第38期竜王戦(主催:読売新聞社)は、藤井聡太竜王への挑戦権を争う挑戦者決定三番勝負第2局の佐々木勇気八段―石田直裕六段戦が8月7日(木)に東京・将棋会館で行われました。対局の結果、角換わり相早繰り銀のねじり合いから抜け出した佐々木八段が101手で勝利。
○分岐点は早々に
2週前に行われた第1局では相掛かりの熱戦から佐々木八段が勝利。ランキング戦から9連勝で駆け抜けてきた石田六段にもカド番での戦いぶりへ注目が集まります。佐々木八段の先手で始まった本局は両者の息が合って角換わり相早繰り銀へと進展。40手を超えたあたりまで前例のある最先端定跡で、盤上は相掛かりのようなタテ系の将棋となりました。
相手の得意形を受けて立った格好の石田六段ですが、中盤の早い段階で後悔の一手が出ます。3筋に歩を垂らしたのは自然なようでいて専門的にはやや疑問。先手に丁寧な自陣角で受けられてみると歩切れになった損ばかりが目立ち、後の手作りに苦労することに。局後に「ひどかった」と振り返った石田六段を尻目に佐々木八段の反撃が始まります。
○居玉で攻め切り快勝
後手からの攻めがなくなったのを見た佐々木八段の攻勢が続きます。居玉のまま飛車を5筋に回ったのが柔軟な発想で、中住まいに収まった石田玉を攻めるのに最適と見ています。局面も終盤に差し掛かった頃、佐々木八段が角を切り飛ばして銀を取ったのが読み切りの決め手で、急所にと金ができたことで攻めが切れなくなりました。
気持ちよく攻め続ける佐々木八段は攻め駒をきれいにさばききって勝勢を確立します。終局時刻は20時44分、最後は自玉の受けなしを認めた石田六段が投了。終わってみれば自玉を一度も動かすことなく攻め切った佐々木八段の自由奔放な指し回しが印象に残る快勝譜となりました。惜しくも敗れた石田六段ですが、その活躍には観戦したファンも労いの言葉を惜しみませんでした。
佐々木八段が藤井竜王に挑戦する注目の七番勝負は10月3日(金)・4日(土)に東京都渋谷区の「セルリアンタワー能楽堂」で開幕します。
水留啓(将棋情報局)