資産運用に興味はあるけれど、不安でなかなか始められない。そんなお悩みを持つ人は多いでしょう。
「損したらどうしよう」「そもそも知識がないし…」など、運用への心理的なハードルは誰もが抱えるものです。

そこでこの記事では、資産運用に不安を感じる原因をまとめ、安心して運用を続けるための具体的なアドバイスをわかりやすく解説します。「もっとポジティブに資産運用に向き合いたい」という方は、ぜひ参考にしてください。

■資産運用に不安を感じる原因とは?

そもそも、なぜ資産運用に不安を感じるのでしょうか。理由をはっきり意識している人もいれば、なんとなくモヤモヤした不安を抱えている人もいます。ここでは、資産運用に不安を覚える主な原因を整理してみましょう。
1.価格変動がある

価格変動への不安から、資産運用に踏み切れない人は多いでしょう。銀行にお金を預けているだけなら大きく増やすことは期待できませんが、その代わり、原則としてその金額が減ってしまうことはありません。

一方、リスクを取って投資を行うと、購入した金融商品の価格が変動します。購入した時より価格が上がればいいですが、価格が下がると元手となる資産が減ってしまう可能性があります。これまで預貯金など元本保証の商品しか経験がない人は、この価格変動に戸惑ってしまうかもしれません。
2.資産運用の知識がない

「知識がないから不安」という声もよく耳にします。
2024年7月5日に金融庁が発表した「リスク性金融商品販売に係る顧客意識調査結果」によると、投資経験のない人がこれまで金融商品を購入しなかった理由として最も多く挙げられているのは、「資産運用に関する知識がないから」でした(※)。

また、資産運用を始めようとしても、難しい専門用語の壁にぶつかり、諦めてしまう人も多いようです。

(※)投資未経験者・検討者: 55.5%、投資未経験者・未検討者: 37.8%
3.運用成果がすぐには出ない

一般的に、資産運用は長期的な視点でコツコツ続けていくものです。資産運用を始めても、すぐに大きくお金が増えることは多くありませんが、短期間で儲けを出した人の話を聞くと焦りを感じてしまう人もいるでしょう。

特に、運用を始めた直後に価格が大きく下がってしまうと、「自分のお金はどうなってしまうのか」という不安が大きくなるかもしれません。
4.損することのストレスが大きい

人は利益を得た時の喜びよりも、損をした時の痛みを2倍以上強く感じると言われています。たとえば同じ10万円でも、得た時の喜びより、失った時のショックのほうが大きく心に残るのです。

この心理的傾向を「損失回避バイアス」と呼び、人は損を避けようとするあまり、リスクを取らなくなる傾向があるとされています。こうした影響から、資産運用に対して不安を抱くのは、人としてごく自然なことだと言えるでしょう。
5.自分に合う方法がわからない

資産運用といっても、その方法は実にさまざまです。だからこそ、「果たしてこれは自分に合うやり方なのだろうか」と迷う人は少なくありません。また、自分に合う運用方法をどう見極めればいいのかわからないという声もよく聞かれます。


さらに、「日々の生活で無理なく続けられるのか、実際に始めたら何をすればいいのか」という疑問が積み重なり、本当に自分にできるのだろうかと悩んでしまう人は多いのです。
■不安を和らげ資産運用を成功に導く5つのポイント

ここまで、資産運用に不安を感じる理由を見てきました。次に、こうした不安を和らげ、資産運用を成功させるための具体的な行動や考え方をご紹介します。
1.資産運用の目的を明確にする

まずは、資産運用を始める前にその目的を明確にしましょう。海外旅行へ行くため、子どもの教育資金を準備するため、老後資金を貯めるためなど、資産運用の目的が明確になれば、運用期間や必要な金額もわかります。

そうすれば、目標達成のために必要なリターンも設定できますので、過度なリスクを取ることも防げますし、目的に適した方法で計画的に運用でき、むやみに不安になることはありません。

「資産運用に興味はあるけれど、『何のため』は考えていなかった」という人は、自身の目的を明確にすることから始めてみましょう。
2.「長期・積立・分散投資」の三大原則を徹底する

少しでも安定的な運用を目指すなら、「長期・積立・分散投資」という資産運用の基本を徹底することが非常に大切です。

「長期投資」とは一般的に、10年以上かけて行う投資を指します。長期で取り組むことで、たとえ一時的に値下がりしても、再び値上がりすることを期待できます。また、長期的にコツコツ運用することで、リスクを抑えつつ複利効果も得られます。

複利効果とは、運用で得た利益を再び投資にまわすことで、利益がさらなる利益を生み、雪だるま式に資産が増えていく効果です。
この複利効果を活かすには、長期的な視点で運用を行うことが欠かせません。

「積立投資」とは、金融商品を一括で購入するのではなく、一定の期間ごとに一定の金額ずつ同じ銘柄を購入する投資の手法です。積立投資は、一度銘柄を選んで設定をしておけば、あとは設定した間隔で一定額が自動的に積み立てられていきます。

