劇場版『チェンソーマン レゼ篇』が9月19日に公開されるのを前に、デンジ役・戸谷菊之介とマキマ役・楠木ともりに単独インタビュー。
映画化決定の瞬間に歓喜し、初オーディション合格にして初主演に挑んだ戸谷。
○オーディション初合格で初主演だった『チェンソーマン』
――近年、原作者の藤本タツキ先生の別作品も映画化されるなど注目が集まっています。改めてになりますが、藤本先生の作品に出演が決まったときは、どんなお気持ちでしたか?
戸谷:『チェンソーマン』は僕自身も読んでいた漫画でしたし、オーディションを受けるときも全力でやりきったんです。しかも、実はオーディションに受かったのが『チェンソーマン』が初めてで……!
楠木:すごい……!
戸谷:そうなんですよ(笑)。主演も初めてだったので、本当に嬉しかったです。普段から漫画をめちゃくちゃ読むタイプではないんですが、そんな僕でも読んでいた作品なので、ファンの方が多いのもわかっていました。なので、その期待に応えなきゃいけないというプレッシャーはありました。でも、「やってやろう!」という気持ちで挑んでいました。
楠木:強いね(笑)! 私も『チェンソーマン』が大好きで読んでいました。タツキ先生の言葉選びには、「声が聞こえてくる瞬間」と「どういう言い回しなんだろう?」といい意味で想像をかき立てられる瞬間の両方があるんです。特にマキマに関しては、すごく難しいニュアンスが多いんですが、タツキ先生の作品に出られるのは嬉しさとワクワク感と同時に、「どう演じよう」という恐怖心もありました。
○『チェンソーマン』藤本タツキ氏に聞いてみたいこと
――藤本タツキ先生に実際にお会いしたことはあるんですか?
戸谷:TVシリーズの1話か2話くらいのタイミングで来てくださいましたよね?
楠木:序盤に数回アフレコに来ていただいたんですけど……。話せた……?
戸谷:少しだけ……でもそんなにたくさんは話せませんでした。
楠木:私たちも緊張していて……今だったら聞きたいことがいっぱいあるんですけど、当時は萎縮しちゃって、あまりお話しできなかったんです。ファイちゃん(ファイルーズあい)がちょっと話していたよね?
戸谷:ファイちゃんがホラー映画好きで、先生とホラー映画の話をしていましたね(笑)。
楠木:怖いとかではく、単純に我々が緊張していました(笑)。
――いま先生に会えるとしたら、聞いてみたいことはありますか?
戸谷:今はもう原作二部の展開がどうなるのか全部聞きたいです(笑)。すごいことになっているので。「このキャラは今どういう状態なんですか?」とか全部知りたい。完全にファンとして聞きたいですね(笑)。
楠木:私は、今演じているうえでヒントになることを聞いてみたいです。例えば「先生から見たマキマの印象」とか! 我々は読み解いていくことでしか得られない部分も多いと思うんですけど、先生の中にモデルとなった人がいるのかとか、そういうお話を聞けたら、演技の参考にできるんじゃないかなと思います。
○人気のエピソード「レゼ篇」は劇場版「大画面で映えるシーンが多い」
――そんな『チェンソーマン』のなかでも非常に人気のある「レゼ篇」が劇場版として公開されます。映画化が決まったときのお気持ちをお聞かせください。
戸谷: 「レゼ篇」の情報が公開されたジャンプフェスタ2024のイベントで台本をいただいたときに知ったんですが、個人的には「やっぱり!」と(笑)。ファンの皆さんの間でも「劇場版がいいんじゃないか」という声はありましたし、僕自身も「尺的にも物語の展開的にも劇場版が賢いな」という印象を持っていました。なので、「期待通りだ!」と思いましたし、レゼ篇を映画館で観られるというのは、いちファンとしても喜びや楽しみ、期待がありました。
楠木:私もファンとして、劇場版で観たい派でした。ただ、TVシリーズを録っているときは、その後どうなるのか、どう作られるのかは聞かされていなかったので、発表されたときはとても嬉しかったです。同時に、公開時期が9月頃で夏というのもすごくいいなと思って、大画面で映えるシーンが多いので、劇場で観られるのが今から楽しみだなと思っています。
――お二人ともTVシリーズではなく劇場版というのが、ある意味予想通りだったんですね!
