Adobeは9月4日(米国時間)、動画編集ツール「Adobe Premiere」のiPhone・iPad用アプリを発表した。App Storeで事前予約受付が開始されており、リリース予定日は9月30日。
「Adobe Premiere Pro」は、映画制作の現場から人気YouTuberまで、世界中のプロクリエイターに長年愛用されてきた動画編集ソフトウェアである。これまでAdobeはモバイル向けに、YouTuberやSNS投稿者など主にライト層のクリエイターを対象とした「Premiere Rush」を提供してきた。
しかし、近年はプロクリエイター以外の層でも高度な編集技術へのニーズが高まっている。さらにモバイルデバイスの性能向上により、本格的な編集ツールを十分に動作させられる環境が整いつつある。こうした背景から、「Premiere」の名を冠した本格的なモバイル動画編集アプリの登場に至った。
モバイル版は、デスクトップ版でおなじみの「マルチトラックタイムライン」を採用している。映像、音声、字幕などをそれぞれ独立したレイヤーで管理して重ね合わせることで、複雑な編集作業を緻密にコントロールできる。レイヤーは無制限に追加でき、フレーム単位での精密なトリミングや調整を行える。さらに、高精細な4K HDRビデオの編集・書き出しをサポートするなど、スマートフォン上での高品質な映像制作を実現する。
モバイル版は動画作成の基本機能を無料で利用可能で、書き出し時にウォーターマーク(透かしロゴ)は表示されない。
○創造性を加速させるAI機能
Premiereアプリの大きな特徴の1つがAI機能とAdobeの生成AI「Adobe Firefly」の統合である。
搭載されるAI機能は多岐にわたる。たとえば、騒がしい環境での収録でも、AIが自動でノイズを除去し音声を明瞭化する「スピーチを強調 (Enhance Speech)」を使うことでクリアなナレーションを得られる。「効果音生成(Generative Sound Effects)」では、テキストプロンプトと自分の声を使ってタイミングや抑揚、感情を表現することで、動画を盛り上げる効果音を容易に生成できる。
○ショート動画時代に適応したワークフロー
Adobe Fireflyを活用することで、ひらいめいたアイディアをすぐに形にできる。また、Adobeが提供する数百万点のクリエイティブ素材(音楽、写真、ビデオなど)や、多彩なフォントの利用が可能。写真アプリ「Lightroom」のカラープリセットも活用できる。これらにより、クリエイターは素材探しなどに時間を費やすことなく、クリエイティブな作業に集中できる。
アプリは、TikTok、YouTube Shorts、Instagramなど主要なソーシャルメディアへの投稿をサポートしており、編集後すぐに各プラットフォームに最適な形で動画を書き出せる。外出先でiPhoneやiPadで始めたプロジェクトをデスクトップ版のPremiere Proに送信し、さらに高度な編集を加えるといった連携も可能である。