売買のタイミングを考えたり、その都度購入の手続きをしたりしなくて済むため、ストレスなく運用を続けられるのがメリットです。

また、購入のタイミングを分散しながら一定額を買うことで、価格が高い時は少なく、価格が安い時は多く買えますので、平均購入単価を抑える効果も期待できます。

「分散投資」で複数の投資先に資産を分散させることも大切です。1つの資産が値下がりしても、他の資産が値上がりしていれば、値下がり分をカバーできる可能性があるからです。株式や債券、不動産、金などさまざまな資産への投資を検討しましょう。
3.少額から投資する

資産運用に不安を抱く人の中には、「投資はまとまったお金がないとできない」と思い込んでいる人が多くいるようです。しかし、金融商品によっては数百円、数千円といった少額から投資できます。

少額であればリスクに対する不安も和らぎ、落ち着いて投資に取り組めるはずです。価格の上昇や下落に慣れてきたら、徐々に金額を増やしていきましょう。

4.余剰資金で投資する

投資は余剰資金で行うこともポイントです。まずは、生活費や数年以内に使うことが決まっているお金、「生活防衛資金」などを確保しておき、その他の余剰資金を投資に活用しましょう。生活防衛資金とは、病気やリストラなど予期せぬ事態に備えるためのお金で、生活費の3~6ヶ月分が目安です。

余剰資金で投資すれば、金融商品の価格が変動したり元本割れしたりしても、生活費や必要なお金の準備に困ることはありません。安心して資産運用を行うためにも、こうした「お金の色分け」は必ずしておきましょう。
5.ルールを決め冷静に運用する

資産運用を行う中では、相場の急激な変動や思わぬ事態が起きることもあります。そのような時、人は冷静な判断ができなくなり、パニックから感情的に行動してしまうものです。

資産運用において感情的にならないためには、感情のコントロールを心がけることも必要ですが、あらかじめ運用のルールを決めておくことが重要です。たとえば、「〇%下がったら売る」「どんな相場でも積立は継続する」などです。

また、日頃から取り入れる情報を取捨選択することも、心を安定させる効果があります。特に最近では、SNSを中心に煽るような内容やセンセーショナルな情報もあるため、感情を刺激されてしまいがちです。信頼に足る情報源を厳選し、投資関連の情報を見る頻度も決めるなど、冷静に運用を続けられる環境を作っていきましょう。

■資産運用はなぜ必要なの?

それでも、「リスクのある運用は不安」と考える人も少なくありません。確かに、預貯金であれば元本割れの心配はなく、安心に思えるでしょう。ですが、ただ銀行に預けているだけではお金はほとんど増えていきません。

その一方で、モノやサービスの値段が継続的に上がる「インフレ」が進むと、同じものを買うのにこれまでより多く支払う必要があったり、同じ金額で買える量が減ったりして、お金の実質的な価値は目減りしてしまいます。

たとえば、物価が毎年2%ずつ上昇すると、現在1万円のものは5年後には約1万1,000円まで値上がりします。また、現金のまま置いてある100万円の実質的価値は、5年後には約90万円相当まで目減りしてしまうのです。

インフレが長期化した場合、資産運用しないことの影響は大きくなりますので、老後資金の不足などが懸念されます。だからこそ、預貯金でお金を持つだけでなく、インフレに強い資産(株式、投資信託、不動産、金など)にも投資することで、物価上昇による資産価値の目減りを防ぐ必要があります。

とはいえ、一人で資産運用に向き合っていると「この方法でいいのだろうか」と迷うことがあるでしょう。そんな時は、FP(ファイナンシャルプランナー)などお金の専門家に相談してアドバイスを受けましょう。

FPは相談者の夢や目標を達成するため、ライフスタイルや経済状況、価値観などをヒアリングし、家族構成や収支、資産・負債などあらゆるデータを分析します。その内容をもとに、総合的な視点でアドバイスや資産設計を行い、その実行をサポートします。


より気軽にプロを頼りたいなら、AI(人工知能)が投資家の代わりに資産運用を行ってくれる「ロボアドバイザー」も選択肢の一つです。一人で悩むのではなく、資産運用のプロを活用することもぜひ検討してみましょう。
■不安の原因を見つけ、安心して一歩を踏み出そう

資産運用に不安を感じるのは、ごく自然なこと。大切なのは、不安の原因を理解し、正しい知識と具体的な行動で一歩ずつ前に進むことです。

目的を明確にし、長期・積立・分散といった基本を守って自分に合った方法を選べば、安心して資産を育てられます。必要に応じて専門家のアドバイスも取り入れ、将来に向けて着実に資産形成を進めていきましょう。

武藤貴子 ファイナンシャル・プランナー(AFP)、ネット起業コンサルタント 会社員時代、お金の知識の必要性を感じ、AFP(日本FP協会認定)資格を取得。二足のわらじでファイナンシャル・プランナーとしてセミナーやマネーコラムの執筆を展開。独立後はネット起業のコンサルティングを行うとともに、執筆や個人マネー相談を中心に活動中 この著者の記事一覧はこちら
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