戸谷:「そうなったらいいな」くらいの気持ちでした(笑)。
楠木:「レゼ篇」は構成が映画っぽいと話題になっていたので、戸谷くんが言っていた通り、「劇場で観たい」という声は多かったんです。だから決まったときは「やった!」という気持ちと「あ、やっぱりそうなんだ」という納得感もあって、ファンの期待に応えてくださった感じがしてすごく嬉しかったですね。
○変わらぬ雰囲気のアフレコ現場を盛り上げた意外なもの
――TVシリーズぶりの収録はいかがでしたか?
戸谷:あまり変わらないというか、実は久々という感覚もなかったんです。
ただ本編収録でいうと久々だったので、少しずつ感触を取り戻しながら、「レゼ篇」ならではの演出に合わせて芝居を変えていきました。
楠木:いい意味で空気感は変わらず、以前からの雰囲気をそのまま持って来られた感じでした。特にパワー役のファイちゃんが現場に入った瞬間に、まるで今回の劇場版にシンクロするように場が一気に明るくなって、「さすがだな」と思いました。
戸谷:ファイちゃんはいつもおもしろいんですよね。
楠木:ムードメーカーです!
戸谷:お菓子を持ってきてくれたりして!
――変わらず和気あいあいとした現場だったんですね。印象に残っているエピソードはありますか?
戸谷:ファイちゃんが持ってきてくれたお菓子が、ありえないくらいおいしかったんです。普段から食べ慣れているお菓子なんですが、少し特別なフレーバーで、しかも健康的で!
楠木:私も現場ではあまり食べないタイプなんですけど、そのときはやたら食べちゃいました。「どこで買えるの?」って聞いたくらい(笑)。すごく盛り上がりました。
○楠木ともりが引き込まれた原作で読んだ「レゼ篇」のマキマ
――現場の雰囲気が伝わってきます! TVシリーズを経て、デンジ・マキマを演じるうえで意識していることはありますか?
戸谷:デンジは、素直に気持ちが出る人物なんです。感じたことをそのまま出すし、その出力も普通の人より大きいし、怒りも喜びも大きい。
特に今回の「レゼ篇」では、マキマさんとデートして喜ぶ場面や、レゼとのデートでのドキドキ感やワクワク感をいっぱい出せたらと思って、準備して臨みました。
楠木:私は、原作を読んでいたときに「レゼ篇」でマキマさんにすごく引き込まれて、TVシリーズからは少し表情の違うマキマさんを見ることができるんです。
ただ、そこを出しすぎるのもどうなのかなという話を現場でしていて、マキマとしてブレたくはないと思っていたので、「マキマ自身の気持ち」ではなくて、「デンジからマキマがどう見えていたか、言葉がどう聞こえていたか」を指標にしていました。そういう意味では、観る人によってはいつもと変わらないように見えるかもしれないけど、デンジに感情移入して観る人にとっては、少しかわいらしく見えたりするかもしれないです。ほんの少しの違いなんですけど、針の穴に糸を通すように繊細なところを狙って演じました。
戸谷:それ、すごいことですよね……本当に! 僕にはできないです。
楠木:ありがとうございます(笑)。
――ぜひ注目してみてもらいたいですね! 先ほど戸谷さんから「デンジは素直な人物」というお話もありましたが、劇中でもかなりストレートな言い回しやセリフも多かったと思います。言いづらかったセリフはありましたか?
楠木:ないでしょ?
