バイクに乗らない人からすれば“夏の海とオートバイ”は絵になるシーンですが、実際には真夏のライディングは苦行以外の何物でもありません。近年は温暖化のせいか、さらに過酷になっていると思いませんか?
とはいえ、せっかくの夏休みは大好きなオートバイを満喫したいと思うライダーも多いはず。
サンバイザー装備のオープンジェットヘルメット
ヤマハ発動機が展開するバイク用品「ワイズギア」のオープンジェットヘルメットが「YJ-22Ⅱ ZENITH」。丸みとエッジを融合させた帽体や、円盤形状のシールド開閉機構が特徴的なデザインです。近年のツーリング用ヘルメットらしく、シールドはUVカットとハードコーティングが施され、帽体内部に開閉式のサンバイザーも装備。もちろん内装も取り外して洗濯可能です。
○<実走インプレッション>
帽体はエアロ系やクラシック系とも違う「丸み」と「エッジ」が融合した独特なフォルムで、車種や年齢、性別を問わないジェンダーレスなデザイン。ブラウン系の内装はファンデーションが付着しても目立ちにくいので女性にもおすすめですが、男性でも違和感はありません。パールホワイトとセミフラットブラックのベースモデルのほか、今回試用したグラフィックモデルがありますが、主張しすぎないネオレトロ感の演出はさすがヤマハといったところです。
オープンジェットの特長は軽量で視界が広いことが挙げられますが、サッとシールドを上げればたくさんの走行風を顔に浴びることができます。頬に当たるチークパッドも小さいので、ここが汗ばんで触れる不快感もなく、夏の走行ではフルフェイスよりも格段に快適なのは間違いありません。
帽体内に装備されたサンバイザーの開閉は左側面のレバーで行います。レバーの突起が若干小さいものの、慣れれば最小の動作で行うことができました。
最近の筆者はシステムヘルメットを使用し、シーンに応じてチンガードを上げる使い方をしていますが、やはりオープンジェットはとても軽く、常に広い視界が確保できるのでとても快適でした。もちろん衝突時の安全性はフルフェイスに分がありますが、ヘルメット内が蒸れて不快な状態では集中力も途切れてしまいます。価格もそれほど高くないので、フルフェイス派の人も夏のショートツーリングや街乗りなどで使ってみてはいかがでしょうか。ちなみに筆者はアライやSHOEIではMサイズですが、こちらはLサイズがジャストフィットでした。
涼しさと安全性を両立したメッシュジャケット
同じくワイズギアのメッシュジャケット「RY1002」は肩、肘、背中にソフトプロテクターを備え、素材には軽量で耐摩耗性の高い「CORDURA(コーデュラ)」とケブラー®製ニットを採用したオートバイ用メッシュジャケットです。転倒時に傷つきやすい肩や肘部分は表と裏生地の間に強靭なケブラー®製ニットを挟み、汗による不快な臭いを防止するため、裏地には抗菌防臭加工も施されています。
○<実走インプレッション>
いくら暑くてもバイクに乗る場合は長袖のジャケットが必要です。その理由は転倒時や走行中の飛び石などから身体を守るだけでなく、紫外線や熱による日焼けや水分の蒸発を防ぐという目的があるからです。
とはいえ、3シーズン用ジャケットでは暑くてストレスがたまるだけでなく、身体の熱が抜けずに熱中症になったり、汗をかきすぎて脱水症状を起こすこともあります。こういった場合に最適なのがメッシュジャケット。一度使ったことがある人なら、夏のツーリングには絶対欠かせないアイテムになっているはずです。
ワイズギアのメッシュジャケットも全面メッシュ生地を使っているため、走りだせばすぐに涼しさを体感できます。太陽光にかざせば透けるほどの生地は安全性が気になるところですが、転倒時に擦りやすい肩と肘には、表地と裏地の間にレーシングスーツや防弾チョッキにも使われるケブラー®製ニットが織り込まれているので安心できます。この2か所と背中には衝撃を吸収するソフトプロテクターも装備されていますが、これもメッシュ状なので通気性はとても良好です。
また、胸部にも別売のチェストプロテクターを取りつけるボタンがついていますが、肩や肘を含めたプロテクター類はアールエスタイチ製と互換性があり、より強度の高いものにグレードアップすることが可能です。
そのほか、使いやすいポケット類や裾や袖のアジャスター、リフレクターといったライディングジャケットに必要の装備は一通りついていますが、クリーンなデザインながらも、立体モールドのロゴや音叉マーク、モールドタブのファスナー引手など、細かなディテールにこだわっているのもヤマハらしい製品です。
改良されさらに使いやすくなった水冷ベスト
