれたウェルカムボードを眺めていると、そこに現れたのは、24年前、『ウォーターボーイズ』公開当時、支配人を務めていた藤村健二さん。すでに現場を離れていたが、今回、『宝島』の舞台挨拶の実施を聞きつけ駆けつけてくれたという。二人は熱い拍手を交わすなど久々の再会を喜び合っていた。
「本物 を見るのは久しぶりです(笑)」という藤村さん。妻夫木が「ファボーレ東宝での舞台挨拶で愛を深く感じた……鮮明に覚えています」と当時の思いを噛みしめると、藤村さんは「『ウォーターボーイズ』を見たときに、”これ面白いじゃん”と。だから映画館のスタッフみんなで観て、”盛 り上げたい! やりたいことをやりましょう!”と全部スタッフがアイディアを出して工夫を凝らしたんです」と語るなど、スタッフの思いが24年前の快挙の原動力になったことを振り返った。また、妻夫木が「改めて当時の写真をみたら、僕、私服で来てました……。びっくりした(笑)」と懐かしむなど和やかな雰囲気包まれた。
○妻夫木聡にとって念願の再訪となる富山の地

北陸で『宝島』が一般の観客に上映されるのは今回の先行上映会が初めてということで、公開を9月に控えるも待ちきれないファンたちが集まり、191分の大作を思い思いの感情をもってして堪能した。映画上映後、興奮冷めやらぬ会場に二人が登場すると観客からは割れんばかりの歓声が。観客の中には、スクリーンで繰り広げられる圧倒的な物語の余韻に浸り涙を拭う人も見られるなど、会場全体が温かい空気に包まれる中、妻夫木は「久しぶりに帰ってきました!」と挨拶をすると、場内は温かい拍手に包まれた。大友監督も、「こういう日を夢見て頑張ってきたので感無量です」と笑顔を見せた。

全国キャラバン第4弾として、かねて願っていた富山を再訪でき、大きな喜びを感じているという妻夫木。「『宝島』全国キャラバンを始めたきっかけとなったのが、初めて主演した『ウォーターボーイズ』という作品で全国をまわった経験で、またあの時の気持ちに戻りたいという思いでした。その中でも大きなきっかけとなったのがファボーレ東宝の存在が大きくて。
当時舞台挨拶に来てびっくりしたのが、映画館の支配人含めスタッフの方々が『ウォーターボーイズ』を愛してくれて、それぞれの方が考えてくれたアイディアで、感想文を置いたり、いろんな工夫をして応援してくださって。富山の方々にも『ウォーターボーイズ』という作品が愛されました。だから、富山の方々に、また、そんな奇跡を『宝島』でも起こしてもらえないかなと期待して今日は来ました!」と、改めて『ウォーターボーイズ』での「奇跡」について目を輝かせながら熱弁を奮う妻夫木の姿には、観客も感動の表情を浮かべて真剣に聞き入る様子を見せ、再び自然と拍手が巻き起こった。さらに、当時実施された『ウォーターボーイズ』の舞台挨拶に来た方がいらっしゃるかと妻夫木が聞くと、数名の観客の手が挙がり、「お互い歳取っちゃいましたね! よかったみんな元気で!」と笑いながら喜びを噛みしめていた。また、大友監督も、「『宝島』のようなスケールになると作るのが大変で。2回延期になりました。それでも、スタッフとキャストが待っていてくれて、ようやく完成にたどり着いた作品。その一番筆頭で待っていてくれた妻夫木君の思い入れのある映画館で、皆さんにお届けできるのは他とは違うような気持ちが押し寄せてきていてびっくりしています」と感慨深げに語った。

続けて妻夫木、大友監督の二人は、映画を見終えたばかりの観客からの質問に直接答えるコーナーを実施。まず、「本作で特に大変だったシーン、これから映画を見る方に絶対注目してほしいシーンは?」という質問には、妻夫木は悩みながらもラストシーンを挙げ、「とても僕自身の心に響いたし、皆さんの心にも響いたと思うんですよね。激動の沖縄を描いた作品ではあるけど、間違いなく僕たち全員の話だと思うんです。『生きなくては』と、感情が強く沸いてくるシーンになっていると思う」と語った。
大友監督も、挙げればきりがないと言いつつもコザ暴動のシーンを挙げ、「取材をする中で、沖縄の人たちの、ただの怒りではない、『俺たちもここで生きているんだ』というような心の咆哮のようなものを感じました。エキストラとして参加いただいた延べ 2,000人もの、ひとりひとりに丁寧に向き合いながら演出しました」と答えた。

次に、「この映画をどの世代の方に見てほしいか?」という質問には、妻夫木が「全ての世代の方に見ていただきたいけれど、特に若い方に見てほしいですね。僕自身もこの作品を通じて、知らなかった沖縄に、過去のことも今のことも全て含めて向き合いました。これから未来を生きる子供たちにも伝えていかなきゃいけないと思うんですよね」と熱い思いを語り、大友監督も「知らないことを知るというのはひとつのエンターテインメントだと思っています。どの世代に伝えたいというよりも、映画を通じてあの当時の沖縄を追体験して、沖縄が宝の島といわれる『宝』とはなんなのか、それぞれの方に持ち帰っていただきたいです」と回答した。

舞台挨拶も終盤に差し掛かるなか妻夫木は、観客一人一人の顔を確かめながら、「ファボーレ富山という地は僕にとって聖地です。映画というのは、見ていただいてようやく完成します。そしてその映画を育てていくのは観客の皆さんだと僕は思っています。一人でも多くの方に届けられるようお力をお貸しいただけると嬉しいです」と熱いメッセージを送る。続いて大友監督も、「このようなメッセージ性の強い作品はなかなか日本にはなかったと思うんです。でも、真っ正直に大切なメッセージを届けたいと思って作った映画です。
ただの映画では終わらせたくないという気持ちが強いです。映画以上のものを、何か皆さんに受け止めていただきたいと思います」と溢れる想いを伝え、本作が一人でも多くの方に届くよう願いを込めた。

最後には、妻夫木、大友監督、そして約350人の観客で声を合わせ、「たぎれ!!富山―――!!!」と会場全体を揺らすほどの盛大なフォトセッションを実施。24年前と現在を繋ぐ、「奇跡」の舞台挨拶は、妻夫木らの笑顔とともに締めくくられた。次回の全国キャラバンは、翌週7月4日、5日に大阪を訪れる予定となっている。

(C)真藤順丈/講談社 (C)2025「宝島」製作委員会

【編集部MEMO】
映画の原作となった小説『宝島』は、真藤順丈氏のペンによる。「リュウキュウの青」「悪霊の踊るシマ」「センカアギヤーの帰還」の三部構成となっており、沖縄戦直後から始まった1952年の米軍統治時代から、日本に復帰した1972年までの沖縄を舞台としている。2018年に第9回山田風太郎賞、2019年に第160回直木三十五賞、2019年に第5回沖縄書店大賞の小説部門賞を受賞している。
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