ゼンリンが、内水氾濫への備えに役立つハザードマップの見方や活用法を紹介している。
○ハザードマップとは?

ハザードマップとは、災害が発生した場合の被害を予測して、被災想定地域や被害の範囲、避難場所や避難経路などを地図上に表示したもの。
地震・津波・土砂災害など災害の種類ごとに作成されており、紙媒体だけでなくWEB版のハザードマップも存在し、国土交通省や各自治体のHPなどで確認できる。同社もハザードマップの作成支援を行っている。個人宅名やテナント名が記載されている詳細な住宅地図データを保有しており、定期的に現地調査を行っているため、最新の地図情報を提供することができる。

○内水氾濫とは? 外水氾濫との違いは?

水害を起こす氾濫は大きく分けて「外水氾濫」と「内水氾濫」の2種類がある。外水氾濫とは大雨によって川があふれて市街地側に流れ込み、浸水する現象のこと。一方、内水氾濫は、大雨に対して排水機能が追い付かず、下水道、用水路やマンホール等から水があふれだし、土地や建物が浸水してしまう現象で、内水氾濫はさらに2種類に分けることができる。河川の増水によって排水の役割を担う用水路や下水溝が機能不全となり、少しずつ冠水が広がる「氾濫型の内水氾濫」、もう一方は、河川の水が排水路を逆流して起きる「湛水型の内水氾濫」となる。

○内水氾濫が起きやすい場所や特徴とは

内水氾濫は、標高が低い地域ほど起こりやすいという特徴がある。なぜなら、雨水が流れ込みやすくなり、排水処理が追い付かない可能性が高いから。そのため、谷のようにくぼんでいる地域や地下室や地下街・地下道などは内水氾濫が起こりやすい傾向にある。特に近年、局地的な大雨やゲリラ豪雨などが多く、全国的に内水氾濫が起こる危険性が高まっている。過去に内水氾濫の経験がない地域でも、実は排水機能が不十分で急激な大雨により処理機能が追い付かず被害にあうケースがある。
このような事態に備えるために普段からハザードマップで自分自身が住んでいる地域の周辺を確認し、氾濫に備えておくことが重要となる。

北海道 室蘭市様の内水氾濫ハザードマップ 導入事例


室蘭市は、北海道の南西部に位置し、北海道有数の工業都市で産業と自然が共存する魅力的な都市。北海道は6月~10月にかけて豪雨や台風等の影響により、川の水位が高くなりやすい時期になる。室蘭市では、日頃より市民に向けて防災訓練や防災のワークショップを実施するなど防災・減災活動に積極的に取り組んできた。2024年には、内水氾濫が津波や土砂、洪水と同じく甚大な被害を起こす可能性がある災害の1つであることを改めて市民に周知するため、同社が作成支援を行った内水氾濫ハザードマップをHPに公開し、「室蘭市くらしの便利帳」に掲載し、全世帯に配布もしている。自治体では、内水氾濫ハザードマップの作成が増えてきている。自分が住んでいる地域のハザードマップの入手方法や状況について確認しておくことが推奨される。

○事前にできる備えについて

台風等の影響による被害は、台風の進路、規模等から災害発生の可能性をある程度事前に予測することができる。しかし、ゲリラ豪雨等は短時間で局所的に発生するので発生場所や時刻を予測することは困難となる。いざという時に迅速に適切な行動をとるためには、ハザードマップを活用しながら自分自身の状況に合わせた避難方法などについて事前に確認しておくことが大切。ハザードマップを見る際は「自分が住んでいる地域の災害リスクを知る・確認する」「自分自身の安全確保について考える」の2点がポイントとなる。
○1.自分が住んでいる地域の災害リスクを知る・確認する

自治体によって災害種別ごとのハザードマップの発行状況は異なるので、まず、自分の住んでいる自治体の状況を確認する。
次に、自分が住んでいる地域のハザードマップを用意し、自宅に印をつけて、その周辺の危険箇所を確認し、そこを避けた避難所へのルートも記載しておける。平時は何ともない場所でも大雨や洪水により危険になる場合がある。特に、危険箇所としては、アンダーパス、排水溝、マンホール、用水路、周囲より低い場所や平坦で水はけの悪い場所等が挙げられる。日頃から自分が住んでいる地域の周辺環境を確認しておくことが重要とされる。

○2.自分自身の安全確保について考える

自分が住んでいる地域や、自分自身が置かれている状況によって避難すべき警戒レベルが異なる。警戒レベルとは、災害発生のおそれの高まりに応じて5段階に分類した「住民がとるべき行動」と、その「行動を示す情報」とを関連付けたもので市区町村が避難情報と合わせて出す情報のこと。事前に内容を確認しておきたい。自治体から避難指示が出たら迅速な避難行動が必要だが、ゲリラ豪雨や局所的な大雨は短時間で内水氾濫が発生するので避難指示等の発令が間に合わない場合がある。自宅周辺の気象情報や周辺状況を確認し、避難指示が出ていなくても、危険を感じたら早めに避難することが求められる。

避難といっても、必ずしも避難場所に行くことだけが避難ではない。避難とは「安全を確保する」こと。自宅とその周辺の安全が確認できれば、自宅にとどまることも選択の1つ。
避難場所に行く場合には、事前に確認した危険箇所を避けながら避難することが望ましい。氾濫した水の流れは、勢いが強いので水深が膝程度になると大人でも歩くことが困難になる。氾濫した水は茶色く濁っており、水路と道路の境や、ふたが空いているマンホールの穴は見えないので注意が必要となる。また、水害時に開設される避難場所は災害の状況により異なる場合がある。そのため、自分の住んでいる地域が発表している開設情報を確認する必要がある。氾濫してからの避難は危険を伴うため、早めの行動が求められる。
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