俳優の妻夫木聡が主演を務める映画『宝島』(9月19日公開)の全国キャラバンが20エリアに到達した。8月9日、10日の2日間で、妻夫木と大友啓史監督は、京都、兵庫(神戸・姫路)、熊本、鹿児島の5劇場を訪れた。
戦後沖縄を舞台に、歴史の陰に埋もれた真実を描く真藤順丈による小説『宝島』。第160回直木賞をはじめ、第9回山田風太郎賞、第5回沖縄書店大賞を受賞するなど3冠に輝いた本作が、東映とソニー・ピクチャーズの共同配給によって実写映画化された。監督は様々なジャンルや題材を通して常に新たな挑戦を続ける大友啓史。主演には妻夫木聡を迎え、広瀬すず、窪田正孝、永山瑛太ら日本映画界を牽引する豪華俳優陣が集結し、誰も見たことがないアメリカ統治下の沖縄を舞台に、混沌とした時代を全力で駆け抜けた若者たちの姿を圧倒的熱量と壮大なスケールで描く。
「『宝島』は、“人生のバトン”の物語。映画を越える存在になっているこの作品を、皆さんに直に会いに行って届けたい!」と、「宝島宣伝アンバサダー」として全国行脚することを宣言した妻夫木は大友監督とともに、6月7日に実施された沖縄プレミアを皮切りに、静岡、愛知、富山、長野、大阪、福岡・北海道、宮城・岩手、高知・愛媛、広島、山形・新潟を巡り、8月9日、10日の2日間で京都、兵庫(神戸・姫路)、熊本、鹿児島の5劇場を訪れた。
8月9日に訪れたT・ジョイ京都でのトークでは、「くしくも今日は長崎に原爆投下されて80年という日。考えさせられることがたくさんありました」という感想が寄せられ、「見終わって『人間はバカじゃない』と思いたい気持ちと、『バカかもしれない』という思いが共存しています。このようなモヤモヤ、マグマをどうやって昇華させたらいいでしょうか?」という声が上がった。それに対して妻夫木は、「昇華しないでほしいです。そんな簡単なことじゃないから」と語りかけ、「僕たちは生きることに迷うし、みんな強くないじゃないですか。弱くていいと僕は思っています。
だからこそ人の痛みを感じることができる。だから昇華せずに燃えていきましょう、みんなでたぎっていきましょう」と観客を鼓舞すると、会場からは大きな拍手が送られた。
同日訪れたOS シネマズ神戸ハーバーランドでも、「今年は戦後80年という年でもあるし、今日は長崎に原爆が落ちた日でもあります」と語りかけた妻夫木は、「それは忘れてはいけないし、知っていなきゃいけない。それをちゃんと伝えていかなきゃいけない。そういう未来にちゃんと繋げていくのが 僕たちの使命。だからそのことを絶対諦めたくないし、映画を通じて皆さんに知ってもらう機会をつくらなきゃいけない」と観客に呼びかけた。大友監督は「沖縄の人たちの、あの優しさの奥にある強さは何だろうとずっと考えていました。そんな時にこの原作に出会い、日本の高度経済成長の裏で、沖縄ではまだ人々が戦っていたということをあらためて知りました。これは、僕たち日本人全員が知らなきゃいけない物語だと思った」と続け、「歴史の教科書に載っている数行の記述を知るんじゃなくて、この映画を通して登場人物たちの感情を追体験してもらいたい。そしてここにいる皆さんはもうそれを体験したわけですから、すでに大友組です。ひとりでも多くの人にこの映画を通して、あの時代の沖縄を追体験していただきたい。それが僕らの願いです」とメッセージを送った。
続くアースシネマズ姫路でのトークでは、妻夫木がこの作品に向き合うにあたって、沖縄にいる親友の存在が大きかったことを明かした。「その親友が、佐喜眞美術館に連れて行ってくれて。沖縄戦の時を描いた絵をとにかく見てほしいと言われたんです。沖縄を知る上で学ぶことも大事だし、知ることも大事なんだけど、あの絵を見たときに、"感じる"ことを忘れていた自分に気づかされた気がしました」とコメントすると、声を詰まらせた。その絵からさまざまな声が聞こえてくるような感覚に襲われ、涙が止まらなかったという妻夫木の姿を見た親友からは「そういうことなんだよ」と声をかけられたと、その時の心境を伝えた。
