第46回将棋日本シリーズJTプロ公式戦は2回戦がスタート。8月9日(土)には藤井聡太竜王・名人―佐々木勇気八段の一戦が静岡県静岡市の「ツインメッセ静岡」で行われました。
対局の結果、雁木対右四間飛車の対抗形から抜け出した藤井竜王・名人が106手で勝利。快勝ともいえる内容でベスト4進出を決めています。
○後手番藤井の新機軸

10月に開幕する竜王戦でも相まみえる二人。振り駒で後手となった藤井竜王・名人は2手目に角道を開ける趣向を採用、専守防衛に近い布陣の雁木に組んで戦いの時を待ちます。対する佐々木八段は、対局前のあいさつで「気持ちは決勝戦のつもりで」と述べた通り攻撃的な右四間飛車を採用。「攻めは飛車角銀桂」の格言通りの布陣で決断よく先攻に踏み切りました。

受けの時間が続く藤井竜王・名人ですが、バランスよい指し回しを続けて崩れません。捻り合いの中盤戦、藤井竜王・名人が自陣四段目の角を起点として6筋の歩を突き出したのが佐々木八段が見えていなかった好手筋でした。攻めを引っ張り込むだけに怖いものの、先手の攻め駒を一掃してしまえば戦いやすくなります。とはいえ形勢は互角で、勝負の行方は終盤の攻防に委ねられました。

○前哨戦は藤井に軍配

形勢が動いたのは77手目。形勢に自信を持っていたという佐々木八段は手筋を駆使して再度攻勢に転じますが、結果的にこの構想が疑問でした。
直前に打たれた控えの桂により佐々木陣が「簡単に寄るのをうっかりしていた」という局後の感想が裏付ける通り、本局はここから藤井竜王・名人の華麗なる寄せで決着を迎えることになります。

終局時刻は16時55分(対局開始15時38分)、最後は自玉の受けなしを認めた佐々木八段が投了。先手の猛攻を受け止め一瞬の反撃で仕留めた藤井竜王・名人の懐の深さを示す快勝譜となりました。考慮時間を1回残す安定の指し回しを見せた藤井竜王・名人は「桂を跳ねたあたりで好転した」と終盤のポイントを語りました。準決勝では渡辺明JT杯覇者―山崎隆之九段戦の勝者と盤を挟みます。

水留啓(将棋情報局)
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