芸人としても1児の父としても日々ピンチに直面

お笑いコンビ・霜降り明星のせいやが、マーベル・スタジオの最新作『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』(7月25日公開)の日本語吹替版に“一言”声優として出演を果たした。演じたのは通行人Aという一言のみの役ながら、作中では印象的なせりふを担当している。しかし、マーベル好きとして、出演には葛藤があったという。
インタビューでは、あふれんばかりのマーベル愛をはじめ、芸人、そして1児の父としての現在の心境を聞いた。

――まず、一言声優のオファーを聞いたときのお気持ちからお聞かせいただけますか。

大前提として、マーベル好きの芸人やタレントが声優としてお邪魔することがあまり好きじゃないんですよ。「いらんねん!」と思ってしまうタイプなので。今回は「一言やったらええか」と思いつつも、「お邪魔してすみません」っていう気持ちで、恐れ多い中やらせていただきました。

――収録はいかがでしたか?

通行人Aと聞いていたんですけど「オシオキの時間だぜ!」という、通行人史上最も印象に残りそうな、いいせりふをいただきました。でも、もちろん「声優やったぜ!」とは思っていませんし、素人が吹替の声優をやること自体よくないと思っているので、違和感がないように全力で頑張りました。

――愛が伝わってきます。いつ頃からマーベルをお好きになられたんですか?

2008年の『アイアンマン』からです。高校生のときでしたね。それからアニメを見て、原作があることを知って漫画も見ました。やっぱり『アベンジャーズ』が始まったときは「これ知ってる!」ってなりましたね。
1番おもろい『シビルウォー/キャプテン・アメリカ』でスパイダーマンがMCUに帰ってくるところは、やっぱりしびれましたね。

――同作は新しい『アベンジャーズ:ドゥームズデイ(原題)』につながることが期待されています。どういった期待を抱いていますか?

“ファンタスティック4”のキャストがアベンジャーズに参加することが決まっているので、『ドゥームズデイ』に向けてフェーズが盛り上がっていく段階だなっていう感じです。マーベル好きであれば過去作の『ファンタスティック4』から見ていると思うんですけど、まだアイアンマンやスパイダーマンと肩を並べて語られる感じではないんですよ。だからこそ、僕が『アイアンマン』からマーベルにハマったように、MCUの“ファンタスティック4”からまた若い人たちがマーベルを見るようになってくれるのが理想やなと思います。

――同作の物語にちなみまして、お笑い芸人として得たい特殊能力があれば教えてください。

やっぱりデータですかね。自分がゲストのときは比較的自由に立ち回れるんですけど、最近はMCの仕事が増えてきているんです。1人でMCをするときは、自分よりゲストさんを活かさないといけない。何か振るにしても、その人がどういう人なのか知らないといけないんですが、全員の情報をインプットできないじゃないですか。そこで能力。全員のデータと名前、何をしてきた人なのかってところまで把握できたらすごくいい能力やなと思います。
「言ったらウケるけど、間違えそうだから言えん」「この人の曲名を文字ってボケたいけど、曲名なんやったっけ」ってこともありますから。

――日々、大変な場面を切り抜けてきているんですね。最近も、そういったピンチはありましたか?

芸人には毎日ピンチが訪れますよ。そんな職業は珍しいですが、そのピンチをどう仲間にするか。最近の大ピンチは『有吉クイズ』に出たときのことで、いつもは超お笑い番組なんですけど、そのときは割とガチめのクイズコーナーだったんです。ボケることもできず、クイズも答えられへんっていう1番やばい状態で、最終的にはおバカタレントの方に舵を切ったんですけど、収録終わりに「やばかったな……!」と思ったのは久しぶりでした。

――ハラハラ感が伝わってきます。現在1児の父ということもあり、私生活でもピンチが多いのではないでしょうか。

もう、ピンチだらけです。ふと目を離したらペットボトルの蓋を食べていたり、机に手を伸ばしていたりして、30分おきにピンチです。今は走ることが1番面白いのか「走る」というゲームを楽しんでいます(笑)。

子どもみんなができる国民的なギャグがほしい「夢です」

――お仕事に子育てと毎日大変だと思いますが、お子さんと奥さんはどういった存在ですか?

間違いなく全ての原動力やなと思います。
自分のために生きていたこれまでとは、馬力がちゃう感じ。子どもと妻のために頑張る原動力は、何事にも代えがたいですね。最近は「人間って、自分より人のことを考えた方が力を発揮すんのかな」と、少し哲学的なことを考えたりもします。

――「全ての原動力」だと。

そうですね。例えば、自分が風邪でしんどくても夜中に病院に行かないじゃないですか。でも、子どもがちょっとでも熱を出したら、夜中の何時だろうと病院に行けますもんね。この無条件さ。全てを度外視してやれることが増えました。

――お笑い芸人として、息子さんに残したいものはありますか?

息子が思春期になるまでに、子どもみんなができるギャグがほしいですね。志村(けん)さんみたいに、国民的なギャグはまだ持ってませんから。夢です。


――この思いは、せいやさんのお笑いの原点とも関係があるのでしょうか。

確かに、原点は子どものときにゲラゲラ笑っていたドリフ(ザ・ドリフターズ)や西田敏行さんの『釣りバカ日誌』なので、ちょっと古いです。もちろん同年代にも好きな人はいて、みんなドリフの「ババンババンバンバン」は知っていましたが、もともと歌っていたデューク・エイセスまでは聞かないと思うんです。僕はオリジナルまで遡って聞くのが好きでしたね。

――お笑い芸人として、これから挑戦してみたいことがあれば、最後に教えてください。

「せいやと言えばこの曲」という代表曲がほしいです。西田敏行さんは『もしもピアノが弾けたなら』、たけしさんは『浅草キッド』。お2人のように、日本人全員が歌える1曲がほしいですね。まだまだこれからですが、それがあれば西田敏行さんに近づけると思うので。

■霜降り明星・せいや
1992年9月13日生まれ、大阪府出身。2013年に粗品とお笑いコンビ・霜降り明星を結成し、『M-1グランプリ2018』で史上最年少での優勝を果たす。以降、『新しいカギ』『有吉クイズ』など多数のバラエティ番組で活躍。
2023年9月22日深夜放送の『霜降り明星のオールナイトニッポン』で結婚と妻の妊娠を報告。同年12月8日深夜放送の同ラジオ番組で第1子の誕生を報告した。
編集部おすすめ