戸谷:ないですね(笑)。ただ、「葛藤」という意味で気持ちが濁ったのは、マキマさんとレゼどちらを選ぶのかという場面や、レゼの気持ちを素直に受け止められないシーン。デンジにも今の生活があるし、最近バディとも仲良くなってきているなかで、いろんな葛藤があって苦しかったかなと思いまいます。
○“レゼ”上田麗奈の説得力「もうすごかったです……!」
――今作から登場するレゼですが、上田麗奈さんが声を担当されています。
戸谷:僕は上田さんと初めて共演させていただいたんですが、もうすごかったです……! 完全に「レゼ」として生きていて、一言一言がレゼそのものでした。特に後半に進むにつれて、レゼの本当の気持ちがどんどん出てくるところは、かなり見ごたえのある掛け合いになっていると思います。
楠木:私はもともと上田さんのお芝居がすごく好きで、ナチュラルなのにアニメ的な演出も取り入れる繊細な演技をされる方という印象を持っていました。上田さんがレゼというのも、個人的にすごくイメージ通りで、キャスティングを聞いたときに「わかる!」と思いました(笑)。実際に聞いてみても、強そうで脆い危なげな雰囲気がすごく出ていて、その声につい意識が向いちゃうんです。レゼの魅力をより一層膨らんでいるような印象でした。
○2人がいちばん恐怖するものとは?
――お二人についてもお話も伺いたいのですが、『チェンソーマン』の世界では、人間が恐怖・嫌悪するほど悪魔が力を増していきます が、お二人が“いちばん怖いもの・こと”を教えてください。
戸谷:僕は高いところがとにかく苦手です! もう本当にダメなんですよ。
楠木:ジェットコースターは?
戸谷:高いタイプのやつは無理ですね。脚立に乗るのもダメです。身近な高さでも無理なんです。
楠木:落ちたら怪我するくらいの高さがダメ?
戸谷:ダメですね。特に外にむき出しになっている非常階段が一番苦手で……ビルの屋上で撮影する時とか、「非常階段で上がります」ってなると本当に怖いんです。
楠木:屋上とかで柵に寄りかかるとかね(笑)。
戸谷:そうそうそう! ある~!! がんばってやるんですけど、やっぱりぎこちない表情になっちゃいます(笑)。
楠木:大変だね(笑)。
戸谷:結構な頻度でそういう場面があるんです。だから我慢して、自分を「がんばれ!」と励ましながらやっています。
――飛行機とか大丈夫なんですか?
戸谷:飛行機は余裕です! 観覧車も大丈夫。ただ、スキーのリフトとか非常階段、ジェットコースターみたいに“むき出し”の状態がダメなんです。飛行機や観覧車は囲われているから大丈夫。ちょっと怖いですけど、むき出しより100倍平気(笑)! むき出しだと、死ぬ可能性があるから、とにかく死にたくない(笑)。
楠木:私は最近「忘却」が怖いです。結局、自分の頭で生きているから、忘れたらその事自体が人生からなくなっちゃうじゃないですか。友達と久々に会ったときに「あの時ああだったよね」って言われて、覚えてない自分にすごく恐怖を感じていて……。
戸谷:それって年々増えていきますよね。
楠木:そう! だから最近は「忘却」が怖いです。
戸谷:言い方がかっこいい(笑)。
――もともと記憶力はいい方ですか?
楠木:変なところばかり覚えていて、大事なことを覚えていないタイプですね。「なんでそんなこと覚えているの」ってよく言われるけど、逆に重要なことを忘れがち。だから記憶力は良くないと思います。
戸谷:忘却の悪魔もいるかもしれないですね(笑)
■戸谷菊之介
1998年11月30日生まれ。東京都出身。2020年に声優デビュー。『チェンソーマン』のデンジ役で注目を集め、その後もテレビアニメ・劇場版を中心に活躍。2024年には第18回声優アワード新人声優賞を受賞。主な出演作に『チェンソーマン』(22~)、『UniteUp!』(23)、『柚木さんちの四兄弟。』(23)、『七つの大罪 黙示録の四騎士』(23)、『逃げ上手の若君』(24)、『魔法科高校の劣等生 第3期』(25)、『黒執事 -寄宿学校編-』(25)など。
■楠木ともり
1999年12月22日生まれ。東京都出身。2017年に声優デビュー。『メルヘン・メドヘン』の鍵村葉月役で初主演を務め、その後も数多くの作品に出演。歌手としても活動し、アーティストデビューも果たしている。主な出演作に『ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン』 (18)、『チェンソーマン』 (22~)、『ウィッチウォッチ』 (25)、『友達の妹が俺にだけウザい』 (25)など。