米労働省が2025年7月3日に発表した6月雇用統計の主な結果は、(1)非農業部門雇用者数14.7万人増、(2)失業率4.1%、(3)平均時給36.30ドル(前月比+0.2%、前年比+3.7%)という内容であった。
○雇用者数
6月の非農業部門雇用者数は前月比14.7万人増と市場予想の10.6万人増を上回った。
○失業率
6月の失業率は4.1%と市場予想の4.3%に反して前月の4.2%から低下した。フルタイムの職を希望しながらパート就業している人などを含めた広義の失業率である不完全雇用率(U-6失業率)も7.7%と前月の7.8%から低下した。労働人口に占める働く意欲を持つ人の割合である労働参加率は前月の62.4%から62.3%へ低下。2022年12月以来の低水準となった。
○平均時給
6月の平均時給(全従業員)は36.30ドルと前月の修正値36.22ドルから0.08ドル増加。伸び率は前月比+0.2%、前年比+3.7%といずれも市場予想(+0.3%、+3.8%)を下回った。前年比の伸び率は2024年7月以来、11カ月ぶりの低さだった。インフレ率を上回る賃金の増加が続いているものの、そのペースは減速しつつある。
○まとめ
米6月雇用統計は見た目ほど強くないとの声が多く出ていた。非農業部門雇用者数は予想を上回る増加幅となったが、けん引役は州政府部門であり、民間部門の雇用者数は市場予想(10.0万人増)に届かない7.4万人増であった。失業率は予想外に低下したが、労働参加率が予想以上に低下したためであり、不法移民の摘発強化など移民政策の変更が影響したと考えられる。
平均時給(時間当たり賃金)の伸びが目に見えて鈍化したことは、比較的賃金が低い業種で雇用が増加したことを物語っていよう。それでも、発表後にドルが買われ、株価も上昇したのは、前日に発表された米6月ADP雇用報告で民間部門の雇用者数が2年3カ月ぶりに減少したことで、景気後退懸念がくすぶっていたためだろう。すなわち、市場は米6月雇用統計について、見た目ほど強くはないものの、景気後退を予感させるほど弱くなかったと評価したようだ。
神田卓也 株式会社外為どっとコム総合研究所 取締役調査部長。1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信(デイリーレポート『外為トゥデイ』など)を主業務とする傍ら、相場動向などについて、WEB・新聞・雑誌・テレビ等にコメントを発信。