米労働省が2025年9月5日に発表した8月雇用統計の主な結果は、(1)非農業部門雇用者数2.2万人増、(2)失業率4.3%、(3)平均時給36.53ドル(前月比+0.3%、前年比+3.7%)という内容であった。
○雇用者数
8月の非農業部門雇用者数は前月比2.2万人増と市場予想の7.5万人増を下回った。
○失業率
8月の失業率は4.3%と市場予想に一致。前月の4.2%から0.1ポイント上昇し、2021年10月以来の高水準となった。フルタイムの職を希望しながらパート就業している人などを含めた広義の失業率である不完全雇用率(U-6失業率)は前月の7.9%から8.1%へ上昇。労働人口に占める働く意欲を持つ人の割合である労働参加率は前月の62.2%から62.3%に上昇した。
平均時給
8月の平均時給(全従業員)は36.53ドルとなり、前月の修正値36.43ドルから0.10ドル増加して過去最高を更新。伸び率は前月比+0.3%と予想通りであったが、前年比では+3.7%と市場予想(+3.8%)を上回る伸びとなった。
○まとめ
米8月雇用統計は米国の労働市場が減速していることをあらためて示す結果となった。非農業部門雇用者数はわずか2.2万人の増加にとどまり、3カ月平均で見ても増加幅は米国の景気を下支えするのに必要とされる10万人程度を4カ月連続で下回ることになった。
失業率は小幅とはいえ4年10カ月ぶりに4.3%へ上昇。不完全雇用率(U-6失業率)も4年10カ月ぶりの水準に悪化した。今回の雇用統計を受けて、市場は米連邦準備制度理事会(FRB)が9月に利下げを再開することを確実視。焦点は利下げ幅が通常の25bp(0.25%ポイント)か、50bp(0.50%ポイント)になるかに移っている。
なお、ここ数カ月間の雇用者数の低迷はトランプ政権による移民政策の影響との見方が多い一方で、トランプ政権の関税政策は今後インフレの押し上げに作用するとの見方も根強い。このため、9月16-17日の連邦公開市場委員会(FOMC)における利下げ幅を巡っては、11日の米8月消費者物価指数(CPI)が注目されることになるだろう。
神田卓也 株式会社外為どっとコム総合研究所 取締役調査部長。1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信(デイリーレポート『外為トゥデイ』など)を主業務とする傍ら、相場動向などについて、WEB・新聞・雑誌・テレビ等にコメントを発信。