毎月の支出を見直そうと思っても「何から手をつければいいかわからない」「我慢の節約は続かない」と感じている方も多いのではないでしょうか。そこで累計100万人以上にお金の診断を行ってきた、国内最大級の家計診断・相談サービス「オカネコ」所属の1級FP(ファイナンシャル・プランナー)/CFP 松井大輔さんが家計を分析。
難しい知識なしで、あなたの生活にフィットした"ムリなく見直せる支出のヒント"をお届けします。連載3回目となる今回は神奈川県で二人暮らしをしている、30歳男性、ご職業は会社員(営業職)のIさんと27歳女性、ご職業は会社員(サービス業)のMさんの家計簿を見ていきます。
○神奈川県在住の30歳と27歳の会社員カップル、支出の内訳は?

プロフィール
世帯構成: 二人暮らし
お名前: Iさん-Mさん
年齢: 30歳-27歳
性別: 男性-女性
職業: 会社員(営業職)-会社員(サービス業)
月の手取り収入: 42万円
総貯蓄額: 約100万円(二人分合算)

Iさん-Mさんの家計簿の内訳はこちらです。

○FPがやさしく分析! 生活にフィットした改善ポイントとは?

FPの目線から見ると、家計の現状把握と先取り貯蓄という家計管理の基本ができており大変素晴らしいですが、通信費や保険料といった固定費と、内容が不透明な日用品雑費や交際費を見直すことで、さらに家計を改善できる可能性を秘めている状態です。

○ポジティブポイントは?

「家計管理に苦戦されている」とのことですが、まず、お二人の収入と支出を数値で把握し、家計簿をつけていらっしゃること自体が非常に素晴らしいです。家計改善のスタートラインは「現状把握」にあります。お二人はすでにそれができているため、具体的にどこを改善すべきかが見えやすくなっています。

二人暮らしで月の食費が38,000円というのは、かなり抑えられている印象です。外食に頼りすぎず、自炊を中心に上手にやりくりしていることがうかがえます。

お二人で毎月決まった金額を確実に貯蓄できているのは、「余ったら貯める」のではなく、「先に貯蓄に回す」という、理想的な貯蓄習慣が身についており、非常に素晴らしいです。
○改善ポイントは?

通信費と保険料がそれぞれお二人で30,000円/月というのは、見直しの余地が大きい項目と言えます。具体的な見直し方法については後述しますが、まず最初に改善に取り組みたいポイントです。


内容が不透明な「日用品雑費」と「交際費/その他」 この2つの費目で合計90,000円となっており、家計のブラックボックスになりがちです。「日用品」と「雑費」を分けたり、交際費の内訳(飲み会、趣味、デート代など)を1ヶ月だけでも細かく記録してみましょう。「なんとなく」使っている支出が見える化され、無駄を意識しやすくなります。
○リアルなお悩み: 削れる支出、目標貯蓄額、二人でのおすすめ家計管理方法

続いて、Iさん・MさんからFPにいただいた質問に回答していきます。

Q. 今の支出内訳で、削るべき優先順位があるとすればどこですか?

まずは固定費の見直しから始めましょう。固定費は一度見直すと、毎月意識しなくても節約効果が自動的に続くため、最初に手をつけたいポイントです。

お二人の場合は、固定費の中でも、前述のとおり、通信費と保険料が見直しの余地が大きい項目です。通信費については、大手キャリアのプランを利用している場合は、格安SIMやサブブランドなどに乗り換えを検討することで、一人当たり毎月数千円の節約が期待できます。

保険料については、内容を十分に理解しないまま保険に加入している場合は、現在のライフステージに合った保障内容になっているかを見直すことが大切です。お二人に扶養家族がいない現時点では、高額な死亡保障は不要かもしれません。保障内容を再確認し、本当に必要な保障に絞ることで、保険料を最適化できる可能性があります。

固定費を見直したあとは、変動費の「日用品雑費」と「交際費/その他」に手をつけていきましょう。
まずは1か月間支出を細かく記録し、無意識のうちに消費している箇所があれば、使う目的を意識しながらお金を使うようにしていきましょう。

Q. 目標貯蓄額は特に二人で決めていません。決める場合、どのような計算をして設定すればよいでしょうか?

目標がないまま貯蓄を続けていくのは、ゴールのないマラソンを走るようなもので、モチベーションを維持するのが難しくなってきます。もし、お二人が将来を一緒に過ごしていくことを考えているのであれば、以下のステップに沿って目標貯蓄額を設定してみましょう。

○Step 1 二人の将来のライフプランを話し合う

まずは、お二人が思い描く将来のライフプランについて、自由に話し合ってみましょう。例えば、結婚、マイホームの購入、子供の有無の希望や教育方針、どのような老後を過ごしたいかなど、いつ頃どんなライフイベントが起こりそうかをリストアップしてみてださい。
○Step 2 ライフイベントにかかる費用を調べる

