キリンホールディングスは9月9日、新製品『エレキソルト カップ』およびリニューアルした『エレキソルト スプーン』を発売した。関係者は「どちらも微弱な電気の力で食事の塩味やうま味を引き出してくれる、減塩サポート食器です」とアピールする。
○■どんな使い方をするの?
『エレキソルト カップ ES-B001』(2万6,950円)は、カップ内部の電極から微弱な電流が食品に流れ、塩味やうま味など、食事の味わいを増強する効果を発揮する。安定して電流が流れる電極構造で、耐熱性や耐久性も考えられている。なお食洗機でも洗浄できる。
カップの側面にあるスイッチで電源を入れ、好みの強度(3段階)を選択し、あとは通常のカップと同様に使用する。日常的に食べている汁物、麺類などで塩味やうま味が増強される仕組み(体感には個人差がある。また料理によっても感じ方が異なる場合がある)。なお1日3食で使用しても20日間は電源がもつという。
『エレキソルト スプーン ES-S002』(2万4,750円)は、スプーン先端の電極から微弱な電流が食品に流れ、塩味やうま味など、食事の味わいを増強する効果を発揮する。従来モデルからデザインを一新し、小型化、食洗機対応も実現した。
スプーンの柄にあるスイッチで電源を入れ、好みの強度(3段階)を選択し、あとは通常のスプーンと同様に使用する。食事全般に利用できるが、具沢山のスープのほか、カレーライス、チャーハン、あるいはラーメンのレンゲ代わりに使うと、より効果を実感しやすいという。
両製品は11月以降、ハンズ、ビックカメラなどの小売店の店頭およびオンラインストアでも販売する。ハンズ新宿店、ビックカメラ有楽町店ではエレキソルトの紹介イベントも開催予定。
○■健康課題の解決に向けて
メディア発表会では、キリンホールディングスの佐藤愛氏がプロジェクトの概要についてあらためて説明した。減塩サポート食器 エレキソルトの開発は「減塩したいけれど、減塩食では物足りない」「味が薄くなってしまうくらいならラーメンなどのメニュー自体を諦める」という消費者の悩みに向き合うところからスタートした。「キリンホールディングスでは、世界的な健康課題である“塩分の過剰摂取”の解決を目指してきました」と佐藤氏。
そこで着目したのが、電気を流したときに味が変化する「電気味覚」という現象だった。同社では明治大学の宮下芳明研究室と2019年より共同研究を重ね、減塩食品の塩味やうま味を増強させる独自の電流波形の開発に成功した。味の成分のうち、塩味やうま味など電気的な性質を持っている成分は、通常の食事では唾液に溶けて分散している。これを電流波形で舌に引き寄せることで、味わいを強く感じさせることができるという。
2024年5月には、第1弾として「エレキソルト スプーン ES-S001」を発売。こちらは販売開始から7カ月で、予定台数の7倍を上回る注文があった。国内外のアワードでも、エレキソルトの事業・技術・商品が高く評価された。
そんなユーザーの声に応えたものが、第2弾としてリリースした『エレキソルト カップ ES-B001』『エレキソルト スプーン ES-S002』だった。スプーンは手に収まりの良いサイズ感で使いやすくなり、待望のコップタイプもラインナップに追加された。
開発に協力したのは、美容機器メーカーのヤーマンだった。同社 開発本部の小島英明氏は「美容機器のメインユーザーは女性です。したがって手に持ちやすい大きさ・軽さの製品が求められます。これをエレキソルトの設計にも反映しました。また浴室で使う美容機器の開発で培った防水構造の知見から、エレキソルトを食洗機対応にしました。イオン導入機器の電気設計も活かしています。美容機器に求められるデザイン性もエレキソルトのフォルムに活きています」と説明した。
キリンホールディングスの佐藤氏によれば、従来製品の購入者の約4割は自身が健康に課題を抱えており、約4割は家族・友人にギフトとして購入。このほか、現在は健康だけれど将来の健康のために購入した20~30代も、少なからずいたという。
これまで販売方法や販売地域を絞ってテストマーケティングを行っていたエレキソルトだが、今後は販路を拡大していく方針。佐藤氏は「エレキソルトを通じて、食習慣を美味しく改善できる社会の実現を目指します。中期的には、高齢化先進国である日本のフードテック・ヘルステックとして発信し、また世界の健康課題の解決に向けて2026年にはアジア圏での販売開始も目指します」と説明した。
○■実際に試してみた
このあと、会場で『エレキソルト カップ』を試すことができた。カップの中味は、薄味に仕上げたミネストローネ。まずは製品の電源を入れずに飲んでみる。とっても薄い。説明によれば、約1.5倍も希釈したという。飲食店でこれが出てきたら怒りそうだ……。
次に、電源を入れて強度を1にして飲んでみる。すると、フフッと笑ってしまうほどの塩味を感じた。先ほどと同じミネストローネを飲んでいるのに不思議な感覚。
近藤謙太郎 こんどうけんたろう 1977年生まれ、早稲田大学卒業。出版社勤務を経て、フリーランスとして独立。通信業界やデジタル業界を中心に活動しており、最近はスポーツ分野やヘルスケア分野にも出没するように。日本各地、遠方の取材も大好き。趣味はカメラ、旅行、楽器の演奏など。動画の撮影と編集も楽しくなってきた。 この著者の記事一覧はこちら