藤井聡太王位に永瀬拓矢九段が挑戦する伊藤園お~いお茶杯第66期王位戦(主催:新聞三社連合、日本将棋連盟)七番勝負は、第4局が8月19日(火)・20日(水)に福岡県宗像市「宗像ユリックス」で行われました。対局の結果、角換わり腰掛け銀の研究勝負で抜け出した永瀬九段が130手で勝利。
○永瀬九段の角換わり研究手
前日会見ではこども記者からの質問に「藤井さんに楽しんでもらえるように強くならなければ」と答えた永瀬九段。カド番で迎えた本局は角換わり腰掛け銀へと誘導し、最先端の研究勝負に奪取の望みを託しました。ともに研究の範囲内か盤上はハイペースで進展。開始1時間で盤上は50手以上が進みますが、永瀬九段の前例が無い研究手を見た藤井王位の手が止まります。
藤井王位の長考中にトラブル発生。対局室に音声が流れる異例の事態に対局は一時中断となりますが、立会人の中田功八段の裁定により早めに昼食休憩に入ることで両者が合意。午後に入ると双方攻めたり守ったりの捻り合いへと突入します。持ち時間でリードする永瀬九段が決断の一手を指せば藤井王位も封じ手直前に着手するなど、持ち時間をめぐる駆け引きも見られました。
○攻めをいなした快勝譜
形勢が動いたのは2日目の午前のことでした。封じ手の時点で「自信がなかった」という藤井王位は馬で飛車を取って攻撃続行。飛車を打ち込んでの攻めは部分的には厳しいものですが、本局では先手玉が薄いため反動が厳しく残りました。
丁寧な受けを基調にペースをつかんだ永瀬九段の指し手に勢いが出てきます。銀を打って飛車の両取りをかけたのが反撃への第一歩。食い下がる藤井王位の攻めに対しても、自陣の端に金を打ち付ける意表の受けで逆転を許しません。その後、満を持して反撃に繰り出した永瀬九段が鋭い手順で先手玉を寄せ切りました。終局時刻は19時22分、藤井王位が投了。
一局を振り返ると、深い事前研究で先手の攻めに勢いを与えなかった永瀬九段の快勝譜に。持ち時間でリードすることで逆転を許さないタイムマネジメントも光る結果となりました。貴重な後手番勝利で1勝3敗と踏みとどまった永瀬九段が白星を伸ばせるか、注目の第5局は8月26日(火)・27日(水)に徳島県徳島市の「渭水苑」で行われます。
水留啓(将棋情報局)