NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、そして楽天モバイルを有する楽天グループの携帯4社の決算は、減益傾向ながら楽天モバイルがEBITDA(Earnings before Interest, Taxes, Depreciation and Amortization:利払い前・税引き前・減価償却前利益)黒字化を維持するなど好調な様子だ。ただ、ここ最近の物価高で、値上げを巡る戦略の違いが明確に出てきており、それが各社の今後の業績を大きく左右する可能性があるようだ。
○値上げに悩むソフトバンク、拡大路線を維持するのか
まずは大手3社の2025年度第1四半期決算を確認すると、NTTドコモは営業収益が前年同期比0.9%増の1兆4901億円、営業利益が前年同期比13.0%減の2397億円。KDDIは売上高が前年同期比3.4%増の1兆4363億円、営業利益が前年同期比1.6%減の2725億円。ソフトバンクは売上高が前年同期比8%増の1兆6586億円、営業利益は前年同期比4.3%減の2907億円で、いずれも増収減益となっている。
減益の要因は各社によって違いがあるが、とりわけ減収幅が大きいNTTドコモは主力のコンシューマ通信事業における基盤強化にコストがかかったことが大きく影響している。
実際、NTTドコモの親会社であるNTTの代表取締役社長である島田明氏は、その減益要因として、1つに顧客基盤のためのマーケティング費用が前年より増加したこと、そしてもう1つに、基地局を20%増設するなどネットワークインフラの強靭化に向けたコストが増加したためと話している。
一方のKDDIとソフトバンクはともに、減益要因は一過性の影響によるものだとしていることから、一見すると携帯料金引き下げの影響から唯一、回復途上にあるNTTドコモの遅れが目立つように見える。だが、各社の説明を見るに、必ずしもそうとは言い切れない状況が見えてくる。
確かにNTTドコモは減益だが、番号ポータビリティによる純増数は3四半期連続でプラスとなっており、ARPU(Average Revenue Per User:1ユーザーあたりの平均売上高を示す指標)も3920円と、前年同期と変わらない水準で下げ止まっている。
それに加えて高価格帯の新料金プラン「ドコモ MAX」の契約数が70万を突破するなど、2025年度末の300万契約という目標達成に向け好調な滑り出しを見せており、長く苦しんだトンネルを脱しつつある様子だ。
その反面、新たな課題を抱えたのがソフトバンクだ。すでに、NTTドコモがドコモ MAXなどの新料金プランで実質的な値上げを進め、KDDIは「auバリューリンクプラン」など新料金プランだけでなく、auブランドの既存プランの値上げも実施するなど、昨今の物価高を受けて料金値上げへと踏み切っているのだが、大手3社の中では唯一、ソフトバンクだけが料金値上げの姿勢を明確にしていないのである。
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