小学館が運営する「みんなの教育技術」は7月29日、教員の勤務実態についての調査結果を発表した。調査は2025年5月20日~6月30日、教員、教育委員会などの関係者含む5412人を対象にインターネットで行われた。
○出勤してから退勤するまでの平均時間
勤務時間についての結果は上のグラフの通り、8割を超える教員が10時間以上の勤務、4人に1人が12時間を超えて勤務している状況だった。さらに、数値で勤務時間を調査したところ、平均値は11.17時間、中央値は11時間になった。法定の勤務時間を上回る勤務が常態化している可能性がうかがえる。
自由記述欄からは以下のような声が寄せられた。
・「寝る、入浴以外の時間をすべて仕事しているのに、授業準備等が間に合わないため毎日すべてがつらい。部活動の顧問になったがずっと見ることができる時間的余裕もない、など、すべてが中途半端になる。土日=休日という概念が存在しないくらい仕事が多い」(20代男性)
・「仕事量が多すぎてストレスと疲労がたまり、育児が思うようにできない。仕事へ対する意欲も湧いてこず、子育て中だとさらにつらさを感じる」(30代女性)
・「多忙感を感じるとき、行事を精選したいと訴えても管理職からOKがでないとき等、なりたい職業に就いたはずなのに『辞めたい』と思うくらい仕事がさばけない」(40代女性)
・「年中、忙しく、多様な児童や保護者、世代間ギャップを感じる若手職員とのコミュニケーションなどストレスが溜まる一方で、65歳まで延長された定年退職まで続けられる自信がない」(50代男性)
○休憩時間は約3人に2人が「ほとんど取れない」
1日に取得できている休憩時間について、「ほとんどとれない」と回答した人は全体の65.6%(3,522人)にのぼった。これに「15分未満」を加えると、この設問に答えた回答者の85%近くの人がまともな休憩を取れていない実態がわかる。労働基準法が定める休憩時間=45分以上を確保できているのは、全体の1.5%のみだった。
休憩がほとんどとれないと答えた回答者に理由を尋ねたところ、以下の回答が寄せられた。
・「終業時刻直前に休憩時間が設定されている上に、勤務時間内に到底終わることができない仕事量を課せられているため、休憩時間を取ってしまうと帰りが遅くなってしまうからです。
子どもがいる時間は子どもから目が離せないので休憩ができない上に、隙間時間もさまざまな理由から休憩どころではないという実態、教員がコントロールできる時間の少なさ、休憩なしが常態化している、などといった理由があった。
休憩がとれないことにより、「トイレに行けない」という声が非常に多く見られ、膀胱炎を繰り返しているという教員もいた。精神的にも身体的にも教員の健康に影響を及ぼす深刻な事態といえる。
○半数以上が週3日以上の「持ち帰り残業」
半数以上が週3日以上の持ち帰り残業を行っていることがわかった。学校では集中できないので持ち帰っておこなわざるを得ない、家庭の事情で早く帰らなくてはならないが、仕事が終わらないのでやらざるを得ない、という声が多くあった。
「働き方改革と言いつつ、結局は個人にそれは任されているのが現実です。自分の働き方を見直し、無駄を省くことばかりが求められます。
○約9割が休日にも勤務
回答者の約9割は休日にも業務を行っていた。持ち帰り残業も休日勤務も「ほとんどない」と答えたのは401人にとどまり、回答者の少なくとも9割以上が1か月のうちに持ち帰り残業か休日勤務、あるいはその両方をしていると考えられる。
○時間外勤務の最大の要因は
ここまで見てきた回答からもわかるように、回答者の8割以上が選択した最大の要因は、「1日の業務量がそもそも8時間以内にできる設定ではないため」。さらに、有効回答数5233人のうち、89.4%が複数の要因を選択しており、解決の難しさがうかがえる。
○教育の本筋に集中できない状況が「つらい」
「勤務時間の長さ以外で、『つらい』と感じるのはどんな時ですか?」を問う設問に対し、最も多く挙げられた回答は「保護者から理不尽なクレームを受けている時」で、これは約4割を占めた。このほか「目的のはっきりしない会議に参加している時」や「教材研究の時間が取れず十分な授業準備ができない時」など、教育の本筋に集中できない状況も多くの教員にとってストレス要因になっているようだ。
○「子どもの成長」が教員をつなぎとめている
一方「『これがあるから教員はやめられない!』と、思うような強い喜びを感じるのはどんな時ですか?」という問いでは、「子どもの成長」という言葉が溢れていた。授業の手ごたえや楽しさといった声と合わせると、回答者の約7割にのぼる。子どもの成長、面白い授業、という、教員本来の仕事が教員の望みであることが伝わってくる。
○外部人材による学校支援制度に満足しているか
現在、外部人材による学校支援がさまざまな自治体でおこなわれている。その満足度について選択式で尋ねたところ、導入されている回答者の中で、「とても満足」「ある程度満足」を合わせても約38%にとどまった。不満の理由として最も多かったのは「人手が足りない」という指摘で、次いで多かったのは、質のばらつきだった。
○もしサポーターを自分の裁量で配置できるとしたら
最後に、「もし、自分の裁量でサポーターを配置できるとしたら、どんな人にどんなことをお願いしたいですか?」と質問した。
支援が必要な児童への個別対応、授業の補助など、「授業に集中できる環境を整える」ことを目的とした配置に関する要望が、約半数を占めた。また、学級に1人、学年に1人などの配置を求める声が多く見られた。さらに、丸つけ、会計など、子どもと接する以外の仕事について補助してほしいという要望も多く見られた。そのほか、業務削減のコンサルティングや、保護者対応専門スタッフなどを求める声あった。