翌日の熊本ピカデリーでは、「エンドロールで使われていた写真は、実際の写真でしょうか?」という質問が寄せられた。大友監督が実際の写真であることを明かすと「実は仕上げの段階では、写真を出すべきかすごく迷っていました。ただ原作 者の真藤順丈さんもおっしゃっていますが、この映画の本当の主役は沖縄の歴史だと思うんです。これはフィクションではなくて、 たかだか何十年か前の、今と地続きの世界の中で実際に起こった出来事であるということを、僕も含めて、みんなが知っておいた 方がいいんじゃないかと思い、あの写真を使わせていただきました」と付け加えた。また、妻夫木が「『宝島』という映画は、観ていただいてからも、さらにどんどん成長してるように感じます。全国を回らせてもらって、皆さんの中に芽生えた種が、どんどん花開いているように感じています。僕はその花をもっともっと全国で咲かせたいなと。
そのためには、皆さん一人一人の力が必要だと思っています。皆さんの力でどんどん思いの輪を広げていきましょう!」 と呼びかける場面も。
続いて一行は鹿児島ミッテ 10に移動。「今までの先行上映で色々な場所に行ったと思うんですが、思い出に残っていることはありますか?」という質問が寄せられると、妻夫木は、「やはりその土地土地で、感じ方が少しずつ変わっていくのかなという気がします。劇場の大きさにも依るとは 思うんですが、鹿児島の皆さんとは結構距離が近いから、なんだか心の距離感も近いように感じていますし……」と思案しつつも、「でも、やはり最初に行った沖縄ですね」と返答。本作が激動の時代の沖縄を描いた映画ということで、沖縄の人に観てもらいたい という想いはありながらも、一方でどこかに不安が残っていた。だが映画を見終わった観客から「作ってくれてありがとう」と言われたことが本当に嬉しかったという。
イベントの終盤、妻夫木は「僕は『ウォーターボーイズ』という映画で全国を回って、その土地土地で『ウォーターボーイズ』が皆さんに愛されて、その土地の映画になっていくのを目の当たりにして。もしかしたら映画って人の人生を少しでも変えられるかもしれないと。そういう映画の力を感じたんですけど、今回、その力を改めて信じてみたいなと思っているんです。 今日ここにいらっしゃる皆様は"大友組"の観客部です」と会場の観客に映画を託した。大友監督も「映画は本当に子供みたいなもの。
大事な子供を皆さんに預けるような気分です。いい子に皆さんで育ててくれると幸いです」と締めくくり、劇場には大きな拍手が鳴り響いた。
観客一人一人に直接熱い想いを届けた2日に渡る怒涛の舞台挨拶行脚。鹿児島をもって20エリア訪問を達成し、ますます勢いづく妻夫木、大友監督のたぎる鼓動が全国に響き渡る中、公開まであと1か月となった。
(C)真藤順丈/講談社 (C)2025「宝島」製作委員会
【編集部MEMO】
映画の原作となった小説『宝島』は、真藤順丈氏のペンによる。「リュウキュウの青」「悪霊の踊るシマ」「センカアギヤーの帰還」の三部構成となっており、沖縄戦直後から始まった1952年の米軍統治時代から、日本に復帰した1972年までの沖縄を舞台としている。2018年に第9回山田風太郎賞、2019年に第160回直木三十五賞、2019年に第5回沖縄書店大賞の小説部門賞を受賞している。
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