次に、Step 1で挙げたライフイベントに対して、それぞれにかかるおおよその費用を調べて、具体的な目標金額を設定します。
たとえば、・3年後に結婚資金として300万円、・7年後にマイホームの頭金として500万円、といった具合です。
○Step 3 「いつまでに」「月々いくら」必要かを逆算する

目標金額と目標時期が決まれば、現在の貯蓄額を踏まえたうえで、逆算して、必要な月々の貯蓄額を計算します。

計算式は、

(目標金額 - 現在の貯蓄額) ÷ 目標までの月数 = 毎月の貯蓄目標額

となります。

たとえば、
・目標金額: 結婚資金300万円
・現在の貯蓄額: 100万円
・目標時期: 3年後
となった場合、この場合の計算は、
(300万円 -100万円)÷36ケ月=約5.6万円/月
となります。

また、すべてを貯金で準備するのではなく、老後資金のように時間的な余裕があるライフイベントに関しては、資産運用も活用しながら計画的に準備していくことも検討しましょう。


Q. 家計簿の項目分けは今のままでよいですか?もっと適切な分類方法はありますか?

まず前提として、現在の項目分けでも、お金の出入りを把握するという第一の目的は十分に達成できており、素晴らしいです。家計簿を続けられていること自体が、何よりも大切です。そのうえで、「貯蓄を増やすために、どこをどう削るか」をより考えやすくするために、支出をその性質ごとに「固定費」「変動費」「自己投資・特別費」の3つに分類して管理する方法をおすすめします。これは、支出の種類によって見直し方法やコントロールの仕方が異なるためです。

固定費は、家賃、通信費、保険料、サブスクリプションなど、意識しなくても毎月一定額が支出される項目です。前述のとおり、一度見直せば節約効果が継続しやすく、頻繁に管理する必要はありません。半年に一度や年に一度など、定期的なタイミングを決めて見直すと良いでしょう。

変動費は、日々の行動によって金額が変わる支出で、食費、日用品費、交通費などが該当します。こちらは固定費とは違って、日々のやりくりによってコントロールしていく項目です。たとえば、ポイントデーに日用品をまとめ買いをしたり、外食を控えて自炊を増やしたりすることで調整が可能です。

自己投資・特別費は、実際には変動費に含まれますが、生活していく上で必須ではないものの、生活の満足度を高めるための支出として、別枠で管理することをおすすめします。交際費、習い事、趣味、書籍、美容、旅行にかかる費用などがこれにあたります。
この自己投資・特別費は、あらかじめ予算を決めておくことで管理していきます。例えば、月に2万円までと決めたら、「今月は交際費に1万円、趣味に1万円」などとメリハリをつけて使うことで、満足度を保ちながら支出を上手にコントロールできます。

まずは一度、この3つの分類で家計簿をつけ直してみてください。お二人の支出の傾向や、どこに改善の余地があるかが、よりクリアに見えてくるはずです。

Q. 二人暮らしにおすすめの家計管理方法を教えてください

二人暮らしの家計管理でおすすめなのは、「共通口座」を活用する方法です。お金のことで揉めないためには、「公平性」「透明性」そして「個人の自由」のバランスが取れた仕組みを作ることが何よりも大切です。

さまざまな方法がありますが、共働きのお二人におすすめなのは、共通の口座を開設し、毎月一定額をそれぞれが入金して管理する方法です。たとえば、家賃、水道光熱費、日用品費など、二人で支払うべき費目をリストアップし、1か月あたりの合計額を算出します。その金額に対してそれぞれの負担分を共通口座に入金します。収入に差がある場合は、そのバランスを考慮して負担額を決めると良いでしょう。共通口座に入れずに残った個人口座のお金は、お互い干渉せず、それぞれの貯蓄やお小遣いとして自由に使うことができます。

まずは試しに始めてみて、実際に運用してみた結果をもとに、「どこまでを共通口座から支払うか」「それぞれがいくら負担するのが公平か」などについて話し合い、家計を振り返る時間を持ちながら、柔軟に見直していくと、より良い形が見えてくるでしょう。


家計管理において大切なことは「我慢する節約」ではなく、自分のライフスタイルに合った“見直しの工夫”を見つけることです。小さな改善の積み重ねが、将来の安心ややりたいことを実現する力になります。

※本家計簿の内容は、オカネコに寄せられた相談をもとにしたイメージであり、実在の人物や家計とは一切関係ありません。

松井大輔(オカネコ) まつい だいすけ 1級FP技能士/CFP/公的保険アドバイザー/生命保険募集人/証券外務員一種/宅地建物取引士。約1,200人に対するコンサルティングと300回以上のマネーセミナー実施経験を持ち書籍・Web記事の監修も多数行う、元エンジニアの敏腕FP。エンジニア時代に培った論理的思考を用いてお金の話について分かりやすく伝えるをモットーに、総合的なライフプランニングによって住宅資金、教育資金、老後資金を「最適」な金融商品・制度を用いて戦略的に準備するアドバイスを得意としている。家計の改善をマンツーマンでサポートするトレーニングサービス「OKANE-KOllege(オカネカレッジ)」の講師も担当。 この著者の記事一覧はこちら
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