藤井聡太王位に永瀬拓矢九段が挑戦する伊藤園お~いお茶杯第66期王位戦(主催:新聞三社連合、日本将棋連盟)七番勝負は、第3局が7月29日(火)・30日(水)に北海道千歳市「ポルトムインターナショナル北海道」で行われました。対局の結果、矢倉対雁木のねじり合いから抜け出した藤井王位が88手で快勝。
開幕3連勝として防衛目前に迫りました。
○研究勝負外した王位

開幕2連敗で迎えた第3局は挑戦者にとって正念場。そんななか藤井王位が2手目に角道を開けたことで、永瀬九段の得意とする角換わりの研究勝負は早くも回避されました。藤井王位の2手目に角道を開ける作戦は3月の王将戦、5月の名人戦に続いてキャリア通算3度目で雁木を目指す方針。対する永瀬九段が流行の早繰り銀を見送ったため盤上は矢倉対雁木の持久戦調の力勝負へ。

ここ最近の両者の対戦とは対照的に、スローペースな駒組み合戦が続きます。先に工夫を凝らしたのは永瀬九段で、左銀の屈伸運動で立て直しを図った一手が控室の面々を驚かせます。一瞬カベ形となり敵の仕掛けを誘発するとはいえ、局面のバランスを保つには「銀引き以外はわからなくて」とのことで、この手を境に藤井王位が後手番ながら主導権を握ることに成功しました。

○筋悪の銀使いが勝負分ける

永瀬九段の記した封じ手が開封されて2日目が開始。ともに手筋を駆使して敵陣攻略を目指します。昼食休憩明け、リードを奪ったのは藤井王位のほうでした。攻めの主軸となる銀を先手玉とは逆側へ向かわせたのが好手。
攻め駒は敵玉のほうに向かわせるのがセオリーですが、本局では働きのよい先手の角のラインを逸らすのが急所でした。

首尾よく敵玉そばにと金を作った藤井王位に好手が続きます。飛車を捕獲するためベタっと銀を打ち込んだのが決め手となりました。へき地に銀を投入するだけに筋悪ですが、カベ形に悩む先手玉を寄せるには飛車を手にするのが一番早いというのが藤井王位の柔軟性を示した寄せの構想です。終局時刻は18時6分、最後は永瀬九段が形勢差を認め投了。

一局を振り返ると、先鋭化する角換わり研究勝負を後手番で回避した藤井王位がねじり合いで力を発揮、そっぽに銀を使うという好手を2度使った快勝譜となりました。このままストレート決着となるか、永瀬九段が踏みとどまるか。藤井王位先手で迎える注目の第4局は8月19日(火)・20日(水)に福岡県宗像市の「宗像ユリックス」で行われます。

水留啓(将棋情報局)
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