運命を変えたオーディション、そしてSKE48へ

「本日の劇場公演で8月末をもちまして、SKE48を卒業させていただくことを発表させていただきました」

7月15日、中野愛理はSKE48を卒業することを発表した。卒業を決めてから発表までには、およそ1年の時間があったという。夢だったアイドルという道を歩き始めてから7年。
グループを離れる今、一人のアイドルファンとして、これからのSKE48に期待することとは。(前後編の後編)

○「SKE48です」と名乗れる誇り

「ようやく気持ちがスッキリしたというか。卒業するって決めたことを秘密にしながら、活動してたわけじゃないですか。ファンの皆さんは、これからについてお話してくださるんですよ。新しいチームが始動したんですけど、『Team Sに推しメンいないから、らぶりんのこと推すね』とか。そういう声を聞くたびに申し訳ないなと思っていました」

この取材の日、言葉を選びながら丁寧に話す彼女の表情には、清々しさがありながら、少しだけ名残惜しさも混じっているように見えた。

「卒業を発表してから、月日が経つのが早くて。ちょっと焦ってます。どこのグループに所属しているのか聞かれて、『SKE48です』と言えるのが誇りだったので。もうちょっとでそれが終わっちゃうのも、悲しい現実。書類審査で2回落ちていたので、自己紹介で名乗れるって、夢のようでした」

アイドルになる。それは小学生の頃からの夢だった。
けれど、その夢への道のりは、決してまっすぐではなかった。何度も挑戦し、何度も落ちて、それでも諦められなかった。

「6期生と7期生は受けたんですけど、8期生は受けてなくて。心が折れました。2回も受けて、書類で落とされてるってことは、SKE48のスタッフの方たちは、私の顔が好みじゃないんだと思って、諦めたんですよ。ドラフト3期生を受ける時も、志望グループが選べたんですけど、ここでSKE48をチェックしたら、また落とされると思って、あえて選ばずに、『どこでも行きます』と言いました。そう言いつつも、やっぱりSKE48を狙ってて」
○すごくうれしい出来事があった7年間

胸の内に秘めた、抑えきれない思い。結果的にそのSKE48に指名され、夢が現実になった。

「書類審査に通って、初めて東京で面接を受けさせてもらえることになった時、お母さんには、『東京観光のつもりで行ってきなよ』って送り出されたんです(笑)。そしたら、まさか受かっちゃって。もう震えながら、お母さんに電話しました」

「その後もどんどん審査が進んでいって、最終審査に進んだ時、合宿があったんですけど、未来のアイドルたちに会えてるならもういいかって気持ちになりつつ、でもやっぱり合格したいという気持ちもあって。オーディションに受かって、指名していただいて、SKE48に入ることができて……テレビとかで見ていたメンバーが近くにいるのを見て、ようやく実感が湧いてきました」

卒業を目前に見つめる、これからのSKE48

まさに夢を叶えている最中というのは、どんな感覚なのだろう。

「それでも、ずっとそわそわしてました。
1年くらいは自分がSKE48だと思えずに活動してましたね。加入して1カ月くらいで、大きなコンサートにも参加させていただいてたんですけど、まさか自分がいきなり、こんな大きなステージに立って、踊っているなんて思いもしなかったので、夢の中にいるみたいだなって。それからも、1年に1回は絶対に、自分にとって、すごくうれしい出来事があった7年間でした」

中でも、選抜入りは忘れられない出来事だという。ファンだった頃に思い描いた“憧れの自分”が、ついに現実になった瞬間だった。

「選抜に入れたっていうのが、一番の大きな出来事だなと思っていて。ファンだった頃も、自分がSKE48だったら、どんな感じなのかなって想像してたんです。このメンバーと一緒に選抜に入って……って勝手に選抜組んで(笑)。それくらい選抜には憧れがありました」

「初めて選抜に入ったのに、2列目の真ん中のポジションに立たせていただいたこともうれしかったですね。先にジャケット撮影をしたんですけど、その時はまだポジションを知らされてなくて。その後、振り入れをする時、すごくお強いメンバーの中に自分の名前が呼ばれて、心の中で『えっ!? えっ!? うれしい……』って(笑)。必死に振り入れをしている最中も、ずっとうれしかったです」

今のSKE48を客観視するなら?


憧れだったグループのメンバーとなり、かけがえのない思い出がたくさんできた。卒業を控える今、想像で選抜メンバーを選んでいたあの頃のように、一人のアイドルファンとして、今のSKE48を客観視するなら?

「私がファンとして見ていた頃からですが、『ダンスのSKE48』と言われるくらい、ほかのどのAKB48グループよりも汗を流すグループだというのは、多分これからも変わらない伝統なんだろうなって感じています。
でも今、私が一人のファンとして、第三者目線で見るとしたら、すごく大事な時期なのかなって」

「それはなぜかと言うと、若手をプッシュするチャンスは今なんじゃないかなって、個人的に思っていて。私が卒業した後、SKE48の公演を観にいくってなった時、昔から頑張っているメンバーを大事にするのはもちろんなんですけど、この子がそんなに前に来るようになったんだ! っていう、新たな発見が欲しい。全然知らないSKE48になっていたらいいなっていう願望はあります」

そして、卒業を目前に控えたこのタイミングで、1st写真集 『可愛いと言って欲しい』(3,300円 A4/128ページ KADOKAWA)の発売も実現した。SKE48・中野愛理にとって、最初で最後の写真集だ。

「 『可愛いと言って欲しい』は、本当に新しい感覚の写真集になっています。これは言葉では言い表せないのですが、見ていただいたら分かると思いますし、見た方全員に『可愛かったな」と思ってもらえると思うので、ぜひ私のファンの方はもちろん、私をあまり知らない方にも手にとっていただけたらうれしいです。卒業まで、まだイベントなどもありますので、たくさん会いに来てください。残りの期間も写真集とともに走り抜けるので、応援よろしくお願いします!」

■プロフィール
中野愛理
2001年3月24日生まれ、愛知県出身。2018年、SKE48のドラフト3期生としてお披露目。2019年、ユニット「カミングフレーバー」始動。2024年、SKE48 32nd シングル「愛のホログラム」にて初の選抜メンバー入りを果たす。雑誌『bis』(光文社)のレギュラーモデルとして活動経験あり。
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