2023年12月に初演され、今年9月にも上演される歌舞伎『流白浪燦星』で主人公・流白浪燦星(ルパン三世)役を演じている歌舞伎俳優の片岡愛之助が、映画『LUPIN THE IIIRD THE MOVIE 不死身の血族』(6月27日公開)で、お宝を狙うルパンたちの前に立ちはだかる最強の敵・ムオムの声を演じた。子供の頃から『ルパン三世』が大好きだという愛之助にインタビューし、『ルパン三世』声優初挑戦の感想や作品に対する思いを聞いた。
○『ルパン三世』声優初挑戦に喜び「めちゃくちゃうれしかった」
本作は、アニメ『ルパン三世』の約30年ぶりとなる2D劇場版アニメーション完全新作。地図に載っていない謎の島に乗り込んだルパンたちが、銃も刀も通じない“不死身の血族”を相手に、過去と誇り、そして盗人としての矜持を賭けた知略の戦いに挑む。
“世界の墓場”のような謎の島でおそろしい計画を推し進めている得体の知れない不死身の男・ムオムを演じた愛之助は、本作のオファーに「めちゃくちゃうれしかったです。最高です」と感激。「『ルパン三世』なんて誰だって出たいでしょ! しかも私は歌舞伎でもやらせてもらっているので、本当にびっくりしましたし、何の役でも出たいと思いました」と振り返る。
子供の頃から『ルパン三世』をよく見ていたそうで、「昔、テレビでやっていて、僕らの世代はテレビをつけたら『ルパン三世』が流れているという中で育ってきたので、そんな作品に関われるなんて、本当にうれしいです」と喜ぶ。
『流白浪燦星』では主人公・流白浪燦星(ルパン三世)役を演じている愛之助。最初に歌舞伎で『ルパン三世』をやると聞いた時は「『ルパン三世』が偉大過ぎて、皆さんの世界観を壊さずに作る自信がなかった」と不安があったものの、「もしも歌舞伎界の中にルパンの一味がいたら」というテーマで描くのはどうかと提案され、「それならできるかもしれないと、一気に道が開けました」と踏み出すことができたという。
そして、「どこまで『ルパン三世』に寄せるのか」など悩みながら作り上げていき、「お客様がどういう風に受け取ってくれるのかわからなかったので、ドキドキでなかなかない緊張感でした」と初日を迎えるまでの心境を明かす。
その不安は幕が開けた瞬間に吹き飛んだそうで、「出ていって見得を切っただけで拍手喝采。何もしゃべってないのに拍手がすごくて。さらに『ルパン三世』と名乗っただけで、お客さんが湧いてくれて、『ルパン三世』ってすごいなと。
偉大さを改めて感じました」と振り返る。
○歌舞伎俳優として古典を後者へつなげていきながら新作にも挑戦
愛之助は、『ルパン三世』や『NARUTO -ナルト-』という人気コンテンツを原作とする新作歌舞伎に挑戦しているが、「それがいわゆる今の歌舞伎なんです」と語る。
「江戸時代、川で男女が心中した話を題材にしたものは、当時にしたら現代劇なんです。今僕らはカツラをかぶっていますが、当時はあれが地頭で、現代劇だったものが400年経って時代劇になり、古典と言われているだけなので、今やっている『ルパン三世』などが400年経ったら古典・名作になり、その時にはもっと新しい歌舞伎が生まれていると思います」
そして、「先輩から教わった古典を後者へつなげていきながら、『流白浪燦星』など新作にも挑戦し、より多くの人たちに歌舞伎を見てもらえたら」と願う愛之助。「『流白浪燦星』からのご縁で今回、映画の声優を務めさせていただきましたが、歌舞伎をご覧になってくださった方にも見ていただきたいです」と期待した。
本作で愛之助が演じたムオムは、不死身の強靭な肉体を持つ謎多き存在。愛之助は、うめき声のような“ムオム語”を披露しており、「難しかった」と吐露しつつ、「ただ『うーうー』と言うのか、ある程度言葉がわかるようにするのか、使い分けをしているので、そのあたりも楽しんでいただけたら」と語っていた。
■片岡愛之助
1972年3月4日生まれ、大阪府出身。1981年十三代目片岡仁左衛門の部屋子となり、南座『勧進帳』の太刀持で片岡千代丸を名のり初舞台。1992年六代目として片岡愛之助を襲名。2023年には“歌舞伎版「ルパン三世」”となる『流白浪燦星』でルパン三世役を演じ、今年9月に南座での再演にも出演する。歌舞伎のみならず、俳優として活動の場を広げ、映画『翔んで埼玉 ~琵琶湖より愛をこめて~』『はたらく細胞』やNHK大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』等に出演。
2024年文化庁第74回芸術選奨演劇部門文部科学大臣賞を受賞。6月27日公開の『LUPIN THE IIIRD THE MOVIE 不死身の血族』に声の出演。
原作:モンキー・パンチ (C)TMS
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