博報堂DYホールディングスと博報堂の共同研究プロジェクト「コンテンツビジネスラボ」は8月20日、「コンテンツファン消費行動調査2025」の結果を発表した。調査は2025年2月25日~3月13日、全国15~69歳の男女10,000人を対象にインターネットで行われた。
○コンテンツへの支出額は過去最高に
生活者のコンテンツへの支出金額は85,137円(前年比+6,034円)と、2011年の調査開始以来、過去最高を記録した。コロナ禍で落ち込んだところから、2023年調査以降3年連続の上昇となり、エンターテインメント市場の本格的な盛り上がりを示している。
○牽引するリアルイベント市場と音楽ジャンル
市場カテゴリごとに見ると、これまでも拡大を続けていたリアルイベント市場の伸びがさらに著しく、推定市場規模は1兆2,596億円(前年比+22%)に達した。また、前年調査で大幅に拡大した関連グッズ市場(7,106億円)やデジタルコンテンツ市場(4,827億円)も引き続き高い水準となった。
コンテンツジャンルごとに見ると、音楽ジャンルが最大の市場規模(8,005億円)で、全体の支出増を牽引している。特に、コンサートや音楽フェスティバルなどのリアルイベント市場(3,122億円)は調査開始以来2番目の高水準となったほか、デジタルコンテンツ市場(920億円)は過去最高を記録。関連グッズ市場(747億円)も高水準を維持しており、調査全体のトレンドを象徴する形で市場を押し上げている。
生活者は動画サイトやサブスクリプションサービスといったデジタルの場で映像や音楽を楽しんでコンテンツと接触すると、コンサートや展示イベント、ロケ地への旅行など、リアルでもコンテンツを体験し、支出もする機会が増えている。コンテンツホルダーにとっては、リアルとデジタル両方でコンテンツの利用・体験の機会を積極的につくりながらグッズ販売といったコンテンツの周辺でも収益機会を得られるチャンスが続いていると言えそうだ。
○コンテンツに支出する人数は減少
コンテンツへの1人あたりの支出金額が伸びる一方で、支出する人数は減少している。
コロナ禍の影響を受ける前の2019年調査から最新の2025年調査までの、コンテンツジャンルごとの支出層の推計人数の推移をみると、ほとんどのジャンルで減少傾向にあることがわかる。
このうち、現在のコンテンツ市場全体の拡大を牽引する音楽ジャンルでも、2025年と2019年の支出層を比べると、リアルイベント市場で648万人減少(2019年比-37.1%)、関連グッズ市場で188万人減少(同-26.6%)と大きく減少している。
近年、デジタル上での発信が当たり前になったことで、広くコンテンツと接触する機会が生まれている一方で、あらゆるコンテンツが無料で楽しめる環境にもなっている。また、デジタル上での履歴をもとにおすすめされるコンテンツを中心に消費する傾向も強まっている。自分の今の好みの少し外にあるようなコンテンツ、ジャンルの違うコンテンツを楽しむことが減ったことが、支出層減少の背景にあると推察される。
○「Mrs. GREEN APPLE」が躍進
どれだけ多くの生活者に接触できているかを示す「リーチ力」と、ファンに支出を促す力を示す「支出喚起力」のランキングの両方でトップ20位までにランクインしたのは、前年調査に続き「鬼滅の刃」、「名探偵コナン」、「ONE PIECE」、「ポケットモンスター」の4つだった。いずれもテレビアニメや映画などで生活者に広くリーチしながら、ゲームやグッズなどファンの支出機会も多く持ち、長く人気を博しているコンテンツだ。
そうした中、躍進したのが「Mrs. GREEN APPLE」だった。同グループは「リーチ力」ランキングでは5位(前年18位)、「支出喚起力」ランキングでは11位(前年トップ20位圏外)と、初めて両方でランクインした。音楽アーティストで両方にランクインしたのは2022年調査の「嵐」以来となる。
本調査でMrs. GREEN APPLEのコンテンツを利用したと答えた人の音楽ジャンルでの支出項目を見ると、回答者全体と比べてライブの配信やファンクラブといった項目への支出が目立ち、楽曲そのものだけでなく幅広くコンテンツに関連した支出をしていることがわかる。2024年は高い頻度で新曲を発表し、サブスクリプションサービス上で実際の視聴やファンを増やしながら、コンサートや音楽フェス、その配信などで広く収益を得られたようだ。
調査結果を通して、コンテンツへの1人当たりの支出金額が上がる一方で支出する人数が減っているという課題を挙げたが、Mrs. GREEN APPLEはファンを増やしながら、支出金額も増やした好例といえそうだ。