昨年、事務所を離れ個人での活動を始めた永尾まりや。モデルや女優としての活動に加え、アイドルグループ・かぷ(ハート)ちゅーるのプロデュースにも挑戦し、新たなステージへと踏み出している。
演者としての経験を活かしつつ、裏方の大変さも実感するようになった今、「後悔のないように頑張ってほしい」という思いを胸にメンバーと向き合う日々――AKB48時代に影響を受けた秋元康氏のプロデューサーとしての姿勢や地下アイドル現場で感じた刺激を糧に、“等身大のプロデューサー”として奮闘する永尾の今の姿に迫る。
○所属事務所から独立して約1年 ファンとの距離感が近くなった感覚
──永尾さんは昨年2月に所属していた事務所を離れて独立されました。個人で活動を始めて、約1年が経ちましたが、変化を感じることはありますか?
お仕事の内容自体は大きくは変わってないので、実はそこまで大きな変化は感じていないんです。ただ、アイドルグループのプロデュースを始めたりと、新しいことにチャレンジできている感覚はあります。
──働き方やスケジュールなども、大きくは変わらずですか?
そうですね。その辺りも大きくは変わっていないですが、気持ちの面では少し違います。今は「ちゃんと仕事に向き合っていかないといけない」という責任感が、以前より強くなった気がします。事務所に所属していたときは、ある程度お任せしていた部分もあったので……。
──いただいた仕事を、自分自身でもチェックして判断することもあったり?
今は自分でチェックしています。そういった変化はありますね!
──個人で活動してきて「よかった」と思うことはありますか?
ファンの方とアットホームな雰囲気でイベントを開催できたので、それはすごく良かったなと思っています。
──以前よりもファンの方との距離が縮まった感覚があるんですね。
イベントの雰囲気もそうですし、以前より距離感が近くなったと感じています。
──出演する側だったのが、今は制作側の大変さも実感するようになったと。
台本作りから場所決めなど……これまでの私が安心して現場に臨めていたのは、スタッフさんたちのおかげだったんだなと実感しています。今はそういった裏側の部分も、少しずつ見えるようになってきました。
○アイドルプロデューサーの経験を経て、現役時代のスタッフに感謝
──先ほどプロデュース業についての話も出ていましたが、昨年9月ごろから、アイドルグループ・かぷ(ハート)ちゅーるのプロデューサーも務められています。
基本、楽しくやらせてもらっています。ただ、自分が現役アイドルだったときみたいに、毎日ライブに出たり、振りを覚えたり、歌を覚えたりという忙しさや大変さはないですが、
その代わりに作詞や段取り、メンバーとの個人面談など、立場ならではの新しい大変さがあります。
──先ほどのお話にもありましたが、プロデューサーとなると、よりイベント企画や運営などにも深く関わることになりますよね?
そうなんですよ。AKB48時代のマネージャーさんたちのことを、今になってとても思い出します。「ああ……こんなに大変だったんだな……」と10年越しに実感しています(笑)。
──逆に言うと、演者としての気持ちも分かるからこそ、今の立場でも寄り添える部分があるのではないでしょうか?
そこはすごく大きくて、演者と裏方どちらの気持ちも分かる立場なので、やりやすい面はあると思います。
──ご自身が元アイドルとして、プロデュースする立場になった今、メンバーにご自身の経験を伝えていることはありますか?
メンバーたちが私に気を使ってくれて、話しかけてくることは少ないんです。
○プロデュースするアイドルたちに伝えたいこと「自分のベストを…」
──今後、伝えていきたいと思っていることはありますか?
やっぱり、まずは「後悔のないように一生懸命やってほしい」ってことですね! 途中で諦めたりしないで、自分のベストを尽くしてほしいなと思っています。
「ステージに出れているだけですごい」「踊れているだけですごい」と思ってしまうタイプで、基本的に私は厳しく言えないんです(笑)。だから、プロデューサーとしては甘いのかもしれません。今の子たちは「もっと上に行きたい」「もっと頑張りたい」「もっと売れたい」という気持ちが強い子が多いんです。だから、私自身ももう少し自信を持って、アドバイスできるようにならなきゃなと思っています。
ただ、私は人前で話すのがあまり得意じゃないので、LINEで送ったり、歌詞で気持ちを伝えたり、そういう方法のほうが向いていると思います(笑)。
あとは、現場にいるマネージャーさんが厳しいことを言ってくれているので、とても助かっています。私はどちらかというとフォローする側です。
──永尾さんご自身も、アイドルとしてさまざまなステージに立たれてきたと思いますが、プロデューサーの目線で見ていて、「グループがもっと上に行くために必要」だと感じることはありますか?
今、新しいグループを作るタイミングで、ちょうど昨日オーディションも終わったばかりなんです。今いるメンバーが新グループの子たちから刺激を受けてくれたらいいなと思っています。
全員がまったく同じ場所を目指さなくてもいいと思うのですが、グループとして「私たちはこういうチームだ」っていう軸を持って、みんなが同じ方向を向いてがんばれたらいいなと思っています。
○AKB48プロデューサー・秋元康から学んだこと
──なるほど。AKB48といえば、秋元康さんプロデュースとしても知られています。永尾さんご自身が秋元さんから学んだことはありますか?
うーん、何だろう……言葉にするのは難しいですね。ただ、現役のときから秋元先生の書く歌詞は本当に素晴らしいなとずっと思っていましたし、自分がステージに立たせてもらったり、握手会をやらせてもらったりするなかで、「アイドルって楽しい」「やっててよかった」と何度も感じました。
──48グループでは選抜総選挙のような企画もたくさんありました。
改めて思い返すと、ああいう企画は本当に楽しかったです。秋元先生って、どんどんおもしろい企画を出してくるじゃないですか。私はそれがすごく楽しかったので、今の子たちにも、そういう刺激を与えてあげられたらいいなと思っています。
──今後は永尾さんご自身が、プロデューサーとしてそういう「刺激を与える企画」を仕掛けていく立場になりますね。
そうですね。何かおもしろい企画とか、心が動くようなことができたらなと思っています。
──プロデュースに関して、秋元先生に相談したりすることはありますか?
それは……ないですね(笑)。私は自分から現場に行って、別グループのプロデューサーの方や、グループを作られている方たちに、たくさん話を聞かせてもらってます。聞けば聞くほどAKB48とは全然違います。
──どういった点が大きく違いますか?
AKB48の場合は劇場があって、自分たちのステージが毎日あるんです。でも、地下アイドルの場合は、渋谷のライブハウスとかに15組~20組くらいがエントリーして出演します。楽屋もギュウギュウで、なんならみんな立っているくらいで……お客さんも各グループのファンの方がいて、すごい熱量なんです。
──劇場公演とはまた雰囲気が全然違うと。
なので、私もいつか「自分のグループで劇場を持ちたい」というのが夢です。
■永尾まりや
1994年3月10日生まれ、神奈川県出身。2009年にAKB48の9期生オーディションに合格、2016年にグループを卒業した。現在はグラビアのほかABCテレビ・テレビ朝日系ドラマ『グラぱらっ!』に出演するなど各方面で活躍中。