第46回将棋日本シリーズJTプロ公式戦は1回戦が大詰め。8月2日(土)には佐藤天彦九段―菅井竜也八段の一戦が福岡県福岡市の「福岡国際センター」で行われました。
○復調のきっかけはどちらに
ともに今年度成績は負け越しと不振にあえぐ中での対決。とくに佐藤九段は今期6戦勝ちなしとファンの不安も募ります。地元福岡県での対局となったこの日、後手となった佐藤九段は菅井八段の角交換三間飛車に対して用意の積極策を打ち出しました。角交換から馬作りを狙ったのは相手の研究に飛び込むことを恐れない一手で、盤上は早くも大駒の入り乱れる大乱戦に。
飛車馬交換が行われて戦いは一段落。共に大駒を自陣に引き上げた中盤戦、菅井八段は竜の機動性を、佐藤九段は馬の守備力を主張して互角のねじり合いが続きます。解説の深浦康市九段が「いつ終わるんでしょうか」と残すほどの長い中盤戦ののち、形勢の針が揺れたのは両者秒読みに入った終盤の入り口のことでした。右辺の端攻めから局面が動きます。
○「竜VS馬」は馬に軍配
手筋を駆使して菅井玉を危険地帯におびき寄せた佐藤九段は直後に決め手を用意していました。タタキの歩で敵銀をつり出しておいてからサッと金をタダのところに差し出したのが気持ちの良い開き王手。
終局時刻は17時29分(対局開始15時57分)、最後は形勢の開きを認めた菅井八段が投了。一局を振り返ると「竜対馬」の構図となった乱戦で、自陣から敵陣を射抜く角と馬のにらみを生かして端攻めからリードを奪った佐藤九段の快勝譜に。地元での凱旋対局でうれしい今期初勝利を挙げた佐藤九段は2回戦(熊本大会)で伊藤匠叡王と顔を合わせます。
水留啓(将棋情報局)