コスモエネルギーホールディングスのグループ会社であるコスモエコパワーが風力発電施設「新むつ小川原ウィンドファーム」(青森県・六ヶ所村)の商業運転を開始した。本施設にはどんな特徴があるのか。
現地で開催された施設見学会に参加し、確認してきた。

全国の風力発電設備を24時間体制で監視

青森県の六ヶ所村は、年間を通して強い風が吹く全国でも有数の風力発電の適地だ。「むつ小川原ウィンドファーム」は2001年1月から2023年3月までの20年間にわたって商業運転を行ってきた。その後は建て替え工事のため一旦休止となっていたが、2025年7月1日から、名称を「新むつ小川原ウィンドファーム」に改めて商業運転を再開した。

管理事務所内の遠隔監視センターには、引き続き全国22カ所の風力発電設備の状況が把握できる監視システムを配備。24時間365日の監視体制が安全な風力発電所の稼働に向けた大きな役割を担っていることから、コスモエコパワーにとっても重要な施設という位置付けであることは間違いない。

風力発電機8基で約1万6,800世帯の年間消費電力を発電

今回のリプレイスでは、既存の風力発電設備を撤去し、新たな風力発電設備に建て替えた。

リプレイス前の「むつ小川原ウィンドファーム」が単機出力1,500kWの風力発電機21基を備えていたのに対して、リプレイス後の「新むつ小川原ウィンドファーム」の風力発電機はわずか8基だ。

しかしながら、大型化&効率化によって1基あたりの定格出力が最大4,300kWまで向上しており、総出力は変わらず3万3,000kWとなっている。

ちなみに、総出力3万3,000kWは年間発電量に換算すると7,000万~8,000万kWh。これは約1万6,800世帯分の年間電力消費量に相当するという。

新型風力発電機で特徴的なのが、ナセル内部の増速機が取り外された仕様であるところだ。


従来機は風でブレード(翼)が回転するとローター軸が一緒に回転。この回転力を増速機(ギア)で1分間に約1,500回まで増幅し、高速回転で主軸を回すことで発電機も回転させて電気を作っていた。

一方、新型機は増速機を用いずに、ブレード(翼)の回転を直接発電機へ伝達する「ダイレクトドライブ方式」を採用している。これにより、機械的損失の少ない効率的な発電が可能になるという。その他にも、増速機がないことから故障リスクやメンテナンスコストの低減、軽量化などのメリットが得られるそうだ。

発電した電力をAmazonにも供給

「新むつ小川原ウィンドファーム」が再生可能エネルギーの普及を目的とする「FIP」(Feed-in Premium)制度に基づいて商業運転を行っていることにも注目だ。

FIPは市場価格にプレミアムが上乗せされる代わりに、再エネ事業者が自ら需要調整や販売も担う制度のこと。始まったのは2022年4月だ。

コスモエコパワー 電力事業戦略部長の平塚陵介さんは、「FIT(Feed-in Tariff/固定価格買取制度)からFIPへと移行する中、再エネ事業者にはFIPに対応したビジネスモデルへの変革が求められる」と解説する。

今回、コスモエコパワーはAmazonとの間で、「新むつ小川原ウィンドファーム」で発電する電力を20年にわたってコーポレートPPA方式で供給する契約を締結。運転開始と同時に取り引きがスタートしている。

コーポレートPPAとは、再生可能エネルギー由来の電力や環境価値を長期にわたって購入する契約だ。
環境意識が世界的に高まる中、企業が長期にわたって安定した電力および環境価値を調達する手段として、近年、日本でも広がりを見せている。

平塚さんは「現状ではぼんやりとした将来的な目標」とした上で、「FIPに積極的に取り組むことで、再エネ事業者、企業、地元自治体や住民などの関係各所がメリットを感じられる関係性の構築を目指したい」と話していた。

安藤康之 あんどうやすゆき フリーライター/フォトグラファー。編集プロダクション、出版社勤務を経て2018年よりフリーでの活動を開始。クルマやバイク、競馬やグルメなどジャンルを問わず活動中。 この著者の記事一覧はこちら
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