インナーウエアに専用のリキッド(液)を送水し、走行風による気化熱で体温の上昇を防ぐというアイデア製品がアールエスタイチの「リキッドウインド」。最新型はチューブが装備されたメッシュのベスト形状に進化して着脱がとても簡単になりました。また、このチューブにリキッドを送水するボトルも電動化されています。
○<実走インプレッション>
従来のリキッドウィンドシステムは使用時に専用のインナーウエアに送水チューブを装着する手間がありましたが、送水チューブを装備したベスト型に進化したことで脱ぎ着は格段に簡単になりました。ボトルユニットには電動ポンプやバッテリー、リキッドも入っているのでそれなりの重さがありますが、走行中はほとんど気にならず、休憩時には簡単にベルトごと外して身軽になれます。また、メッシュ状のベストはインナーとジャケットの間に風が通りやすい構造です。
電動式ボトルの操作はボタンで行います。
使用するリキッドは、ライディングウエアを知り尽くしたアールエスタイチと「ギャツビー」でおなじみのマンダムが共同開発したオートバイ専用品です。清涼成分(メントール)を配合した独自技術により、長時間持続する冷感と消臭性、ベタつきのない使用感は男性化粧品メーカーならでは。雑菌を防ぐ効果もあるので、夏ツーリングの不快な臭いからも解放されます。
オートバイの場合、ライダーの身体を冷やす方法は走行風しかありませんでしたが、やはり専用リキッドを使った効果は抜群で、オートモードにしておけば常に胸や背中が涼しく、一日を通して汗や蒸れなどの不快感から解放されました。ボトルを腰に装着するためスポーツライディングには向いていませんが、ハイウェイの連続走行や渋滞路などではとても有効です。こういった“秘密兵器”的なガジェットが好きな方にもおすすめです。
汗に反応して温度を下げるインナーウェア
リベルタのフリーズテック「氷撃」は冷感持続が特徴のクーリングウエアで、屋外でのスポーツや作業など、暑さ対策や予防に幅広く使われています。今回使用したのは、接触冷感の生地裏にエリスリトール、キシリトールを含有した冷感プリントを施し、水分(汗)と反応して生地温度を下げるという、気化熱・接触・プリントによる「トリプル冷感テクノロジー」を採用されたアンダーウエアです。
○<実走インプレッション>
使用する氷撃インナーは上が長袖、下がタイツタイプで、サイズはいつも着ているインナーと同じMサイズを選んでみました。一見すると小さく感じましたが、生地の伸縮性が高く、身体にフィットしても締め上げられるような窮屈さはありませんでした。
着た瞬間は接触冷感ウエア独特のヒンヤリとした肌触りですが、劇的に冷たいわけではありません。氷撃は汗で濡れた生地に風が当たる方が冷感効果は高まるので、その上に着るジャケットとパンツはメッシュタイプのものを選んでみました。
生地が身体に密着するのは暑苦しいイメージがありましたが、走行して汗が出はじめると、普通のTシャツのように肌をつたってベタつく感じがなく、生地全体に拡散していく感覚です。これが走行風に当たると確かに涼しくなり、日陰に入ると冷感効果はさらに高まりました。また、夏は汗で蒸れたライディングウエアやパンツが脱ぎにくくなりますが、これもスルリと脱げるようになります。
フリーズテックシリーズにはメントール成分を含んだミストスプレー「氷爽」もラインアップされており、これを併用すればさらに冷却効果を高めることができるそうです。揮発しにくいアルコールフリーで冷感も長持ちし、抗菌剤も配合されています。氷撃以外の衣料にも使えるので、こういったものから試してみてはいかがですか?
夏用アイテムを活用しながら、十分な休憩と水分補給も忘れずに!
今回は4つの夏用アイテムを使用してみましたが、いかがでしたか?
近年はバイク用以外にもさまざまな暑さ対策用品が登場しており、これらを活用すればより快適な夏のツーリングに役立つはずです。しかし、いくらアイテムを利用して涼しくなっても、ライダーの身体は走行時の風で水分が抜けやすくなっています。決して無理はせず、こまめな休憩と十分な水分補給を心がけて、安全第一で真夏のバイクライフを楽しんでくださいね。
津原リョウ 二輪・四輪、IT、家電などの商品企画や広告・デザイン全般に従事するクリエイター。エンジンOHからON/OFFサーキット走行、長距離キャンプツーリングまでバイク遊びは一通り経験し、1950年代のBMWから最新スポーツまで数多く試乗。印象的だったバイクは「MVアグスタ F4」と「Kawasaki KX500」。 この著者の記事一覧はこちら