西山朋佳白玲に福間香奈女流六冠が挑戦するヒューリック杯第5期白玲戦七番勝負は、第1局が8月30日(土)に東京都港区の「グランドニッコー東京 台場」で行われました。対局の結果、角交換相振り飛車の中盤戦で力を発揮した西山白玲が101手で勝利。
防衛に向け好スタートを切りました。
○1年前のリベンジ目指して

優勝賞金の増額およびクイーン白玲獲得での棋士編入制度が話題となっている白玲戦。前期七番勝負は福間女流六冠の体調不良による不戦によって決着したこともあり、ファンの間でもあらためての激突を楽しみにする声が多く見られました。3か月ぶりとなった両者の対決は西山白玲の先手番で相振り飛車へ。阿吽の呼吸で相向かい飛車の形に落ち着きました。

前夜祭では「完全燃焼できるよう頑張りたい」と語った福間女流六冠、この日は自玉を右矢倉に収めて堅さを頼りに戦機を探ります。対して「久しぶりのタイトル戦に緊張を感じる」と明かした西山白玲は、これとは対照的に玉の広さで対抗。居飛車戦の雁木の布陣を反転させたような陣形に組み上げます。先に歩をぶつけたのは先手の西山白玲のほうでした。

○ワナを見抜いて快勝

後手の福間女流六冠も負けじと角を打ち込み反撃開始。小競り合いのなかで形勢が揺れ始めます。数手後、西山白玲の垂れ歩に対して自陣二段目に歩を屈服したのは福間女流六冠としては不本意な受け。
感想戦では歩成りを甘受してでも攻め合う構想が優るとされました。「もうすこし攻めていけると思っていた」と福間女流六冠が述べた局面から、西山白玲の攻勢が始まります。

苦戦にあえぐ福間女流六冠は飛車を差し出す勝負手を放ちますが、西山白玲は丁寧な読みでワナを看破します。取れる飛車をあえて取らずに桂の方を取ったのが冷静な決め手。敵玉を攻略するのには飛車よりも桂が大切という読みが勝利を呼び寄せました。終局時刻は17時12分、最後は自玉の受けなしを認めた福間女流六冠の投了で西山白玲の勝利が決定。

一局を振り返ると、中盤で抜け出してからは一度も形勢を譲らなかった西山白玲の快勝譜に。踏み込みを欠いて敗れた福間女流六冠は「大事に行きすぎてしまった」とほぞをかみました。福間女流六冠の先手番で迎える第2局は9月6日(土)に鹿児島県指宿市の「指宿白水館」で行われます。

水留啓(将棋情報局)
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